あ・ら・かると岸田國士 公演情報 あ・ら・かると岸田國士」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★★

    庶民への静かなエール
    だいぶ時間が経ってしまいましたが、感想を記します。

    まだ貧しかった頃の日本というものを知っている世代から見ると、大変懐かしさを覚える舞台でした。
    今から考えれば苦しい毎日だったはずなのに、笑っていた大人たちのことを思い出します。
    最後の、本当にラストの瞬間、何故か涙が出ました。
    彼らかつての大人たちに、ああ、そんな幸福を降らせてやりたかったな、とそう思ったのです。

    そしてまた、じわじわと格差の広がる現代でも、したたかであろうじゃないか、手を取り合って!そんな思いも感じました。

    お芝居というのは、本当に凄いものです。
    良い舞台は、単純に物語を描くだけではなくて、奥行きのある空間の中に、時空を超えた何かが見えてきます。

    ありがとうございました。次回の作品にも期待しています。

  • 満足度★★★★★

    岸田 國士の世界を見事に表現
     粋で洒脱、頓知が効き、世界が共鳴している。

    ネタバレBOX

     岸田 國士の三つの作品「軌道」「雅俗貧困譜」「是名優哉」を敢えてオムニバス形式とせず、西洋料理のメニュー仕立てで調理して見せた。1st dish 軌道(黙劇1)2nd dish雅俗貧困譜1 3rd dish是名優哉1 4th dish雅俗貧困譜2 5th dish是名優哉2 6th dish雅俗貧困譜3 7th dish軌道2。以上の7皿である。この配合が良い。自分は、今迄様々な劇団やグループの演じた岸田作品を拝見して来たが、今作が、今迄観た中でベストの岸田解釈である。舞台美術や、衣裳、その配置、非常に洒落たセンスのものを、敢えて少しだけ崩す、極めてお洒落な感覚や、矩形の机に対して丸い木製椅子の渦巻き状の文様や、単行本の装丁に使われている龍を連想させる螺旋などの対比を大げさに捉えれば、ミメシスとマニエリスムの対比は直ぐに思い浮かぶ。BGMで流れる数々のシャンソンもフランス語が使われ、ヨーロッパ周遊をしていた岸田の個人的批評も盛られているように感じた。と同時に、日本と西洋の微妙な混交と化学変化を実に良く表現すると同時に大正初旬から、昭和初期迄の、即ち大日本帝国の中国、朝鮮半島支配への歩みが、様々な問題を引き起こして行った時代と、戦後の宰相として、最も愚かな安倍政権とのコレスポンダンスをも感じさせる作りである。岸田自身は、愚か極まるこれらの風潮に対して一種の浮力のようなもので身を処していたのではないかと、そのような空気を感じさせる、豊かなハーモニーの感じられる舞台であった。

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