奇妙なコドク 公演情報 奇妙なコドク」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 無題854(13-293)
    17:00の回(晴)。受付時間などがわからないのでとりあえず30分前に行ってみる。すでにお二人待っていらっしゃる。入口に「お知らせ」はなく、階段下を覗くと受付が見える。16:38地階で受付が始まった様子なので下りる。サイトにも劇場にもなにも案内がないのはなぜでしょうね。上演時間がないのは普通なので訊く(90~100分)が、この段階でテンションは盛り下がる。客席からみて逆コの字型にテープルと椅子、白いクロス、床はジグソーマット。パイプ椅子3列。BGMは単調なリズムの繰り返し(ホイッスル音、パーカッションなど)、17:00前説(アナウンス)、17:05新内さんの前説、上演~18:37終演。此処は初めて、こちらも初めて。上演内容の案内が一切なかったのですが「戦国物」でした。系図が苦手なこと(不勉強ですみません)、ゲームをしないことなどなど(画像を投影しなければならなかったのかな...)、ほとんど入り込めませんでした。テーブルには出席者の名前、シンポジウムに参加しているような錯覚、ナルホド、こういう(枠組み)のもあるのかと思いました。



  • 満足度★★★★

    奇妙丸
     戦国時代と現代との対比、関連付けが面白い。始まり方も奇妙というか、ちょっと変わっている。前説から、いきなり口上に移り、今作の特殊性を説明するのだ。描いている世界は、信長の時代と現代である。それも信長と現代を描くのではない。信忠とその幼名、奇妙丸を含めた生涯と、歴史小説で流行作家となった父を持つ、引き籠りのニートの話として描くのだ。口上を述べる者が態々「現代劇です。ござるなどの表現も無ければ、殺陣もございません」と説明する。これはユニーク。自分は、この斬新な始まり方で、面白く観始めた。

    ネタバレBOX

     作家は、当然のことながら、信忠が、二条城での戦いから逃げられた可能性についても言及しているし、実際、それは可能であっただろう。信長ほど、信忠は、他人を信じなかったわけでもないようだし、それが、無能とは結びつかないことは、歴史が証明している。そこで、何故、一歩引かなかったかが、論争の争点に成り得るのだ。作家は、この点を見逃さない。そして、以下のように解釈するのである。即ち、敷かれていたレールが、いきなり外され、自らの自由の下に、それから先の判断を下す方法を持っていなかったのだと。余りに偉大な父を持った息子のエディプスコンプレックスというわけである。
     一方、現代の話が、信忠の話にオーバーラップするのも、当にエディプス・コンプレックスに於いてなのである。父(五光)を有名作家として持つ七光(にじ)は、父の敷いた通りの道を歩いて来た。作家に成る為の道である。したいことを諦め、良く勉強して国立大学の仏文科に入学、良い成績をおさめていた。父に対する反発はあるものの、そして、父のつけた道しるべ通りに歩むことは、それなりに努力を必要とするものの、兎に角、謂われた通りにやっていれば済んだ。然し、父が倒れた後では、自分が、何をどうするかを決定しなければならなくなった。だが、どうしていいのか分からない。
     七光の父は、単なる流行作家。信長と比べるのは役不足とはいえ、子にとって絶大な父とその後継者と目される嫡男という位置は等しい。二人とも、著名な父を持ち、而も、後継者であることから、周囲からは、ちやほやされ、父の敷いたレールの上を一所懸命に走り、率なくこなしてきたのではあったが、自らの完全自由に於いて選んだ結果ではないことから、自分に従う者達との間には、矢張り、距離がある。即ち、従者たちとの関係に於いて、真の闘争もなければ、真の融和もないのである。その為、信忠も七光も、従う者達に物理的には囲まれ乍ら、常に孤独たらざるを得ない。
     この点に気付いた時、七光は、二条城に籠り、自刃するに至った信忠の真情を理解したと合点するのだ。即ち、多勢に無勢で戦う中で、信忠は初めて己の意思と命を懸けて共存の感覚を得たのだと。そして、それこそが、彼が、命の果に松姫に捧げた純情であったのだと。
     今作では、この物語の流れを構成する登場人物として編集者が登場するのだが、彼女の日常が描かれるシーンが、七光・鈴(七光の孤独が作り出した幻影)と信忠・松姫との対比が作り出すドラマから浮いている。この問題を異化効果を用いて処理することができれば、今作は傑作になろう。同化するのであれば、佳作となろう。
     ユニークな口上の使い方といい、一見、異質な登場人物を結び付ける着眼点といい、現在に引き寄せた視点から作劇している点といい、この業界で生き残れそうな要素を持つ存在だろう。たゆまぬ努力に期待し、チャンスに恵まれることを祈る。

     

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