新羅生門 公演情報 新羅生門」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    能の謡曲『羅生門』は渡辺綱(わたなべのつな)が鬼の片腕を斬り落とす話。この改題として『新羅生門』なのだろう。自分は芥川龍之介の奴をイメージしていた。新作かと思ったら扉座の代表作の一つらしい。38年前の作品とは。

    上手に義太夫。浄瑠璃の竹本越孝(こしこう)さん、三味線の鶴澤三寿々(さんすず)さん。下手に邦楽囃子方、鳴り物の望月太意三郎氏。重々しく始まるも雨夜の古びた屋敷、老婆(みょんふぁさん)に案内されて来た若者二人の格好がモロ現代。闇バイトだの裏サイトだの似つかわしくない語句が浄瑠璃で語られる落差の笑い。岡本役新原武氏は萩原流行系。三白眼が坂田亘のようにいかつい。山路役野田翔太氏は冨坂友っぽいか。一日十万円の闇バイト、他言無用の仕事。明日取り壊されるこの屋敷の床から何かを掘り出す作業。ゴロウと呼ばれるとんがり帽子を被った男が床下に潜り込んで穴を掘っている。犯罪の雰囲気がぷんぷんするが金に目を眩ませて肚を決める。

    ネタバレBOX

    みょんふぁさん演ずるお婆さんが最高。まあ自分がファンな訳だが。ずっと腰を曲げていて大変。江戸伝内氏が遣う糸あやつり人形、彼女の息子である鬼のゴロウ。かつて殺した桃太郎達の骨を掘り返し、別の場所に埋め変えて供養しようとする。(桃太郎一行以外の骨は金太郎と一寸法師と姫の頭蓋骨か?)そこに現れる鬼ハンターの渡辺綱(結城一糸氏)、更に死んだ筈の御伽噺の一行達が甦る。彼等は日本人の集合的無意識が生み出した存在であり、何度でも血肉を与えられる幻想なのだ。

    掘り出した大小のしゃれこうべを並べる時の義太夫節に「クロムハーツ」の単語を混ぜるセンス。一寸法師の表現に手持ちミラーのような小型ストロボ。犬を操る人形遣いは桟敷童子の鈴木めぐみさん!凄い所までのめり込んでいる。縁が全てのこの世界。

    野田翔太氏は好物のつまみであるグリーン豆で暴れるゴロウの撃退に成功する。突然そこで何故、鬼を人は憎むのか?という討論が始まる。面白くなるのは彼がマイケル・ジャクソンを模して踊り歌いながらこの世の理を説くシーンから。凄く筋の通った話をコミカルに伝えていく。トランプ、習近平、プーチン、ネタニヤフ···、役者は揃っている。

    ジャンボマックスのような超巨大な糸あやつり人形の鬼が登場。ド迫力。『人造人間の憂鬱』の改造版か。みょんふぁさんの自害で下から噴き上げる血潮吹雪。

    ラストは中島みゆきの「狼になりたい」。
    泉谷しげるの「眠れない夜」も効果的に使われる。いや名曲だな。
    皆が思考停止して捲し立てる正義に疑問を感じ、同調圧力と集団心理の構図に待ったを掛ける。これじゃ関東大震災の朝鮮人虐殺、日中戦争の大陸侵略と同じじゃないか。だが大衆心理は全く聞く耳を持たない。それならば俺も鬼の側になろうとデビルマンのように怒りに打ち震えるが結局の所、鬼になれる訳でもない。正義と悪は相対的なものであってこの世界の構造の枠組みでしかないと知る。俺達は生きている限りどうあってもこの構造からは逃れられない。全てが馬鹿らしくなった時代のはみ出し者達は世の中を茶化して笑い飛ばし奴等にとっ捕まらないよう逃げ続けるしかない。奴等に同調せず本当の事を叫び続けてやる。そうして今日まで生き延びた!

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