スープ 公演情報 スープ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★

    サイコダイバー
     4人の確定死刑囚が収容されている拘置所が舞台だ。この他に、懲罰房が話に出てくる。この懲罰房には、某新興宗教の元幹部が収容されているが、自傷癖があり、壁に頭を何度も打ち付けるなど、命の危険がある為、拘禁衣を着せ、椅子に座らせて保護しているというのが実情だ。罪を逃れるなり減じる為の詐称という意見もあるが、否、本当に精神を病んでいる、という考えもあって現在はまだ正式な所見は出ていない。(追記2013.8.27)

    ネタバレBOX

     前半部では、法務大臣の視察が近々あるというので、拘置所内では、ミスや事件、事故などが起こらないよう普段より少しピリピリしている。とはいえ、死刑囚達の、メンタリティーは、変わらない。何時呼び出しが掛かって自分の番が来てもおかしくはないからである。いわば、彼らの毎日は、生と死の間に宙吊りにされていると言う状態だ。それが、いかに大きなストレスかは、精神に何らかの異常をきたす者が、多いことでも理解されよう。それらは、こんな症状を伴う。夢で毎晩魘されることは無論のこと、ストレスから発作を起こす者まで枚挙に暇は無い。こんな、囚人達の日常を描きつつ、法務大臣視察日に主人公達は演劇、オズの魔法使いを上演して機嫌を伺い、処遇改善などを訴えようともしている。この辺りに矛盾を挟み込む辺り、死を前にした人間の“生きたい”との念を伺わせて興味深い。一方、囚人の一人は、視察の前日に脱走を図る。事前に発見され、監守も大事にすることを避けた為、不問に付される。が、こういった事情も案外在りそうではないか。
     前半で、死刑囚達の大状況、生活、精神を描いた後、後半は、この物語の核心に移る。新任の刑務官、伊那村は、サイコダイバーである。一方、懲罰房に収容されている宗教団体幹部と元同僚の幹部、倉持も矢張りサイコダイバーだ。(因みにサイコダイバーとは、他人の夢に入り込む能力を持つ一種のエスパーである)他人の夢、つまり下意識に自由に出入りし、無論、その気になり、己の力が夢を見ている主体に勝れば、彼の夢をコントロールすることも可能である。然し、そのように関与した場合、弱い側は、自殺に追い込まれるなどのリスクを負う。同時に仕掛けたサイコダイバー自身も、状況と人間関係によっては、宿命的なトラウマを負う。下手をすれば、サイコダイバー自身が発狂したり、自死せざるを得ないような状況に追い込まれる。文字通り命がけの、知と胆力を賭けた戦いでもあるのだ。
     さて、9歳の時、父の夢に関与して、自らの父を自殺に追い込んだ経験を持つ伊那村刑務官と囚人番号44、通称バースと呼ばれる倉持は、壊れてしまったと考えられる教団元幹部、Aの夢に降りてゆく。倉持が、ウェルギリウス、伊那村がダンテである。無論「神曲」の地獄下りのことを言っているのだ。ことほどさように危険な旅であるのだから。倉持は、教団幹部として、また、詐欺師という前歴が示す通り、論理の首尾一貫性を守るため、かつての同僚を壊れた状態から覚醒した状態へ戻し、以て本人が罪を認識した上で死に赴くことができるようにとの、倉持流オトシマエから、教祖と合体しかねないAの精神の闇に自らのレゾンデートルを賭けて降りてゆくのである。彼には時間が無い。明日までにオトシマエをつけなければ、人間として、死んでも死にきれないのである。何故なら、彼には既に分かっているのだ。執行日が明日だということが。
     倉持の覚悟と性根を知り、伊那村も同行するが、もし、危険が迫って、二人の精神が危うくなった場合、伊那村は、その時点で探索を止めて距離を取り、自らの安全圏へ逃れる、というのが、二人の間に交わされた約束である。無論、倉持は、単身Aの夢の中を更に奥深く迄進むのである。絶対的緊張の中で、刑務官と死刑囚という関係を超えてエスパー同士というより人間として互いを認め合った姿が描かれる。幸い、二人は何とか、Aの夢の深部に辿りつき、分裂していた彼の精神を束ねることに成功するが、刹那、再崩壊の危機に見舞われる。教祖への絶対的帰依状態にあったAは、教祖帰りという最終崩壊へ向かう直前、声にならない口唇に由る発話で「ありがとう」とメッセージを倉持に送る。だが、エネルギーポテンシャルの限界迄高めて事態に対応している倉持には、その意味までは読みとれない。然し、保護され少し安穏な位置に居る伊那村には、それが、理解された。産まれて初めて、倉持は友人に質問する。Aは大丈夫であったか、を!
     Aは、警察の医療施設に送られることになったが、その途上、言葉を少し発した。彼の言葉は、譫妄状態を脱し、ゆっくりではあるが、筋道の通ったものであった。
     この言葉を聞いて、倉持は、死刑台へと赴く。
     一方、後半でもオズの魔法使いの話は生きていて、それぞれのキャラクターの吐く科白は、少しアレンジされて哲学的な回答にもなっている。サイコダイバーの知と胆力の総てを賭けた命懸けの戦いに不即不離な形で寄り添うように哲学的次元にアウフヘーベンされているのである。この融合お見事だ。

  • 満足度★★★★

    舞台演出に妙味!
    舞台における装置、照明などの演出に妙味。
    白のゴムバンドが見事に色々なものを想像させていました。
    こういう舞台初めてです。
    死刑執行前の死刑囚たちは、いい夢を見るくらいなので意外と元気でした。

  • 満足度★★★★★

    進歩するなぁと感心したです
    以前ケチつけた舞台セットが・・・見事に進化していました。
    凄いです!
    使い方も上手で魅せられました。

    話も判り易く楽しめたのですが、
    タイトルの意味のみ、よくわからなかった(^^)です。

    (1時間40分)

  • 満足度★★★★★

    ぐうの音も出ない
    初日。
    黒帯さんははじめて。満席の中、再演希望が多いということもあり期待に胸が膨らむ。
    芝居を見るのはほぼ初めて、という連れも期待。
    結論は、完全にやられた。ブラボー、ハラショー。

    ネタバレBOX

    狭い箱を目一杯に使い、6人とは思えない迫力。突然明かされる設定。
    一人一人にある物語、全員が抱えるものの重み。オズを劇中劇化して二重三重の構造。白と黒のメタファ、本に潜む伏線の数々。

    父を超え、初の友の喪失を超え。自由は塀の中でも、ある。

    必見。さにわ はヤられた。

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