オペラ「リア」 公演情報 オペラ「リア」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★

    栗山民也さんの大胆で広がりのある演出が素晴らしい
    日本初演

    舞台は八百屋舞台で、さらに上手が下がっている。
    オーケストラ・ピットは、ほんの少しだけ下がっている程度で浅い。
    さらに管楽器、打楽器群が、舞台の左右に位置する。

    作 曲 Aribert Reimann
    演 出 栗山民也 
    指 揮 下野竜也
    管弦楽 読売日本交響楽団
    原語ドイツ語上演

    ネタバレBOX

    舞台は八百屋舞台で、さらに上手が下がっている。
    オーケストラ・ピットは、ほんの少しだけ下がっている程度で浅い。
    さらに管楽器、打楽器群が、舞台の左右に位置する。
    そういう配置なので、ピットも浅く、指揮者からも舞台上の演奏者からも指揮者が見えるようにしたのだろう。

    35年も前の作品とは思えない不協和音と金属音が響き、硬質な音のオペラ。
    その硬質さが、リアとその家族たちの関係を、より冷徹に、かつより非劇として鋭く伝えてくる。
    リアの横暴さと2人の娘の非道さがクローズアップされたようだ。

    栗山民也さんの演出が素晴らしい。
    大胆な照明。
    影の演出。

    舞台奥からシルエットになって浮かび上がってくる兵士たちや、リアの末娘コーディリアがイメージとして登場するシーンでの真っ白いラインが印象的。
    それと対照的にリアの長女ゴネリルの真っ赤な衣装と、それを広げて真っ赤なライティング。
    それらがで、舞台に深みを増す。

    衣装によっても登場人物の立場をわかりやすく伝えていた。

    リーガンの灰色の衣装やゴネリルの真っ赤なドレス、リアが権力を振るっていたときから、落ちぶれてしまったときの衣装。さらに ラストでは、コーディリアの心にリアが触れたときに、リアのコーディリアと同じ真っ白なガウンなど。


    私が観たときのリアは小森輝彦さんであった。
    重さと威厳を感じた。
    エドガー役を演じたカウンターテナーの藤木大地さんが素晴らしかった。
    女性のような優しい声なのに力強さがあった。
    道化役の三枝宏次さんは、コンテンポラリーダンスのダンサー。
    どっとりと歌うオペラ歌手たちの中にあって、その間を軽やかに動き回るという演出も素晴らしい。彼のキレのある動きで、オペラがさらに締まって見えた。台詞の通りもよかった。

    それにしても、歌手たちは、あの不安定なところ(斜めに傾斜のある舞台)であれだけの声が出せるのには驚きだ。

    作曲者のアリベルト・ライマンさんもいらして、本人も感動したのだろう、カーテンコールでの姿が実にうれしそうだった。


    私がこのオペラを観た日は、第二部から天皇、皇后両陛下もお見えになっていた。
  • 満足度★★★★

    凄絶な音楽を引き立てる明快な演出
    近年オペラ界で流行りの読み替え演出ではなく衣装も古風で、シェイクスピアの物語世界に違和感なく入り込めました。

    床に広げられた大きなイングランドの地図を分割して姉妹達に分け与える所から始まり、姉妹3人の衣装や照明に赤、青、白とテーマカラーが割り振られ、各場面が分かり易く描かれていました。
    変に現代との共通性を示す様な趣向を盛り込んだりせず、オーソドックスな表現に徹することによって、愚かな人々の悲劇の普遍性が鮮やかに立ち上がっていました。
    道化役は歌手ではなく、ダンサーが演じていて、軽い身のこなしやオペラ的でない素朴な歌唱法が素晴らしい効果を挙げていました。

    とても難しい曲なので仕方がないのですが、第2幕中盤からプロンプターの歌の出だしを指示する声がずっと聞こえていて、集中力を削がれてしまって、残念でした。

    クラスターやグリッサンド、微分音を多用した、軋むような暴力的な響き、あるいは息の詰まる様な静かな響きが続き、古典オペラの様な美しい旋律は皆無ですが、荒廃していくリア王の心象にマッチしていて、劇的な効果をあげていました。
    舞台手前のオーケストラピットは弦楽器が占め、この公演の為にわざわざプロセニアムアーチを撤去して(下地の鉄骨が見える状態でした)管楽器と打楽器を舞台の両脇に配置することで、歌声が楽器の音でマスキングされることがなく、聞き取り易かったです。

    下手奥から上手手前に傾斜している床面に、回り舞台や出入り口が気付かない様に仕込まれていて、それらが使われた時のインパクトがありました。
    後方の壁が両側に開いたり、上に持ち上げられたりしてその奥から登場する様子がドラマテイックでした。

  • 満足度★★★★

    栗山演出大爆発!
    栗山演出大爆発!舞台演出素晴らしい!
    ライマン音楽は最初から不協和音つづきで決して心地よいものではないが、
    コーディリアの死でいかに自分が彼女を愛していたか、そして愛してくれたかを知った時のラスト間際でやっと統一感ある音を奏でる。しかしそれも長く続かずまた不協和音へ。
    四大悲劇のひとつで明るいところが全くといっていいほどないのだから已むを得ないか。
    小森輝彦の熱・狂・演お見事!(何度か彼の舞台や稽古を見ているが、クールで冷静なタイプと認識していた)小山、腰越の悪女ブリ凄まじい。藤木のエドガー驚きました。
    ただ、あの音楽に合わせて歌うのは流石に難しい台詞か、プロンプターの声多かった!(敬称略)

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