雲の脂 公演情報 雲の脂」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    薄気味悪さが後を引くブラックな神社コメディ/約100分
    女性神主とその姪が牛耳っている海辺の神社で薄気味悪い出来事がつぎつぎ起こるブラックコメディ。
    会場ではたびたび笑いが起きていたが、ユーモアはかえっておぞましさを強調し、怖いもの見たさで最後まで飽かず鑑賞。
    心の中は不快感MAXなのに、それでも前のめりで見入ってしまう魔性の舞台でした。

    この薄気味悪さは後を引く。。。

    ネタバレBOX

    おぞましさに拍車をかけていたのが、二人の男性登場人物。
    うじうじとして弱っちいくせ腹に一物抱えてそうな神主の甥。
    部下にフルスロットルで当たり散らす高圧的な出入り業者。
    二人が喋り出すだけで神経を爪の先で引っかかれるような不快感に苛まれ、往生しました。

    でも、本作がここまで薄気味悪い作品に仕上がったのは二人の存在の賜物。

    こんな人物を生み出した山田百次さんの演出力には脱帽です。。。

    分けても出入りの廃品回収業者。部下に当たる時とはまた違った、神主やその姪と喋る時の落ち着き払った口ぶりも恐ろしく、好感度ゼロなのにたいそう引きつけられた。

    相次ぐ奇現象がただの天災なのか、この悪徳業者と癒着した悪徳神社への天罰なのか、悪徳業者が引き起こした人災なのか、最後の最後まで判らずじまいなのが何より怖かったです。
  • 満足度★★★

    ウミコマ
    面白い。100分。

    ネタバレBOX

    仲の悪い兄弟、佐田彦(大竹直)とミヤ(菊池佳南)でなく叔母のうか(山村祟子)が神主となり、収益を上げるため、お稲荷様の廃棄所と化した砂原稲荷には、今日もまたお稲荷様を持ち込む外崎(斉藤祐一)やブローカーの川守田(河村竜也)がやってくる。さらにミヤ達女衆は、唾液で醗酵?させるドブロクをせっせと作る。その頃海岸に近い一の鳥居が海の侵食により崩壊していた…。という日本海近くの神社でのひきこもごも。

    侵食は続き二の鳥居も崩れ、巫女のブライ(ブライアリー・ロング)も離れていき、旧本殿には大量の千羽鶴が廃棄され、死に体な神社。田舎(だけでってわけでないけど)の暗部みたいな、中身と外っツラは違うぞというのか。それでいて徐々に衰退してゆく、恐ろしさのようなものの表現か。結構クスっとするとこもあったけど、全面的にそうゆう気味悪さみたいな感じを覚えた舞台。

    その内旧本殿とか捨てられ稲荷ゾーンも海にのまれ、終焉を迎えるというイメージを感じる、もの寂しさがあったのが良かったかな。ラストのたい焼き?を3人で食べるのは、物事に鈍感な、もしくは半ば諦めな、またはめんどくさがりな人間の象徴かなと。
  • 満足度★★★★★

    ごった煮感から浮かぶリアリティ
    描かれることのひとつずつは、どこか奇想天外で、その創意が中々解けてこなかったのですが、でも次第に場を満たしていく質感は、なにかとても覚えがあって、あからさまにも思えて。

    このごった煮感でなければ表し得ない今があるように感じました

    ネタバレBOX

    舞台は海沿いに立つ神社の一室、金髪の巫女さんが、それなりにうまく「粗忽長屋」を語る冒頭に、これはコメディかと思った。
    家にあった眷属を納めにきた夫婦を糸口に、その神社のありようが解け、少しずつ様子が明らかになってくると、舞台に置かれていくものを単純に笑うことができない別の感覚に捉われ始め、語られ、描かれていくものから目が離せなくなります。

    その神社の裏には納められた眷属などのほかにもさまざまな物が引き取られ収められているという。個人に留まらず廃れた神社などからも引き取っていくばくかの「お気持ち」を業者とわけあいその神社は成り立っているらしい。
    しかも、引き取るものが、そういった神社のものだけではなくなっていて、仏像も狐、さらには猫やマリア様の像もいっしょくたん、出入りのテキヤの女性に喧嘩しないか心配されるのかおかしくて笑ってしまったのですが、でも、ふっとそれって今のこの国の当たり前の姿であることに思い当たる。

    神社には歯止めを失ったように様々なものが置かれようとしていきます。寺を管理する人間がいなくなったから水子供養の人形を全部とか、時流が変わって自治体が教育から外したものとか、挙句の果てには二度と過ちを犯さない気持ちを込めて織り上げたものまで、別段の罪悪感を感じさせることもなく、節操もなく、「お気持ち」を原動力に集められ、引き取られ、神社の裏や他に積み上げられていく。

    そんな中、巫女たちはテキヤのお姉さんまで巻き込んで古式ゆかしい手法にのっとりつついい加減に生米をはみ酒を作り始め、その一方で神社が少しずつ水辺から侵食されていく。一の鳥居が崩れ、二の鳥居や狛犬なども落ち、だからといって神主はそれらを直すということもなく、漫然と成り行きにまかせてしまう。

    多分、差し入れられたすべての寓意を受け取ることはできていないと思います。もしかしたら、半分にも満たないかもしれない。
    でも、よしんばそうであっても、受け取ることのできたものはひとつずつがぞくっとくるようなリアリティへと解けていきます。。人のつながりの切れ方から、教育のありよう、失われる伝統、地方の荒廃から核廃棄物移動に対する感覚、そして、それらに対する無関心さや崩れていくことへの無自覚・・・。
    一つずつの事象から訪れるものの切っ先にも驚くのですが、それよりも、それらが舞台にごった煮のように重なり、歪み、捉えようななくなったその先で神主とその一家が無感覚に平穏な時間の質感に戻っていくこと愕然。

    冒頭に金髪の巫女さんが語っていた「粗忽長屋」は自分そっくりの死体と生きている自分の区別がつかなくなって自らが不条理な世界に入りこんでしまう噺、その感覚が舞台とすっと重なって、なんともいえない行き場のなさに捉えられてしまう。この金髪の巫女さん、なにかクールジャパンの匂いを感じたりもするのですが、そのまっとうでズレた日本語のことわざや言い回しが絶妙に描かれていくことへの客観的な視座を差し込んでくれたりもして。この作品、多分1ミリでも道徳的な怒りや教条的な価値観、あるいは思想やイデオロギー的なものが台詞として観客に主張されると腐ってしまうわけで、滑稽さの中に描かれるもののありようを鮮やかに切り出すこのやり方は上手いなぁと思ったりも。
    また、役者たちの適度にバイアスのかかったお芝居も、シーン其々にうまく風通しをつくり、塗り込めることなく舞台を描き出しておりました。

    ラストの奇想天外な会話を聞きながら、また、神社が水に侵食され崩れていく音が聞こえてくるようで・・。観終わってからもしばらく描かれたことを反芻しつつ、その能天気さと漠然とした不安の重なりに浸され続けておりました。
  • 満足度★★★

    ネタばれ
    前作の山田百次の作品はかなり面白かったのだが.......。

    ネタバレBOX

    青年団リンク・ホエイの【雲の脂】を観劇。

    日本海に面するとある神社の社務所内での顛末を描いている。

    社務所内に出入りしている業者、身内、お客さんの話を面白おかしく描いている。
    鳥居が倒れていながらほっといている神主、いらなくなった他の宗教の銅像などを買い取っている身内、理由なく仲の悪い兄弟、突然巨大化してしまう登場人物たち、唾液でお酒を作る巫女さんなどの色々な話が現れては消え、これが伏線になるかと思いきや全くならない展開には唖然とするのだが、これはこれでなかなか面白い。
    作・演出の山田百次は、とりとめのない話しや展開のズレから見えない部分の物語を作っているようだが、今作に関しては観客にはほとんど理解されていないようだ。
    同じ様な方法論で最高傑作を作った長塚圭史の【荒野に立つ】を超える事はしょせん無理なのである。

    雲の脂とは頭皮の事である。
  • 満足度★★★★

    あくどい商売
    人の弱みに付け込んで。

    ネタバレBOX

    本人たちは全く信じていないにも拘らず、バチが当たるとか、もっと大袈裟に言えば祟られるとか人の恐怖心を利用して、不要となった道具、石像、宗教的偶像、災害の記念品等の産業廃棄物を引き受けて経営難を乗り越えようとした神社の話。

    ゴミ置き場と言った神主の言葉が印象的でした。

    防波堤の建設を県が途中で止めたため潮流が変わって海岸浸食が起きて神社の存続自体がままならなくなりました。あくどい商売のバチが当たったと思わないところは神主たちが真っ当な神経の持ち主であることの証明ですが、被害者はいい迷惑です。バチなんて当たらない、逆に言えば何かしたからといって宝くじは当たらないと正直に言ってほしいです。

    仙台の戦災記念品が地震の記念品に押されて展示場所がなくなり産業廃棄物と化す現状には、真偽の程は分かりませんが驚きでした。

    偶像は偶像、物に変に感情移入しないことが重要です。広島に寄せられる千羽鶴については順繰りに適正に廃棄すれば良いと思います。

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