わからないものの中で 公演情報 わからないものの中で」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    何故分からなくなったんだろう?
    一度壊れた人間関係を再生する物語。

    ネタバレBOX

     舞台には、3か所のセットが組まれている。下手には、バーPerdre上手奥には、高校の職員室、そしてその手前、客席側にコンビニ店内。この3か所を照明を当てるか否かでチェンジする。シンプルだが、無駄な場転の暗転等を省いて頗る効果的である。舞台美術も見事である。因みにPerdreの意味には、劇中で説明されているように“道に迷わせる”という意味もあるが、通常第一義的な意味としては“失う”である。何れにせよ、現在、アメリカの完全な植民地として機能しているこのエリアで大衆受けする作品が描くように、夢を真っ直ぐ追いかけたり、予め壊れていない人間関係を前提に話し始めたら、それだけで白けてしまうのは当然だろう。
    その点、今作のシナリオは、予め壊れた人間関係を起点にしている点で合点がゆく。実際、我々が生きるこの地で家族関係等疾うの昔に崩壊していると言える。その例を挙げるなら、単身赴任で父親不在の家庭に於ける母子の異常接近と男子の精神的発達が父親との争闘を欠く為に歪んでいる実態がある。父親が単身赴任していない場合でも仕事に追いまくられて妻子と共に過ごす時間が欧米社会に比べてすら極端に少ない社畜社会に、まともな人間関係が成立し得たらそれこそ気狂い沙汰である。
    にも拘らず、この植民地で語られてきたのは、そのような現実の家族の在り様とは正反対の、少なくとも都会では在り得ないような嘘である。こう言って悪ければ幻想と言い換えても良いが。その結果が、現実を見据え、悪い点をキチンと抉り出して対処法を講じることではなく、埒も無い逃避のエクスキューズを散々繰り返すことで自らを欺き、終には修正の効かないレベルに迄状態を悪化させ、対処のしようも無く滅びを待つだけというこの植民地の愚策に繋がるのだ。電車の中で学生の会話を聞いて見るが良い。同世代の海外の学生に比べて如何に幼いか。比較にならない程である。
    だが、こんなに情けない状態も、深読みすれば、アメリカの実質植民地であるという実態を畜人に知らせず、管理を容易にする為に、アメリカと畜人の間に立つ、官僚・政治屋が仕組んでいることかも知れない。気をつけるべし!

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