被告人~裁判記録より~ 公演情報 被告人~裁判記録より~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
21-24件 / 24件中
  • 満足度★★★★

    盛り
    ストーリー的には木嶋佳苗事件が面白かったです。

    ネタバレBOX

    裁判記録に基づくということで何となく法廷劇のようなものを想像していて、秋葉原無差別殺人事件は正にそんな風でしたが、次の連続不審死事件では裁判中の質問や証言に基いた再現ドラマのような様相になり、日本社会党委員長刺殺事件や226事件、異端審問裁判になると、どこまで裁判記録に基いているのかもう良く分かりませんって感じです。

    (1)秋葉原無差別殺人事件(被告人:加藤智大)  加藤は、ブログを荒らされたこと、自分の性格、ネットに依存し過ぎたことを動機に挙げていましたが、弁護人は彼の性格形成に家庭環境が大きく影響したと考え、ことさら母親の育て方の異常さを強調する質問を繰り返し、聞いている方は正にそうかなと思ってしまいました。

    当日パンフレットに配役として弁護人と書いてありましたが、ひたすら攻め立てるように質問し続ける様からは検事か弁護士か分かりませんでした。

    (2)連続不審死事件(被告人:木嶋佳苗)  こんな女に参ってしまった父親のことが信じられないという感じで木嶋の家に乗り込んで迫った被害者の娘でしたが、最後娘は睡眠薬で眠らされてしまい、恐らくこの後殺されてしまうのでしょうね。

    娘と木嶋の会話から浮かび上がる木嶋の生活振りなどは裁判記録の陳述に基いていて正確なのでしょうが、作者は何も事実に忠実になぞるとは言っていないわけで、このようなサイドストーリーを作って盛っていくとは想像もしていなくて、被害者は男だけという先入観を打ち砕かれ、素直に新鮮に驚かされました。面白かったです。

    (3)日本社会党委員長刺殺事件(被告人:山口二矢)  少女が少年鑑別所を訪れたときの話。

    山口と少女の関係がお芝居だけでは良く分かりません。とにかく美少女でした。

    (4)226事件(被告人:磯部浅一)  軍内部での事情聴取の様子。

    腐敗まみれの政商や政治家から天皇を救い出そうと決起したものの、天皇まで声が届かず賊軍として囚われた磯部。そんな気持ちだったのかと思うだけ。

    (5)異端審問裁判(被告人:ジャンヌ・ダルク)  いったん、教会の意に沿うと署名して死刑を免れたものの、独房にやってきた神の使いから、これまでの行動は神の意志に基づいたものではなかったということかと問い正され、署名を破棄する話。

    そもそもの百年戦争ですが、イギリスの神様とフランスの神様がいるように思えて仕方ありません。そして、『るつぼ』を思い出しました。るつぼでは、転向しても良い、生きていくことが大事と言われた男はいったん署名しますが、恥の概念に悩まされ署名を破棄します。

    ジャンヌ・ダルクの話になるともう想像の域という感じです。何かあっさり心変わりした感じで拍子抜けでした。

    というわけで、全体の終わり方も尻切れトンボのようでした。

    最近のものは純粋に事件そのものという感じですが、中世、近代のものは裁判というよりも思想が前面に立って重たくなります。

    ところで、全員が裸足で白い衣装、裁判記録から色を付けずに抽出しましたというようなイメージでしたが、実際はさもあらず。色付きまくりでした。

    黒い衣装で案内係をしていた人が白い衣装で木嶋として登場したときはインパクトがありました。白いセーラー服も不思議でいいですね。
  • 満足度★★★★

    臨場感ハンパねえ~
    開場して劇場内に入ってみると,囲み舞台,ルデコの狭い空間の中にホント狭い空間があるだけで,その周りに椅子が配置されている。そして,その椅子のいくつかには×印が。芝居が始まると,やはり×印に役者さんが着席して,物語は進んでいく。近い!すぐそばで迫真の演技が行われていく。ハコが小さいと伝わるものも多く感じるというか,なんか圧倒されていく。5つの物語は,説明にもあるとおり実験ではあるが,それぞれ十分芝居として成立していると思う。面白い,満足できる内容。ただ・・・(ネタバレに記載)。あと,女優さんは凄く美しく(注:Nさんを除く。Nさん,ごめんなさい。でも,Nさんは好きな役者さんです。),真近でみる彼女たちの美しさ(もちろん,演技も素晴らしいものでしたが)には感動ものです。

    ネタバレBOX

    5つの物語を通して全体として作者が何を伝えたかったのか,個々の物語での被告人の言い分はわかりますが,数多くの裁判がある中,この5つの物語を選択した意図が,全体としては糢糊となってしまったような気がします。
  • 満足度★★★★

    面白かったよ
    実際にあった事件の公判記録からテキストを起こしての芝居。公判で被告や検察官らが話したことを役者がしゃべる。圧倒的にアキバと木嶋佳苗が面白い。だって、リアルだから。佳苗のことは公判記録がいくつか出版されてるけど、まだこんなネタがあったのね。なんぼでもでてくるんだろうなあ。短編にするのが惜しいよ。アキバの加藤くんのは、知らなかったなあ。あんな親だったとは!やっぱ、この芝居の試みは、知り得ない情報に接する機会を与えられた、という点が一番じゃなかろうか。文字で読むより、リアルだしね。まあ、役者の力量には差があったけど。

  • 満足度★★★★

    面白い企画
    とても面白い企画だと思った。

    ただ、実際の裁判記録に基づいた実験公演と銘打っていたので、ポストドラマ/ドキュメンタリー演劇のような、一般的な演劇を解体するような試みかと期待していたが、芝居自体は極めて正攻法の芝居だった。
    それでも、逆から言えば、特殊な試みなれど、一つの芝居としてよくできていたという言い方もできる。

    物語としては、、、

    ネタバレBOX

    5つの物語が演じられるのだが、数ある事件の中で、なぜこの5つの裁判の、更にこの場面を選んだのか、作者が向き合っているものがわからなかった。勿論、5つの物語を繋ぐ表面的なテーマ(正義、悪、罪、、、それを裁くということなど)はわかるが、その5つを並べることで、何を顕在化させようとしてるのかがわからなかった。

    事実に基づいた、作者ありきではない作品という姿勢であったとしても、作者を解体するような(ポストドラマ的な)構成・演出がなされている訳ではないため、作品に対して作家の意志(批評性)を観客としてはどうしても観ようとしてしまう。ドキュメンタリー映画などは典型的な例だが、事実に基づこうが、その事実の中から何を選ぶか、どう編集するかは、ある意味ではフィクション以上に、その作家の批評性が問われる。それが見えないのが残念だった。

    また、最終話の「ジャンヌ・ダルク異端審問裁判」で、それまで事実に基づいた話というリアリティを持って観てきたものが、一気に神話のような話になってしまい、結局フィクションを観たという印象で芝居を見終えたのも残念だった。
    これは、演目1・2は日本の現代もの、演目3は日本の戦後(1960年の事件)、演目4は日本の戦前(1936年の事件)と来ての、演目5ではフランスの中世(1412年の事件:ギリギリ近世?)と、上演されている「今ここ」との場所と時間の距離が極端に広がったことが原因だろう。それらの距離が広がれば広がるほど、現実感は希薄となり、事実といえどフィクション化されていく、神話化されていく。そのことに対する批評性が作家にあったなら納得するが、そういう問いかけでこの作品が構成されているようには思えなかった。

    演出面では、舞台が四面客席で囲まれている上に、客席の中(最前列)の椅子に役者が座って演技をするなど、役者と客との距離が近すぎて、客のリアクションが気になって、最初は舞台に集中できなかったが、慣れてくると、むしろその近さが妙な緊張感を生んで、とても刺激的だった。この芝居で、内容よりもこの演出の方が実験的だったと思う。
    (ただ、私の席ではそう感じたが、終始単に観づらいとイライラした人もいたかもしれない。)

    演技としては、演目4「226事件」の陸軍法務官役:大森勇一さんの演技が素晴らしかった。

    残念だった点ばかり指摘してしまったが、やはりこの企画自体がとても魅力的だったため、観客としての欲が出てしまったが故のもの。悪く思わないでください。

    なんだかんだ言いながらも、面白く観劇した。

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