永い遠足 公演情報 永い遠足」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★★

    お話は悲しいけれど
    まつだい農舞台で観た「遠足の準備」(越後妻有大地の芸術祭参加作品)
    屋外でされたその舞台の演出が面白く、どうしても続きが観たくなって出かけた西巣鴨。
    お話の内容は、母と息子の近親相姦、その間に出来た娘の援助交際など、結構救いようのないお話だったけど、ラストの父と娘の姿には救いを感じました。
    母役の羽場睦子さんの演技が脳裏に焼きついています。

  • 久々に観たサンプル。
    族から離れて旅する話だった。(恥ずかしながら今でもこの二文字を書き間違えそうになる時があります)
    タイトルの文字を拾えば「永遠」が含まれていたり、残る「足」も読み替えれば人として何か「足りない」という連想が出来るし、音だけなら「人間は考える葦だ」という著名なフレーズも思い浮かぶ。あれだけの内容が込められているのだから、タイトルにも込められているのだろうと勝手ながら妄想してしまう。…けどまぁ、作者の真意はよく分かんないですね。
    個人的にサンプル初見だった「カロリーの消費」も未だにタイトルの意味を考える事があります。人生そのものは単なるカロリーの消費だという意味合いを感じたのだけど、それだけではない気もして。

    いつか人間社会から家族という構成単位が喪失する事はあるのだろうか?
    少なくともこれまではどんなに歪であっても存在していた単位であって、だからこそ何百年も昔に書かれた戯曲から今も普遍に扱われるテーマでもあって。現在の日本の法律では教育や扶養や相続なんかが絡むとはいえ、「家族でなければいけない」というのはあくまで心情的な制約でしかない。繋がっているのは血であって、精神や肉体は繋がらない別の人間なのだから。

    コメントの少なさはCoRichチケットを使っていないからなのかな。
    勿論CoRichでの評価が世の全てではないので、ここでのコメントが少なくとも問題はないと思うものの、一部であっても好きな団体への注目度が低いのはいい気がせず。客席は埋まっていたし、ここを知り得ない演劇漬けでないライトウォッチャーが増えたという事か。

    ネタバレBOX

    ノボルが更にアイカとも交わるのを期待してしまった。その場合、娘であり孫であり姪もしくは息子であり孫であり甥が生まれるのか。

    数年振りに戸川純の「諦念プシガンガ」を耳にする。やはりぶっ飛んで病んでる歌だった。サンプルに適していた。

  • 正直マンネリかも…。
    不条理の中にさらに不条理が積み重なっていくような、
    奇怪で妖しく性的なサンプルの世界。

    今回は古舘寛治が不参加だったせいか、それとも意図
    したものなのか、相当正常運転、言い換えればストレートな
    作品になった気がします。ただ、それが最近のサンプルの
    物語の弱さを露呈してしまったように思います。

    ネタバレBOX

    自らの弱点を積極的にさらす、劇団にとって過渡期の
    作品なら分かるのですが。明らかに、昔の作品の
    モチーフを自覚せずに使っている気がしてならないです。

    サンプルが好んで使う、「越境する」というキーワードも
    男性が毎回女性に性転換する、人が犬になる、前にも
    何回も観たから、またかー、って思える。ラジコン使う演出も
    ネズミ男が出てくるネタも、過去の作品で観ているので。
    「越境する」って、同じ常識を超えるでも、他にやりようは
    結構ある気がするのだけど。

    ぶっ飛んだ、何が起こるか分からない物語展開でその辺の
    欠点をカバーしてきたものの、今回は割と分かりやすい、
    一直線な話にしてしまったために、その書き込みの弱さが
    明らかになってしまったように思います。

    成熟しない人々が永遠にさ迷い続ける話だってことですよね。
    ギミックがない状態で観た場合、サンプルの話ってすごく
    平坦で普通なんだな、って、まざまざと感じてしまいました。

    今回は何をやらかしてくれるのか、ラストはどう私を
    驚かせるようなショッキングな幕切れを見せてくれるのか、
    期待させるようなサンプルの作品ではなかったかな、と。

    ラスト、独身男でネズミの餌やリが本職のノブオが、自分の
    娘を前にして、既に亡くなった母親の遺骨を使って目を潰す。
    あそこのくだりはちょっと良かったかも。既に自分たちの国を
    作った、ネズミ男のピーターから代替の目を貰う、って
    付け足しでぶち壊しになっちゃったけど。でも、新しい国を作る、
    ってモチーフもなんか飽きてしまったんだよね…。

    ここまで書いて思ったけど、今作、ギリギリまで相手を追い詰めて
    いく、強迫性が足りていなかったんだと気が付きました。今まで、
    その役を一手に担っていた古舘の不在は改めて大きいな、と。

    来年の初期作品『シフト』再演を観たら、サンプルは卒業かも。
    そう強く感じた作品になってしまいました。
  • 満足度★★★★★

    気持ちよく持ってかれる
    光や音の「おいしさ」が豊かで半端ない、そこら辺に転がってる日常から宇宙の彼方までがホントにさりげなくすぐそばに並べられている、そんな空間と物語。
    なんつーか、「宇宙そのもの」「世界そのもの」に触れた、って思うような瞬間がいくつも転がってて、ここ作り手も狙ってないだろうにー^^;ってタイミングでなんでかわからないけど不覚にも涙が出てきた。

    こないだのアマヤドリといい今回といい、木藤歩の照明に照らされた役者の姿ってのはホント見蕩れちゃうなあ・・・。

  • 満足度★★★★

    喜劇作家の潜在能力
     現に喜劇を書いているかどうかはともかく、喜劇を書く潜在能力を持っていそうな演劇人の作品を好んで観ていることに最近気づいたのだが、松井周の喜劇作家性が強く出た一作で、考えさせられながらも笑った場面が多々。
     一応、『オイディプス王』が劇の主要な下敷きになっています。
     母子相姦を暗喩的に示したシーンの迫力は断然!

    ネタバレBOX

    ●ネタバレ

     その『オイディプス王』にしても、安っぽく滑稽に変奏されているのが松井周らしくて面白い。
     それだけに、原話よりもショッキングに脚色された重い結末には胸を抉られた。
     その結末はその後、ある演出によって相対化されるが、あの演出はまぁ余興的なものと見なして構うまい。
     もちろん、同作を下敷きにした物語にはサンプルらしくシェアハウス、先端医療、ネット社会など今日的なモチーフが多々ちりばめられ、松井流現代戯画の趣も。
     ただ、時事的な多くの劇が陥りがちなように、そうしたものをただネタとして消費するのでなく、それらを扱う作・演出家の手つきに“これらは他人事ではない”という切実味が感じられるのが何よりいい。そして、上に挙げたモチーフ群は大なり小なり滑稽味を強調された形で劇中に現れ、時に笑いを誘いもするが(今作はこれまで観た松井作品の中で一番笑いを取っていた)、観る者は笑いのめした当のものが己にも含まれていることに、あるいは己と密に関わるものであることに笑顔が消えた頃に気づかされ、ハッとさせられる。笑い一つとってもこのように一筋縄ではいかないところがサンプルらしさだ。
     現代的なモチーフの一つとしてシェアハウスを挙げたのは、ヒト、ネズミほか4つの生物の交合種であるネズミ人間ピーターがある場所に仲間たちと新天地を作ろうとするのが、ピーターと同じくはっきりした帰属先を持たない(なにしろピーターは4種の生物のハイブリッド!)若者たちがシェアハウスに新手のコミュニティを打ち立てようとする姿にダブって見えたから。たぶん松井周の頭の中でもピーターはシェアハウス住人と二重写しになっていたのではないか?
    『永い遠足』というタイトルは初めピンとこなかったが、人生をあてどなくさまよう人々を描いたこの劇にふさわしい表題だと今になって思う。
     他、思ったこと、感じたことを以下につらつらと。

    ●キャスト8人が一堂に会するのが終盤の一場面だけで、それまではずっと会場の体育館、茫漠としてガランとした体育館のあちこちに1~数人ずつが点在して演技をするのが、人間、ことに現代人の哀しきモナド性を暗示しているようで身につまされた。

    ●館内を徘徊して移動舞台の役割も果たす街宣車(?)のスピーカーから開演直後に流れる曲がSMAP『世界に一つだけの花』なのはなぜなのか?

    ●稲継美保さん演じる“電気の妖精”ともいうべきキャラクターがすこぶる魅惑的! 配役も、ウエストのくびれと腰回りの豊かさが強調されたフランス人形を思わせる妖艶な赤いワンピース姿も、古風なその格好になじまないローラーブレードに乗って電子のようにスイスイと軽やかにあちこちを回遊する様も、話の鍵を握る家出少女の分身にして未熟な少女を姉のように教え導く良き話し相手でもあるという劇中での役回りも、すべてが良かった!!

    ●エンディング曲として戸川純『諦念プシガンガ』がかかって気持ちが上がった。
  • 満足度★★★★

    怠け者の街だ
    4年ぶりのサンプル。ぜんぜん変わらんなぁ。
    けっこう強引なオイディプス王でした。
    坂倉奈津子は声がいいね。
    古舘同様、古屋も映像の方でもぼちぼち売れても良さそうなもんだが…。
    ラジコン欲しくなったね。

  • 満足度★★★★

    越境する家族の物語
    男性/女性、人間/動物、実在/非実在の境界を越える登場人物達の関係が描かれた、奇妙な雰囲気に引き込まれる作品でした。

    『オイディプス王』をベースにした展開に日本の有名な昔話が絡み、途中まではとりとめの無い印象でしたが、次第にバラバラに見えたエピソードが繋がり、しっかりとした物語性が感じられました。最後に現れる物によって、その前のクライマックスが相対化されていたのがシニカルで印象的でした。
    サンプルの作品にしては一般的な意味でのドラマティックな高まりがあり、真の親子が偽りの親子を演じることによってしか関係を持てない様子を描いたシーンが切なかったです。シュールな笑いがアクセントとなっていて、不思議な味わいを醸し出していました。
    奇抜に見えがちな表層の印象とは異なり、戯曲(台詞・物語)と役者の演技に重きを置いた、オーソドックスで骨太な演劇作品だと思いました。

    舞台表現ならではの省略と見立てを多用して独特な世界観を表現していたのが興味深かったです。素の状態の体育館の広い空間を特殊な可動式の舞台美術を用いて、物語世界に取り込んで行く様が素晴らしかったです。

    どのキャラクターも変でまともではないのに、リアリティーと愛嬌が感じられ、魅力的でした。音楽が大きかったり、声を張り過ぎて、台詞が聞き取りにくい場面が何ヵ所かあったのが勿体なかったです。

  • 満足度★★★★

    呪い
    面白い。

    ネタバレBOX

    ノブオ(久保井研)…マウスを使った研究者。母に犯されアイカの父となる。自分の目を潰した。
    アイカ(野津あおい)…チヨコとノブオの子。キリコらの養子となるが、万引きして身を売る荒れた生活を送る。名前を捨てた。
    チヨコ(羽場睦子)…ノブオの母。DVな夫を庇う、男好きな女。ワサビチューチュー。
    キリコ(坂倉奈津子)…タケフミの圧迫感からか、意見を言えず生活してた。アイカを探す道中で犬になる。
    タケフミ(古屋隆太)…キリコの夫。警官。きっちりな性格。家庭にルールを持ち込んだだけとキリコに責められる。アイカに会うため婦人警官になった。
    ピーター(奥田洋平)…ノブオの研究するマウス。色んな動物のクウォーター。ビリビリが好き。自分の王国を見つける。
    マネキン(稲継美保)…国道17号沿いの自販機で売ってたマネキン?。アイカの買われる。
    桃太郎(坂口辰平)…花屋のチーフ。アイカの中の鬼退治に向かう。

    荷台を3面舞台にした電気自動車、自転車、ローラースケート?とか、普通の劇場じゃ面倒な演出が面白い。にしすがも創造舎初めてだったけど、広くて出入り口も多くて高さも横も奥行きもあって、いいとこだった。しぼったライティングも不快でない。

    あと、会話センスが抜群にいい。

    ノブオサイドとアイカサイドの話が、終盤繋がるって展開。母の呪縛を断ち切れないノブオ、自分の存在や周囲の存在を否定するアイカとアイカの心を抱きしめようと「進化」する養父母たち。
    ストレートな家族物とは言わないかもしれないし、妙なキャラ妙な展開なんだけど、自然惹きつけられた。てか、家族というか個別なヒトの話だったのか。120分位。

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