海に降る雪を魚達は知らない 公演情報 海に降る雪を魚達は知らない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★

    いろいろ考えさせられる
    40年前にそういう事があったんだろうなと感じさせる内容だった。また、それぞれの立場での役作りがしっかりしてるので、駆け引きにより厚みが増してた。改めていろいろ考え感じさせる舞台でした。

  • 満足度★★★★★

    あの手この手
    原発建設予定地における40年前の地上げの様子が生々しく描かれていました。

    ネタバレBOX

    あの手この手で反対運動を懐柔していく様は凄まじく、基本的にはお金ですが、40年前の50百万円がどんなに高額かと考えると、先般の普天間基地移転問題で沖縄振興予算と称する毎年何千億円ものバラマキを約束された仲井真知事がコロッと寝返ったように、本気になったときの当局のバラマキのスケールの大きさには驚かされます。

    借金をさせ、返済できなって土地を売らざるを得ないようにしたり、就職先を斡旋したり、更には反対運動が高じて一部に暴走する人が出て来ることを想定して、器物損壊事件などが起こるように巧みに誘導し、田舎じゃ警察沙汰などは珍しいことですからそれを取引材料にして恩を売って懐柔したりと、ありとあらゆる手段が使われたことが分かりました。

    鈴木がタイムスリップした先が魚の村と呼ばれた地区だったのですが、イサキとかメバルと言われても誰が誰だか、顔と名前を一致させるのに結構苦労しました。

    未来が分かっていたとしても、人々に真実を伝えることは困難です。原爆投下の前日に広島で叫んでも、騒乱の罪で警察に捕まったり、気が狂っていると思われたり、精神病院に連れて行かれたりするだけという言葉が印象的でした。スズキは、持っていた新札や平成という年号の入った硬貨をせめて置いて帰ってほしいと思いました。メルトダウンした核燃料の処理が終わった後で、その下から熱で歪んだ500円硬貨が出て来たらなんて。

    年配の役者さんが多く安定感はありましたが、もっと青年らしい人もいればと思いました。瞼の母的な出生の秘密話が織り込まれたのも、やはりちょっと年齢が高いせいもあってかなと思ってしまいました。
  • 満足度★★★★

    そしてまたくり返す
    3.11をテーマにしながら、原発建設当時の揺れる地元を描くという視点がユニーク。
    反対していたら生活が成り立たなくなる…という当時のリアルな実情や
    賛成派と反対派、都市と地方、官と民、といった構図を再現することで
    “私たちはみんなで原発を作ってしまった”という大きな失敗をもう一度問いかける。
    何かを強く批判する時は、説明的で饒舌になりがちだが
    金子真美、藤井びんという2人のベテラン俳優は
    “説明を忘れさせる”台詞と、人物像の陰影の深さでその存在が際立っている。
    観終わって、フライヤーの写真の重みがじわりと押し寄せて来る作品。

    ネタバレBOX

    震災直後の写真が大きく映し出されて、舞台は始まる。
    震災後間もない原発の町を記録しなければと、映像作家スズキ(塩原啓太)は
    ビデオカメラを携え単独で現地入りする。
    スズキはそこで出会った老婆に導かれ、原発建設をめぐって真っ二つに割れる
    40年前の「魚の町」へとタイムスリップする。
    反対派のリーダーイサキ(坂浦洋子)、その伯母のカサゴ(金子真美)、
    農業青年タコスケ(石塚良博)、絵描き志望のメバル(佐藤睦)らが住む町へ
    電力会社のアサバ(若林正)や不動産屋のアカメ(藤井びん)がやって来る。
    姿を消していたメバルの兄ワカシ(千葉誠樹)も3年ぶりに戻ってくる。
    提示される条件に負けて次々と賛成に回る人々、家族の対立、
    暗躍する男たちによるあからさまな贈収賄等をスズキは克明に記録していく…。

    魚の名前を持つ人々のキャラが鮮やかで共感を呼ぶ。
    反対派にも賛成派にもそれぞれの暮らしがあり、それを守ろうとして闘っている。
    この作品の特徴のひとつは、きれい事では済まされない、時に取引さえもするような
    推進派と反対派の関係がリアルに描かれていることだ。
    このリアルさが、被災しなかったエリアに安穏とする私たちの責任をも鋭く問うてくる。

    リアルさを支えるのは役者陣の人物造形に負うところが大きい。
    特に、金と電力会社への就職を武器に次々と土地を買収していく不動産屋アカメ。
    彼もまたこの土地で生まれ、中学卒業の翌日に集団就職の列車に乗ったひとりだった。
    都会へ出て行かなければ生活できない故郷に強力な企業と将来を誘致する、
    それこそが未来を創ると信じる彼もまた、この土地の人間なのだ。
    藤井びんさんの不遜な表情には何かを信じて疑わない者の動じない強引さがにじむ。
    最近立て続けに拝見した、台詞のほとんどない、或いは少ない舞台とはうって変わって
    この作品では“説得”より“ねじ伏せて”事を進めようとするアカメの言葉に
    圧倒的な説得力があって素晴らしい。

    電力会社のアサバがまー嫌なヤツで、これがまた巧い。
    南京玉すだれなんて時代がかった出し物で、ますます人の神経を逆なでするあたり
    演じる若林正さんが嫌いになりそうなほど(笑)

    反対派の拠点でおでん屋をしながら人々を見つめるカサゴの
    一歩引いた視点が効いている。
    演じる金子真美さんが一升瓶のふたをぽんっとてのひらで閉める音も心地よく
    この土地に居ながらこの土地を憎み、同時に離れがたい愛着もあるという
    複雑な心境をぶっきらぼうな台詞に込めて秀逸。
    彼女の最後の決断に涙が止まらなかった。

    反対派のリーダーとして先頭を走り続けるイサキ、
    坂浦洋子さんの熱演でこの土地への思いは伝わってくるが、
    窓の外の自然や幼いころの思い出だけでここを守ろうと説得するのはちと弱い気がする。
    現実的な推進派の意見に比べて、イサキの理由は情緒に傾きがちだ。
    もう少し何か、施設運営とか施設の子ども達を守るとか、具体的な強い理由が欲しい。
    もっとも、それこそがあの当時推進派に押し切られた理由なのかもしれない。

    メバルの不思議な力がとても魅力的で、スズキに
    「この町の将来を知りながらなぜその事実を人々に知らせない」と叫ぶところ、
    何も出来ない無力な自分への絶望感が痛切。
    そのメバルと寄り添って生きて行く決意をしたタコスケを演じた石塚良博さん、
    繊細な表情と溌剌とした青年らしさがとても良かった。

    ただ最初にスズキと出会った老婆と、最後にもう一度対峙する所が見たいと思った。
    撮った映像をスズキがこれからどうするのか、
    ドキュメンタリーにはどんな力があるのか
    魚の町へ誘った老婆に、その決意を語って欲しかった。
    裁判所の場面より、むしろあの老婆がスズキに伝える言葉が聞きたかった。
    それはそのまま今日の私たちへのメッセージであると思うから。

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