押入れのちよ 公演情報 押入れのちよ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    ほのぼの
    押入れの中から出てきた少女の悲しい過去は、今の時代では想像がつかない辛さだと思いましたが、天真爛漫な少女の姿と、優しい主人公のお陰で、観終わった後、ほのぼのとした気持ちになりました。明るく楽しい雰囲気の中に、忘れてはいけない歴史を感じさせる深い舞台だったと思います。役者さん達の演技も良かったです。少女役の役者さんは、好演でしたが、年齢的に少し無理があるかな・・?という気はしました。でも素敵な少女を演じていました。心が温まる舞台でした。

  • 満足度★★★★

    国を創った女性達
     恵太は、セレブ相手の営業マンで、営業成績は常にトップ。そろそろ、プロポーズしようと思う純子という名の彼女がいる。純子と申し込んだフレンチレストラン、3カ月待ちで漸く席が取れた。(追記2014.11.13)

    ネタバレBOX

     新任の課長、駒沢が大阪から赴任して来て、恵太の上司になったが、新居を購入、そのパーティーに誘われたが、レストラン予約日と日時が重なってしまった。パーティーに出席しなかったことを根に持ち、課長は、恵太をいびりだす。問題のある顧客ばかりを担当させ、ちょっとでもクレームが来ると、罵倒した。恵太は辞表を提出して、会社を去ったが、純子のことは忘れられぬ。然し、新しい仕事が決まり、課長を見返す迄は、頑張ろうと、綺麗好きな純子の為に、風呂付格安物件を探した。漸く見付けたマンション、予算の月5万よりずっと安い3万3千円で借りられたが、マンションとは名ばかりの3階建て、築35年の古いマンションだ。3階には3部屋。入居したのは302。301、302、303号室があり、303号室には、早大受験を目指す受験生が居た。301は、パワーショベルの運転を生業とするヨマンさんを含む仲間11人が、多分、同じ間取り、6畳(押し入れつき)とダイニングキッチン、風呂のスペースで暮らしている。然し、観光ビザで来日したままなので、警察を警戒している。
    安い物件に、多少の疑義は抱きながらも、恵太は、経済的負担が少なく、取り敢えず、純子が来ても大丈夫な条件を具えたマンションに引っ越して来た。然し、その夜から、おかしなことが起こった。見ず知らずの女の子が、市松人形のような和服を着て、自分の部屋に居たのである。名前を訊くとかわかみ ちよ、14歳と名乗る。生まれは、明治39年だと言う。「出て行って欲しい」と言う恵太に「行く所が無い」とちよは応える。最初は幽霊だと怖がっていた恵太だが、事情を飲み込んで行くと、放ってはおけない気持ちになり、ちよに同居を許すが。
     ところで、今作、ハッピーエンドで終わらせて欲しい、と観劇中に思わせた稀有な作品である。ちよが背負わされていた世の中の余りの理不尽が、観客の心をそのように動かしたのである。ちよ役の田中 香子の熱演に拍手!【これ以上のネタばれは現時点では控える、楽日以降に追記することを約束しよう】
     以下、追記である。ホントは、この他にもう一つ、オチがあるが、トーンが変わるので書かない。
     アイスクリンを食べさしてやると、島原の叔父の家から300円で売られ、女衒に連れ出されたちよは、長崎から出港した船で南方へ向かった。カラユキさんとして僅か14歳の生涯をマラリヤで閉じる為に。カラユキさんの多くは、島原や長崎の貧乏な百姓の娘である。物同然に売られ、苦界に沈められた年端も行かない娘たちが、売春を強いられ、体を壊せば隔離されて碌な治療を受けられないどころか、役立たずとして食事さえ満録に与えられずに死んでいった。だから、カラユキさんの墓は、総て墓碑銘が故郷の反対を向いていると言う。その悔しさ、哀しさは筆舌に尽くし難いものであっただろう。その念が、ちよの霊に形を与えたのだろう。ちよの遺体を掘り出したのは、パワーショベルの運転をしているヨマンさんに違いあるまい。日本に来て彼の肩凝りが治ったのは、ちよの霊が離れたからであろう。何れにせよ、カラユキさんら、この「国」の犠牲になって異国で儚く亡くなった多くの方々に対して、無神論者としての立場も弁えず、冥福を祈りたい。

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