ヴェニスの商人 [Kingdom Come] 公演情報 ヴェニスの商人 [Kingdom Come]」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★

    すばらしい出来ばえでした
    星こそ3にしましたが、お芝居の出来自体は5つ星だと思います。神経が行き渡った妥協のない舞台だと思いました。独創的な演出で完成度も高く、理想を現実にするという大変な作業を実現されていると感じました。構成、俳優、音楽、すべてが高い次元で一つになって作り出されている世界でした。ではなぜ星が3なのかといえば、自分が鑑賞者であった・・・入り込む隙がなかったからです。これは多分好みの問題で、第三者として観る、ことが好きな観客も多いだろうと思いつつ、この「観てきた!」欄は評ではなく感想を書こうと心がけているので、まったくの主観で3にしました。それと、2階から観たからというのもあるかもしれません。

  • 満足度★★★★

    独創的な演出が○!
    シャイロックを主役とし、原作の分解・再構成したという本作。

    これは、原作を読んでおらず、“あらすじ”しか知らない不勉強な私の感想です。

    その昔、「ヴェニスの商人」(原作ではない)を読んだとき、私は感じました。
    喜劇の悪役に位置づけられているシャイロックですが、彼こそ悲劇の主人公なのでは・・・?

    “獣の仕業/立夏さん”の描く、シャイロックを主役とした「ヴェニスの商人」は、
    その独創的な演出が、シャイロックや他の登場人物の言葉に説得力を持たせた。

    “原作の分解・再構成”は成功したのではないでしょうか?

    “獣の仕業/立夏さん”、要注目です!

  • 満足度★★★★★

    Who am I?からWhat am I?へ
    Who am I? この科白がシャイロックの口から何度も発語される。(英語表現ならばこうなる所だろうか)彼は、キリスト教徒同様、呼吸もすれば、息も吐く。同様に病にも罹れば、同じ薬で治癒もする。怪我をすれば赤い血を流すことも同様だ。呼吸をするにしても、皆と同じ空気を吸い、吐き出しているのに、吸って居る空気は、誰をも区別しはせずに、与えてくれるのに。何故、自分達は、謂われなく唾を吐き掛けられ、訳もなく蹴飛ばされ、罵声を浴びせられても黙って耐えていなければならないのか? Who am I? という問い掛けは深刻である。(追記2014.11.5)

    ネタバレBOX

     ところで、シェイクスピアのこの作品が、初めて出版されたのは、1600年だという。当時、今作は喜劇として扱われていたのだとか。だが、今回、構成・演出を担った立夏さんの解釈は、悲劇を越えた悲劇としての喜劇だとか、コインの裏表としての悲劇と喜劇ではなく、寧ろ綯い交ぜになった悲喜劇とも称し得るものを描こうとしている。シャイロックを中心に据えることによって。この試みはほぼ成功している。シェイクスピアの作品を良く読み込んだ上で、現代日本を生きる若い感性のレベルから、真摯な再構成が為されている。この点を先ずは評価したい
     さて、では、綯い交ぜになった視点からは、1600年当時、何故、この作品が喜劇に分類されていたか? に対する答えは明確に出せるだろうか? 出せないだろうと思う。綯い交ぜと自分は書いたが、リーフレットの表現では、コインの片側に悲劇がその裏側には喜劇があって、コインを回転させて倒れた時、どちらの面を見せているかで悲劇、喜劇が決定されるのではないか? と問い掛けている。ということは、喜劇になるか悲劇になるかは、偶然に支配されるということだろう。だが、自分はそのようには捉えない。当時、「ヴェニスの商人」が喜劇と捉えられていたのは、ユダヤ人差別は社会的問題として扱われていなかったことを意味するだろう。即ち、問題化されることすらないほど、ユダヤ人差別は自明のことだったと考える。
     閑話休題。そうは言っても、獣の仕業という集団は、その根底に未だアモルフではあるものの、確かな違和感を持ち合わせていると考える。だからこそ、通常の解釈をせず、シャイロックを主人公としたのであり、彼の見た、世界。彼に関わる世界と彼の実存を鋭く抉ることに成功しているのである。差別は、差別される者のアイデンティティーを多重化したり、極端な場合には破戒する。
     シャイロックがWho am I? と問うている間は、彼のアイデンティティが幾重にも重層化される過程である。だが、自分は、彼の最後の問いは、What am I? であると捉えたい。何故なら、彼は最早、他者・人間社会から人間として認められない存在になったからである。それは、社会からの抹殺を意味し、実存の闇を意味する。彼は、最早、自分が何者であるかが分からないのみならず、何であるかが分からない。存在の闇を引っ掻きながら落ちてゆく存在なのだ。丁度、ハイデッガーのdaseinの最も昏い部分のように。
     だが、若い人たちの感性は、ここ迄、シャイロックを追い詰めはしない。瑠璃色のスカーフに纏わる故事に絡めて、シャイロックを人間界に留めている。
     役者では、シャイロックを演じた“小林 龍二”とランスロットを演じた“きえる”が気に入った。きえるは“目”が良い。
  • 満足度★★★★★

    無題1293(14-342)
    18:00の回(晴)。17:30受付、開場。2回目、今夜は入って左に。

    先日観た後、図書館で「光文社古典新約文庫版(安西徹雄訳)」を借り、3/4ほど読みました。

    82ページ「モロッコ王」が黄金の箱(われを選ぶ者、万人の求むるものを得ん)を開き、読んだのは「輝くもの 必ずしも 黄金ならず」...All that glitters is not gold.

    英語のことわざのようですが、Zeppelin好きならば「There's a lady who's sure all that glitters is gold」を思い出すはず。こんなところでつながっていたのかと思いました。

    この曲(Stairway to Heaven)の展開と本作の珍しく(?)ドラマチックで哀愁を伴った展開がシンクロし、演者たちの渾身の演技が身近に迫ってきました。
    会場がpit北...どちらかというと小さな(=演者と近く好み)会場ということもよかったようです。汗が碧い照明に銀色に光り、シャイロックは闇に溶け込んでゆくようでした。

    ※全部読んで追記できたら...

    ネタバレBOX

    ということで、立夏さん、いつかサラ・ケインをお願いします。

    観劇歴
    「4時48分サイコシス/渇望」2011/5@SENTIO 七ツ寺共同スタジオ
    「4時48分 サイコシス」2011/6@バビロン 深谷水プログラム
    「フェードラズ ラブ」2013/10@タイニイアリス Doubtful Sound
    「Viva Death」2013/12@SPACE EDGE 鴎座
    「4時48分サイコシス」2014/5@テルプシコール 笛田宇一郎演劇事務所
  • 満足度★★★

    創作舞踊が良い!
    今年は、シェイクスピア生誕450年にあたり、色々なイベントが催された。そして劇団「獣の仕業」にとってシェイクスピア三作目にして、いったん総仕上げに位置付けるそうだ。
    今回の「ヴェニスの商人」は原作にとらわれず、むしろ分解/再構築を試みたようだ。しかし、原作を知らなけばその意図は知ることは出来ない。そのため、前日に会場道順とともに原作粗筋がメール配信されてきた。実に親切な対応で感心した。
    さて、公演はやはり有名なエピソードを散りばめないと説明出来ないようだ。その表現方法が創作舞踊と配役のシャッフルである。若さ溢れるパワーが観客を圧倒する。
    しかし、やはり原作を知らなけば理解しずらい。それも悪役「シャイロック」の独白や内省なのだから尚更である。
    さらに場面を絞り込むなどの工夫があったら素晴らしい公演になったと思う。
    今後の公演を楽しみにしております。

  • 満足度★★★

    シャイロック像
    どの役者さんもエネルギーがほとばしっていて、80分全力疾走なパワフルな公演でした。役者さんが一人2役から3役やっているのですが、見せ方がちゃんとしていて迷う事がなかったです。肉体を駆使して、大作に紳士に体当たりしている感じがして、観ていて癖になります。

    ネタバレBOX

    シャイロックをどう捉えるかが、やはりこの話の肝になると思うのですが。「可哀想」「孤独」「辛さ」「苦悩」みたいなものはよくわかったのですが、シャイロック本人が実際どんな人であるか?あるいは何を象徴しているか?みたいなものがより掘り下げられると、世界観が一気に深まる気がしました。観た事で考える良いきっかけをつくってもらいました。
  • 満足度★★★★★

    無題1289(14-338)
    19:00の回(雨)。18:30受付(手塚さん)、開場。

    階下へ下りると、立夏さん。舞台に白いライン、正方形が4×4、壁にもたれてうずくまっているのは小林さん。

    18:56前説(80分)、19:01開演~20:16終演。物販コーナーがあり前作「空騒ぎ」のDVD(立夏さん、小林さん、藤長さんのコメンタリー付)、本作の台本を購入。

    「説明」にあるようにシャイロックは語り始めました。周りに現れては姿を変え、役割を移し替えながらの4人。

    本作では、特に音楽が(好みのせいかとも思います)よく聴こえ、演者のセリフも勢いを感じました。今回は、あらかじめ原作を読んでいません(なのでおおざっぱなところを知っている程度)が、原作との比較に気持ちが行ってしまうこともなく、ずっと観入ることができました。

    シンプルな白(女性陣の爪先も)と黒(と瑠璃色が少し)。

    シェイクスピア劇は、いつも自分の頭上を通り過ぎてゆくような感じがするのですが...いや、こちらが首をすくめているのかも...本作では、シャイロックが観客に語りかけるというフォーマットが効いたのかもしれません。

  • 満足度★★★★

    まごうことなき悲劇
    演出家さんがきっと、確固たる世界観を持っているんだろうな~、と!<個人的に、観劇に行く際は、その劇団さんならではの表現方法や空気感を受け取れると嬉しいので、そういう意味でも観ることが出来て良かったです◎

    訓練しているんだろうな、と思わせる役者さん達の身体や熱量に引きこまれ、少人数沙王劇ながら、圧倒的な悲劇を見せてもらいました!

このページのQRコードです。

拡大