兇王は涙を流さない 公演情報 兇王は涙を流さない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    中々深いぞ
     シナリオは、劇的展開に必要な要素を盛り込み、ダイナミックに展開して楽しめる。(追記2014.9.18)

    ネタバレBOX

     先祖の秘密を守り抜いてきた、側近の末裔を歴史小説家が訪ねて、巷間流布されているのとは、異なる話を聞き出すという設定になっているので、歴史的人物として、絵画に描かれるようなストップモーションが効果的に使われている。
     一方、今作は、以下の問題も提起しているだろう。即ち現実政治が直面する問題についてである。言う迄も泣く王権。貴族政治にせよ民主主義や独裁にせよ、少数者が他の大多数を支配するには、その正統性を与える為の根拠が必要であり、その施策を実現する為の官僚組織が欠かせないということである。そして、形式上、そのシステムに齟齬が在ってはならない。何故なら、正当性を付与された為政者は、それ故に義務を負い、義務を果たすことによってしか正当性を維持できないからである。
     ことある時、人間の持つ諸感情(愛情、友情、嫉妬、より良きものへの意志、絶望、失望、破戒衝動等々)を採るか、一歩距離を置いて、決めごとに従うかの決断に迫られたなら、結果によってどちらがより良かったか、は後代が判断するであろうが、為政者は、問われたその時に判断せねばならない。安倍のような馬鹿でない限り、その判断は、ある程度、後代でその論理や哲学を問題にされるか、判断の見事さを称揚されるであろうが、無論、基本は、その人物の持つ性向によって判断は異なり、異なる判断を許容するのが、一般的な大人社会であることは言うを俟たない。
     今作は、政治としては、余りに幼稚な、友情を介在させることによって、政治劇としては児戯に等しいものとなったが、それ故にこそ、作家にとっては、今作が書かれる必要があったとも言える。何れにせよ、観客は、この幼児性を許容するか否かを求められる。許容できれば、面白い作品であり、できなければ認め難い作品であろう。だが、本当にそれだけだろうか? 自分には、その判断の分かれ目に、実際立ち会う個々人の必然的差というものが、余り必然的なものとは思えないのである。育った環境の差だとか、受けた教育の差だとか、或いは偶然だとかは、想像できる。然し、その差が必然的である為の必然的差異は、ハッキリ言って未だ分かっていない。そして、現在の所、その原因を探る時間が無い。いつか、自分にその事を探る時間的余裕ができたら、探ってみたいテーマの一つである。そのような問題を提起してくれたことによって、この作品は意外に深いと感じているのだ。

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