満足度★★★★
家族・・掘っても尽きないドラマの源泉
九州で活動する劇団。
時おり長女の幻聴として声を聴かせる、舞台中央の布団の中の死者(父)以外は、生きた人物が登場し、遡ったりしない時間を生きる、リアリズムの劇。
ステップファミリーを違和感なく成立させている所、九州訛りという武器、俳優のレベルも合格点、よく見ると抽象的な舞台美術だが役者の演技に集中するとちゃんと家の中に見えている・・ といったあたり、質の高い劇を持ってきてくれたと素直に思う。 音楽の使用は殆どなくストイックな感じを受けるが、実際に展開している事象は「リアル」の限界の中では相当飛躍しており、それが笑いも誘うが、グロさを醸してもいる。突飛な展開が「笑い」というオチ=弁明によって挿入されているのでなく、何か身につまされる「リアル」に収まっているのは、書き手の実力だろうと感じた。
父を許す事のできない長女が話の中心となるが、周辺のエピソードも面白い。自分も九州出身だが、父権の強さ(が容認されている風土)から、女性が黙して叫ばないゆえの燻りがあり、昇華させたい願望の強さが作者の筆を動かしたとすれば、「九州」という土地の固有さと言えるかも知れない。(作者は女性)
終盤のカタルシスな場面が、芝居の頂点とするに相応しいが、この芝居では、主人公は実はそれによって傷が癒えた訳ではなく、燻り続けてこれからも生きて行く、という宣言と解せるラストになっていた。これは大人になっても拭えない傷を負わされた人間が、実際に繰り返すパターンであり、しかしそれでも希望を持たずには居れないのも人間であり、他者(観客である私ら)の身勝手な願望(人は不幸を乗り越えるべきだ)を、拒絶しているようにも思えた。深読みかも知れないが・・。
カゾクというものの、掘り尽くされない深さをまた思わされた舞台だった。
満足度★★★★
一種のユートピア演劇?/約90分
「惨劇」「リアリズム演劇」
『優秀新人戯曲集2014』(劇作家協会 編)所収の戯曲を私はそのようなものとして受け止めたが、戯曲を読んでから一年半余、初めて観た上演は、舞台美術の効果もあってか、もっと抽象性の強い作品、多少大袈裟に言うならば、一種の理想郷を描いた作品とも受け取れて、言い知れないカタルシスが得られた。
なんにせよ、今回初めて上演を観て、戯曲の巧みさ、面白さを再認識した次第。
ただ、劇の細部を早くも忘れていた身としては、分かりづらい箇所がチラホラあって、少々もどかしかったのも事実。
一家の背景を知る上で重要なセリフが案外手短にまとめてあり、セリフを消化しきれないうちに話が進む、ということが何度かあって、シーンをリプレイしたいという詮無い欲望に一度ならず駆られてしまった。
戯曲ならば呑み込めなかった箇所を何度も読み返せるけれど、上演の場合、見返すことはできないんだよなぁ。。。
そんな当たり前なことを実感しもした約90分でした。