満足度★★★★
ビントレー芸術監督の成果
今シーズンで新国立劇場バレエ団芸術監督のポストを去る、デヴィッド・ビントレーさんの代表作と近年の作品によるダブルビルで、両作品ともダイナミックで分かりやすい表現の中に芸術性が感じられて楽しめました。
『ファスター』(音楽:マシュー・ハンイドソン)
ロンドンオリンピックにインスピレーションを得て作られた作品で、バスケットボール、フェンシング、シンクロナイズドスイミング、マラソン等の種目の動きを用いていて親しみ易い内容でした。
様々な種目がストップモーションで表現されるインパクトがある冒頭から始まる第1楽章、格闘技の競技者の心情も描いた様なパ・ド・ドゥの第2楽章、ひたすら走り続けるだけという大胆な振付の第3楽章からなる構成で、音楽もリズミカルな中に程よく前衛音楽の手法が取り入れられていて面白かったです。
複雑で素早いフォーメーションの変化が印象的でした。第3楽章で全員が走る中、舞台手前側を競歩選手が横切るシーンがユーモラスでした。
『カルミナ・ブラーナ』(音楽:カール・オルフ)
中世ドイツ世俗詩歌集に基づくカンタータにイギリスのポップカルチャー的表現を組み合わせた作品で、3人の神学生が世俗の欲に堕落して行く様子がエロティックかつキッチュに描かれていました。
テレビや映画でも良く用いられる冒頭の「おお、運命の女神よ」では、タイトな黒のミニワンピースにハイヒールを着た運命の女神・フォルトゥナのソロで始まり、ダンスホール、ナイトクラブ、売春宿の3つのパートで堕ちて行く神学生の姿が描かれていました。冒頭の曲が再び流れてフォルトゥナがソロで踊る内に同じ格好をした人達が等闇から次々に現れてユニゾンで踊るラストが圧巻でした。
大きな白い布を用いて、堕落を象徴したり、大勢のダンサーが消えた様に見せる演出が印象的でした。この曲の特徴である繰り返しの多様に合わせて、同じシーンを繰り返す度に角度を変えて見せる演出が効果的に使われていました。
ショーガールな様なコケティッシュな女性ダンサー達がキュートでした。フォルトゥナを演じた湯川麻美子さんは、一人で空間を支配する様な圧倒的な存在感があり素晴らしかったです。
ピアノ2台を含む大編成のオーケストラ、合唱、ソリスト歌手による演奏も迫力があり良かったです。
満足度★★★★★
ただただ見蕩れて、ただただ圧倒された。
ステージで展開されるのは、「運命」の中で必死にあがく人間の姿。
バレエ観てて涙がこぼれるとか、結構久々かもしんない。
大学卒業して学割使えなくなったんで、去年のストラヴィンスキーまでここ数年しばらく新国立バレエとは離れてたんだけども、こんなにビントレー体制の新国立バレエが面白かったんだったら、もっとバリバリ観に行っちゃってればよかったなあ・・・^^;
『パゴダの王子』は絶対観に行く。