あの子はだあれ、だれでしょね 公演情報 あの子はだあれ、だれでしょね」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★

    「外部者」に翻弄される無辜の市民
    実際の事件を元に書かれたと示す「副題」を認識せず、観た。
    すると、これは誰だかよく知らない人間が、無防備な一般人の家庭に入り込み、牛耳って行く「恐怖」とともに、それを受け入れて行く側の奇妙なあり方、非主体的とも言える精神性をあぶり出しているようにも見えた。
     とりわけ黒船以来、「強者」への対し方、距離の取り方(対等な付き合い方)を、悉く失敗に終わらせた過去の延長である日本について、比喩的に指摘しているようにも感じた訳である。
     いずれにしても、別役実の新作という。筆の力は全く衰えず、恐ろしげである。
     

    ネタバレBOX

    誰だか分からない人間に操られていくプロセスの始まりは、この戯曲では、標的にされた家族の娘二人が、「彼女」の養子になる事、またその内の一人が「彼女」の息子と結婚する事、この2つを(なぜか)受け入れている状態である。そこに至るプロセスには触れていない。
     しかし、何か「そうした方が良い」と思わせる説得力のある「声」の持ち主が居ることを思い、あり得る事だと思う自分もいる。
     やはり重要だと思われるのは、そういう誘いに対して、十分な論拠を持って断る事ができない脆さ。論拠の弱い「生き方」をしているのではないか、という問いだ。
     戯曲では最後に「彼女」がそこに入り込んだ「理由」を解明しようとしているが、その必要はあまり無かったかも知れない。
  • 満足度★★★

    とても怖い舞台
    別役実フェスティバル参加作品、初日に拝見した。

    「尼崎連続変死事件より」というサブタイトルがついている。この事件を少しでも知っている人は、この舞台の怖さがさらに深まって襲ってくるという仕掛けである。

    内裏びなの首がなく、ひしゃくが差してある。まあ、この舞台装置からして不気味なのだが、「それはそうと、そこに婆さん一人、が死んでいる」というせりふの直後に暗転するなど、別役さんの不条理劇というより、ある意味、ホラーなのである。

    それを、百戦錬磨の舞台俳優さんたちが真剣勝負で演じるのだから、相当な迫力だ。
    客席は静まりかえり、降り始めた強い雨が文学座アトリエをたたくのが聞こえてきた。

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