田村一行「おじょう藤九郎さま」 公演情報 田村一行「おじょう藤九郎さま」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★★

    私たちが「もといた場所」へ回帰するための「祭り」
    「伝統」と「前衛」は、DNAに書き込まれた「土の記憶」でつながっていた。

    大駱駝艦の田村一行さんたちが、青森八戸の伝統芸能「えんぶり」とガップリ四つに組んだ作品。
    現地に行き、「荒谷えんぶり組」にふんぶりを習うところから始まったという。
    それを単にそのまま踊るのではなく、「田村一行の舞踏」として消化し、生まれたものである。

    ネタバレBOX

    大駱駝艦の田村一行さんたちが、青森八戸の伝統芸能「えんぶり」とガップリ四つに組んだ作品。
    現地に行き、「荒谷えんぶり組」にふんぶりを習うところから始まったという。
    それを単にそのまま踊るのではなく、「田村一行の舞踏」として消化し、生まれたものである。

    踊りの伝統芸能をテーマにした舞踏というのは、たぶん今まで誰も取り組んだことはなかったのはないだろうか。
    しかし、考えてみれば、日本の(闇黒)舞踏とは、西洋の舞踏(ダンス)などとは異なるベクトルを持ったものであり、日本人ならではの土着の思想がその根底にあるように思う。

    八戸で何百年も続いている「えんぶり」は、土の中から生まれ、育った。
    一方、(闇黒)舞踏は、土を直に足で感じ、足で大地をつかむ。
    したがって、その相性はいいに違いない。

    (闇黒)舞踏が、西洋のダンスとは違う方向へベクトルを向けるときに、その芯となったのは、日本人の持つ、稲作を中心とした土への想い、それを敬う神への敬意の表現、つまり祭りがあると思う。
    祭りの「踊り」(音楽)は、私たちのDNAに刻まれていて、DNA(あるいは「心」と言ってもいい)に従って、身体を自由に動かせば、舞踏になるのだろう。

    だから、「舞踏」と「えんぶり」が重なると、同じバイブレーションが起こり、共鳴するのではないだろうか。

    それは、DNAレベルの共鳴だ。

    舞踏では、音楽に乗り、振り付けで踊るということはあまりない。
    しかし、「えんぶり」ではもちろんある。
    舞踏の公演の中にそういうシーンがあっても違和感はないのは、そういう理由だろう。

    DNAレベルの共鳴とは、八戸の住民でなくても、農家でなくても、「腰を落とす」「足を地面に付ける」ことで蘇る、何百年も何千年も連綿と続く、「祭り」の記憶ではないか。
    「えんぶり」では、「踊る」ことを「摺る(する)」と言うらしい。
    まさに、足を「摺る」ことで、つながってくるのだ。

    田村一行さんたちの中で、それは起こっていたのではないだろうか。
    そして、観客にもそれが感じる瞬間があったと思う。

    沸き立つような「お祭り」の幸福感。
    その中に「美しさ」を感じてしまう。

    オリジナルの「えんぶり」の型もうまく取り入れていたように思う。
    烏帽子を被った踊りは、勇壮で、大黒舞や笠づくしのシーンでは、一気に華やかになり、観ているこちらの顔も緩む。
    そういうオリジナル・シーンと独自の解釈のシーンが見事に融合していた。

    そこに「えんぶり」の懐の深さ、広さを見た。
    舞踏も観客も包み込む深さと広さがあるのだ。
    「伝統芸能」と、まるで「過去」のもののように意味づけてしまっているが、今も生きている踊りであり、それはこれからも生き続けていくだろう。
    その生命力のようなものを、この作品から感じたのだ。

    踊り手たちの表情がとてもいい。
    壺中天という劇場のサイズもあり、それがよく見える。

    1人の男を半円で囲んむシーンで、それそれが男に向かう姿が面白い。
    我妻さんの目と口を剥いた表情は凄まじい。
    歌を歌ったのは、小林優太さんだったのだろうか。いい喉を聞かせてくれた。

    実際のえんぶりの演奏を取り込んだ、音楽もよかった。
    うまく「融合」していた。

    ラストには驚かされた。
    スーツにネクタイ姿の田村さんが現れて、えんぶりを摺るのだ。
    「えんぶり」に気が付き、興味を示し、一心不乱で摺る(踊る)。

    今に続くえんぶりを表すと同時に、私たちが、「もといた場所」「もといた土の上」へと、「戻っていく姿」を見せたのだろう。
    それは、「伝統芸能」と言われている「えんぶり」と「前衛」と言われる「舞踏」が、「土」でつながっていることを肌で感じた田村さんたちからのメッセージであろう。

    本家の「えんぶり」、やっぱり観たくなる。
  • 満足度★★★★★

    初めて目にする「えんぶり」は凄かった!!
    15日20時の回を観て来ました。

    自分は
    「えんぶり」
    と言うものが世の中にあるという事を、この作品のフライヤーを頂くまで知りませんでした。

    「もっと早く知っていれば!!」
    と、申し訳なく思っています。

    ネタバレBOX



    「えんぶり」
    については、開演直前に、大駱駝艦の方が解説して下さいますが、アンケート用紙等と一緒に配られる解説文をご覧になるのが、一番分かりやすいかも知れません。

    従って、初めて「えんぶり」を目にした訳ですが、物凄くダイナミックで力強く、感激しました。
    コメディ的な要素も入っており、壺中天公演の前に行われた八戸の皆さんも喜ばれたでしょうね。

    ラストに、あっと驚く演出が有り、
    「今は平成の世だけれど、これからもえんぶりは続いて行くぞ!」
    と言うメッセージにとれました。

    あの
    「えんぶり」
    のシーンをもう一度観たったのですが、残念ながら全公演チケットが完売となっています。
    今になって、
    「もう数ステージ分のチケットを確保しておけば良かった!!」
    と激しく後悔しています。

    壺中天でご覧になる皆さん!
    「えんぶり」
    の場面は素晴らしいですよ!!!

    現地、八戸で観たくなる事請け合いです。

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