実験リーディング『岸田理生を読む。』〜前・中・後期傑作戯曲より〜 公演情報 実験リーディング『岸田理生を読む。』〜前・中・後期傑作戯曲より〜」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★★

    ここ何年か
    リオフェスは全作品見ている、と思う。

    どれも素晴らしい、と思う。

    どこにでもある話を、どこにもないような言葉と演出で、空間と戯れながら形作られているところが、素晴らしい。

    設定も、台詞の重ね方も、非常に微妙なさじ加減が常に必要とされるけれど、
    客席から観ているぶんには構成の複雑さは皆無、と思う。

    女性らしい感性が生かされている、と言えば良いんだろうか。

    男性的な構造の複雑さは影をひそめ、
    代わりに感覚的な語りの微妙さが際立っている。

    後期作品はそこに更に、何人かの男性演出家から取り入れたと思われる要素が、
    光と影のように舞台上を交差する非常に完成度の高いものであるように思う。

    それだけに、特に後期の実験的とも言われる作品の低い評価がとても気になるところでもある、ように個人的には思う。

    寺山作品だと、個人の根元にある幼少期の情景が非常に香り立つため、
    割とニュートラルな作品が個人的に好きな自分には
    作品が凄くはあっても完全に同調できるかと言われると全くもって無理だけれど、
    岸田理生作品はそうした臭いも割と少ないだけに、
    逆に他者の強固な情念を客観的に多層的に演出することに長けているようにも思う。

    ある種、昔語りの、異界を現前に照射する手法を分析し尽くした結果、
    太田省吾やハイナー・ミュラーなどと結びついたと言って良いんだろうか・・?

    この人の作品は、現代のハナシでも語りが昔語りのようである。

    一見、台詞と台詞がつながっていないようで非常に繊細に結びついている。

    21世紀に入って再発見された多くの手法は、
    既に、より日本古来の土着の語りと結びついた形で、
    岸田理生作品のなかに含まれているように感じられる。

  • 満足度★★★★

    『出張の夜』観劇
    始まる前から冒頭にかけてはアッチ方面の話のようにことさら強調していましたが、決してそのような話ではありませんでした。

    ネタバレBOX

    舞台には真っ赤な鳥居、始まる前から冒頭にかけて、白い日傘を持った白い洋服の女性が延々とゆっくり歩き、死後の世界のような雰囲気を醸し出していました。その後のダンスパフォーマンスでは、身悶えたりしながら女の情念を表現していました。

    物語は、出世のため会社の役員の娘と結婚したものの、頼りの役員が死に、少し出世しただけのお飾り的地位で四面楚歌になっている男が、出張先の地でかつての恋人の部屋に押しかけて愚痴るところからスタート。

    女は男と別れて8年、会社は変わったものの、毎日同じルーティンを繰り返すことで男への思いを断ち切ったものの、突然の出現で心が乱されます。男は戸籍を消したいと言い、別人のようになって、あるいは別人になって生きたいのか、そして女と一緒に生きたいのかと考えましたが、男は単に逃げ出したいだけの話で、諦めた男と再会し、やり直すのかと期待したらまた捨てられるというのでは女は心も生活もルーティンに戻すことはもはやできません。女は自殺し、男は浮浪者に落ちぶれるという結末。

    身勝手な男に乱され自殺した女の情念は凄まじいものがあったろうと思います。

    しかし、アッチ方面を示唆することは全く必要無く、鳥居のある風景の中を白装束で歩き回るようなパフォーマンスは要らないと思いました。鳥居はなぜあったのでしょう。脚本にあったとすると、やはり作者は単にアッチ好きの人だったというだけのことですね。

このページのQRコードです。

拡大