いとしいとしのぶーたれ乞食 公演情報 いとしいとしのぶーたれ乞食」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    狂気も欲しい
     どうも清水 邦夫の作品というのは、役者の内面に強く高いテンションを維持することを要求する作品が多いように思うが、今作や楽屋は、その代表例と言えるかも知れない。清水は、良くリルケを引用するが、それは、彼自身の感性に詩的なものがあるからだろう。今作にしても、詩的感性なしに理解するのは困難だと感じる。人々は物事を率直に見る訓練をしていない場合が多いからである。
     然し乍ら、pariahとしてものを見たらどう映るか? 老婆は? ええじゃないかパック旅行の面々が旅先で留まった場所は、ええじゃないかに加わった面々、千余名が首を刎ねられた首塚であった。其処には、老爺と老婆が住んでいたが、この老カップルは、実在の者ではあるまい。ええじゃないかパックで訪れた人々に呼応して出て来た異界の者達であると考えた方が、辻褄が合うように思う。その分、この二人を演じる者には、内面的なポテンシャルの高さが要求されるのだが、老婆役の一花さん、老爺役の鈴木さん、二人とも、良い演技をしていた。他に脇を固めた未亡人役の内海さん、看護婦役の阿部さんの演技も気に入った。若手では、渡辺君の目が気に入った。
     シナリオ・演出上では、オープニングの首だけが浮かび上がるシーン。ええじゃないかパックの面々が休んだ先が、首塚であり、そこで主たるエピソードが展開されること。そして、ラスト。しゃれこうべに花がたむけられる美しい終わり方が有機的に連動していてグー。
     欲を言えば、殆ど出ずっぱりの老婆の美醜にファーストシーン以外にも変化をつけて欲しい。メイクで無理なら、照明で工夫するなどでも大分違ってくるように思う。(例えば、醜を表す時は寒色系、美を表す時は暖色系という具合に)演技が良いのだから、そういう所で女優をフォローして欲しいのだ。何れにせよ、新人も入ったこの舞台で、丁寧な作りをしている。だが、もう一つ欲を言えば、もっと爆発的な瞬間があって良いとは思う。何せ、もう棄てるものなど何も無い人々のハレの表現なのだから。

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