氷のほむら 公演情報 氷のほむら」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    Bキャストを拝見
     江戸時代、初夏、六月朔日、将軍家に加賀の氷を献上する習わしがあった。その年の将軍の無病息災、幕府の安泰を祈願するという行事である。その為、加賀で冬の間から氷室に収めて安置していた氷を4日間かけて江戸迄運び、将軍に食べて貰うのである。加賀藩の名誉の掛かった重大な行事であるから、当然、運ぶ人間も選りすぐりの脚自慢。報酬も通常の三倍だが、しくじれば仕置きが待っているという厳しいものであった。舞台は四代将軍、家綱の治世である。

    ネタバレBOX

      先代の氷見役は、責任感が強く良い仕事をこなし評判も高かったが、他界した。先代に目を掛けられていたにせよ、今年が初仕事になる波戸に従い走る飛脚は、宗次郎に迅助。然し、直前になって伴走の者が来ない。代わりに根性だけはあるが、体の小さい、女のようなへんちくりんな「男」が現れた。実は、先代の氷見役の娘、六花であったが、波戸は目を掛けて貰った人の娘であるから、真実をバラス訳にもゆかない。同行を許し、四人は江戸への旅に出発するが、大奥で権勢を揮う矢島の局は家綱の病弱を案じる余り、過保護の愚に陥って彼らの行く手を阻む計画を練っていた。ところで、彼女がこのような権勢を得たのは、家綱の乳母であったからである。当然、自分の娘、雪も家綱とは同世代、乳兄弟として育っているから、彼への影響力を持ってはいるが、朱子学の支配する時代、雪と雖も母たる局には礼を尽くさねばならない。然し、幼年期を共に過ごした彼女のサジェスチョンは、家綱に幼児の記憶を蘇らせ、彼本来の優しさ、他人を思い遣る心を蘇らせるの功があった。歴史をひも解いてみると、家綱が病弱であったり、若年で将軍職を継ぎ、優秀な家臣のお陰で大人になる迄は散々にフォローして貰ったのは事実である。然し乍ら、暗君であったというわけではない。体は弱いが、決して愚かでは無く、様々な新政策を打ち出している。更に、彼の地位が下の者に与える影響を早いうちから自覚し、気遣いを見せる逸話の残っている所を見れば、逆はあり得ても、一応、彼は優しかったと信じておきたい。将軍職に就いたのが11歳で約30年その職にあり、男子の子はできずに他界した。一方、「左用せい」としか言わなかったとして暗愚と見られることがあるのも一方で事実であるが、これは、生後4カ月で脳膜炎に罹り生死の境をさ迷っていることから言われることであり、今作でも、献上された氷に関する逸話が、それとなく挿入されているのは、この史実を指す。為に局は異様なまでに家綱の身体に気を使ったのである。彼女の犯した愚が愛情から出たことに注意したい。無論、娘の雪も、彼を愛している。それ故に、彼をヴィヴィッドな感性と共に生きさせたいのである。そこには、幼馴染しか知り得ないような微妙な感性の交流があり、男女通常の恋愛感情とは異なるタイプの愛もある。この母子の命を受けた忍びや剣術指南役、加賀忍軍迄が加わっての道中譚。生きることの本質を取り戻した家綱が、氷献上の使者達をねぎらって自ら迎えに行く下りは、感動的である。
  • 満足度★★★

    キラキラ光る石になる素材
    加賀の氷を江戸の将軍に献上する事に命をかけた飛脚衆の話・・・ と これだけを頭に入れて。正直 名前と顔が一致する役者さんが2人だけ…と言う状態での観劇(^_^;)
    脚演の中尾さんの作品は以前 観ているので、その点では安心と言うより期待大でした。
    1人1人が 少し熱過ぎる位の演技で、もう少し抑えても…って言う所を客演陣が しっかりと理解した上で出過ぎない フォローをしていて、とても 纏まりが有って良かったです(*^_^*)
    何だか楽し気で熱のこもった 若い人達の公演を観るのも また イイですね
    と言っても私が知らないだけで、既に色んな場所で活躍されてるのかも知れませんが…
    プロデューサー自ら 客出しの列に並ばれ、客の1人1人に礼を言いながら送り出してる姿に 驚きつつも 気持ち良く帰途につけました

  • 満足度★★★★

    走れ、飛脚!
    将軍への氷献上を阻止する理由が弱すぎる。
    それ以外は上手く話ができていて面白かった。
    髪型や足元までに気をくばった衣装はとても良かったです。

    ネタバレBOX

    氷献上が将軍の幼少時に病気にかかった苦しい顔を思い出したくない為では・・・。
  • 満足度★★★★

    爆発力
    始まってしばらくは“今日は外したかも!?”と思った。演出に特徴がなく、出演者のレベルにはムラが有り、濃いキャラ同士が浮いている感じで、台詞と台詞が繋がっていない気がした。互いの間に隙間があるような感じ。ストーリーも設定甘い。
    しかし、ラストにいくに連れ、出演者の芝居がどんどん爆発していくような感じを受けた。出だしとは違って表情もイキイキし始めた。更にさっきまで繋がっていない台詞がイイ感じに流れ始めたように感じた。気づけばなんとなくジーンと目頭が熱くなっていた。いいものを持っている劇団だと思う。これからの成長に期待したい。

  • 満足度★★★★

    時代劇エンターテイメント…面白い!
    Aキャスト観劇。
    加賀の”氷”を江戸・将軍家へ献上するための飛脚衆の物語。プロットの時代考証はしているだろうが、些細なことに捉われず、時代劇エンターテイメントとして楽しんだ。ハラハラ・ドキドキ感を出す、その効果的な演出は時間制限を設けること。本作は、4日間で江戸までという制約に妨害が入るという娯楽の王道のような作りである。当然、結果は…。
    また、キャストは総じて若く、その躍動感あふれる演技は好感が持てる。
    さて、作・演出の中尾知代氏は「沈没のしらぬゐ」において2012年池袋演劇祭・豊島区町会連合会長賞を受賞しており、若手ながら”力”のある戯作者だと思っている。それだけに、もう少し社会性を持たせたら、という勝手な期待を持った。例えば、江戸時代の氷は貴重なもの。江戸に運ぶまでに滴り落ちる氷水を庶民はすくったという話まである。貧しい市井の人たちの目線での場面を取り入れ、将軍の政(まつりごと)に絡めたら、もっと深みのある芝居になったと思う。
    さらなる高みを目指した公演を期待しております。

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