謎の球体X 公演情報 謎の球体X」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    水素74%「謎の球体X」観ました
     水素74%は、昨年「不機嫌な子猫ちゃん」を、サンプル「女王の器」と併せて観に行きました。初観劇は…ああ…きつかった。。。絶望しながらアトリエ春風舎を後にしたなあ…
     今回私の行った回(平田オリザさんがトークゲスト)は大入り、通路に補助席がバンバン。


     相手によって複雑に入り組む共依存、ビリヤードかドミノ倒しのように状況によって次々変わるパワーバランス、敵か味方かの閉じた思考での他人との接し方。
     登場人物がことごとく幼稚で病気、劇中キチガイと呼ばれる人がだんだん人間らしく見える…(わりと、人間として感情の変化を追いやすい)。

     そのキチガイ役であるサンプル・古屋さんの、終始いらいらしたような抑えた演技が、繊細でよかった。どうみても本当にアブない人にしか見えない…


     そして、「謎の球体X」とは何なのか…
     アフタートークで質問しましたが、その答えに納得。作者のものの見え方、世界観が示されるタイトルでした。生きるのに難儀してそうだなあ。。。

  • 満足度★★★★★

    イライラする快感
    理屈バカなペラペラな論理が、ものすごく暴力的。クルクルと展開し続ける人間関係は病みつきになる。自分の生きている世界がなんだかよくわからないという事を、共感して見れるように創られた公演で、笑いながら身につまされました。

    ネタバレBOX

    アフタートークは平田オリザさんの回でした。見た目、公開ダメ出しみたいな構図でしたが、これはプロレス的な予定調和なのかなぁと思いました。
  • 満足度★★★★

    理不尽な主張
    ある夫婦の居間を舞台に、入れ替わり立ち替わり訪れる人々の“理不尽な主張”、
    “言われっ放し”の妻の立場がいつの間にか逆転している不気味さが面白い。
    あり得ない展開にも関わらず、台詞には「あーいるいる、こういう人」感ありまくり。
    この現実と非現実が平然と混在する空間が素晴らしい。
    全くもって地球とは、地球人とは謎だなあと再認識させる舞台。

    ネタバレBOX

    がらんとした居間には折りたたみ式のちゃぶ台がひとつ。
    家具らしきものはなく、引き出しが置かれているだけ。
    手前は縁側で外からも人が出入り出来る。

    健児(古屋隆太)は地元で「キチガイノババ」と異名を取る乱暴者。
    妻の増美(川隅奈保子)は頭に包帯を巻き、周囲は皆DVを疑っているが
    本人は否定している。
    この2人の家に様々な人がやって来る。

    「親友なんだから金を貸せ」と臆面もなく手を出す中学の同級生。
    大家の女性も増美の同級生で、増美が自殺未遂を起こしたことに責任を感じ
    一方的に心配しては世話を焼くのが生きがいみたいになっている。
    「台風でお父さんが死んじゃったからこの家で一緒に住む」と転がりこんできた妹は、
    かつて父親に溺愛され(性的虐待を受けていたことを愛情と勘違いしている)父と二人で
    姉である増美を置いてこの家を出て行った人間である。

    このほか、自分が病弱なことを恨みがましくくどくど言いたてる大家の夫や
    生まれて来た意味がわからず、増美の妹に「私を守るためよ」と言われて
    それを鵜呑みにするような男が登場する。

    まー、皆さん自分の主張を何の疑問も持たずにゴリ押しすることと言ったら!
    「え、でも…」「でもあの、本当に大丈夫ですから」「これは転んだんです」と
    常に形勢不利な状態で説明と言い訳に終始する増美が気の毒でならぬ。
    ところがまるで旦那→キツネ→鉄砲みたいに(古…)
    相手が変わると微妙に力関係が変わって来てそこが実に面白い。

    姉の意向を無視して居座ることにした妹は、いつの間にか姉に下女のような扱いを受ける。
    「俺に卑屈な思いをさせるな、喜んで介護しろ」と高圧的だった大家の夫は、
    やがて妻から見放される。

    「俺の言うことが聞けない奴は家族じゃない、出て行け」と言われて
    一度は家を出た増美だったが、結局戻って来て妹を追い出し、
    夫に家の修理を急かすような普通の奥さんになっている。
    (何気に同級生からせしめられたのと同じ金額の5万円を手に戻って来たのも空恐ろしい)

    この強引な理不尽の主張は何だ?
    世の中図々しく言ったもん勝ちか?
    そう思いながら観ているうちに
    終わってみれば何だか増美の思い通りになっている…。
    次第に増えて行く増美の包帯は目くらましだったのかもしれない。
    殴られながら夫を支配しているのかもしれないし、殴られていないのかもしれない。

    長めの場転の間が、自然と場を観察させ次を想像させる。
    突飛な主張を展開しているのに、台詞がリアルなので人物像に説得力がある。
    幽かなBGM、台風だと言いながら蝉が鳴いている静かな舞台が非現実的で
    ”謎の球体”っぽさを醸し出す感じ。

    キチガイノババ、健児を演じた古屋隆太さん、
    ぬっと出て来ただけでアブないタイプと判る存在感大。
    か細くて頼りなくて、世間知らずの典型のような増美役の川隅奈保子さん、
    外に対しては下手に出るが、妹にはきっちり言うことを言う(言い過ぎるほど)。
    “家族だけが信頼できる”とする夫に対して
    “家族だから許さない”妻のスタンスが鮮やか。

    宗教・政治・家族・お隣さん、強力に主張する人々に従ってしまう凡人、
    あー私も危ない、しっかりしよう。
  • 満足度★★★★

    ホラーだった
    途中から誰が一番ヤバいのか見えてきてからが怖い(汗

    ネタバレBOX

    一番の弱者っぽかった奥さんが徐々に本性を出してきてからが本当の恐怖。

    途中からなにが本当だか分からなくなってきて、
    「奥さんの腕の怪我も嘘なんじゃ?」
    と思ってると、
    隣家から大家夫婦を呼びに来て
    「台風が近付いてきて隣の屋根が吹っ飛んだ!」
    と蝉の元気な鳴き声がするのに平気で言い放ち、
    大家さん(奥さん側)が台風に怯えて(フリ?)心臓病の旦那を捨てて逃げるにあたり、
    コイツらどこまで狂ってるんだ?
    と思ったら、
    奥さんが親友のフリをして自分から奪って行ったと思われる5万円を旦那に渡すところで、
    奥さんの腕の怪我が嘘で、
    その友達を脅して自分の金を奪ってきたのではないかと(自分としては)確信。

    どうでも良いけど、あの腕の包帯の中にはその嘘の親友を刺殺した(推測)
    凶器の出刃包丁でも握ってるんじゃ・・?
    という疑念をよそに、平気な顔でその5万円受け取って、
    うち3万円を大家(旦那側@心臓病?)に支払う主人公の旦那の強心臓に感服(苦笑

    でも、話の中でどうも3万円で困るようなたくわえではないらしいことが読み取れ、
    「たぶんこの旦那逆に凄い金持ちで、狙ってるやつが多いからこんなに家賃に困ってるフリをしてるだけなんじゃ?」
    という気配も。

    主人公の嘘の親友も、どっかから情報を得て、
    守りの手薄な奥さんの方に来たのかもしれない。

    そうでなければ新幹線に乗って
    2000円以上のハンバーグ弁当を食べてわざわざ
    台風が吹き荒れたばかりの寂れた港町(と言ったところかな?)に来る訳もない。

    2000円→5万円→100万円→3000万円→億?

    倍々ゲームで通帳をこじ開けに来た、
    ヤクザの情婦になった尼崎的元同級生(推測
    だとしたら、
    このあとどんな展開が想像できるんだろうという気も。

    ・・まぁ、現実でも誰が金持ちで誰が貧乏かなんてわからないし、
    「家族以外は全員敵!」
    と言い切って生活できるということは、
    この旦那、貧乏な港町(推測)
    で金があることが分かったら集られまくることを危惧して
    狂人のフリをして他人から離れて生活をしている
    至極まっとうな人なのかもしれない、
    と思うと、彼以外の全員が狂人(+ヤクザ関連の人)にも見え、
    その運命の救いようも無さに身が竦む。


    (補足)
    良く考えれば、蓄えも無くて家賃3万円の借家追い出されたら普通途方に暮れて泣き叫んだりするはずで、
    平気な顔をして出て行こうとするということは、
    金が無いふりをして滞納して出て行って出費を減らそうと言う
    (貧乏なフリをすれば多少未払があっても何も言われないかと考えて
    金持ちの所業に違いないのではという気も。
  • 満足度★★★★

    生傷
    面白い。

    ネタバレBOX

    健児(古屋隆太)…異名「キチガイババ」。「家族」に固執し部外者を排除しようとする。攻撃的だがキズついてる人。
    増美(川隅奈保子)…健児の妻。父からは疎まれてて、父と妹に捨てられたことを気にしている。結局健児の元に戻る。
    奇子(富田真喜)…増美の妹。父にセクハラを受けてたけど、本人は愛情を受けてたと勘違い。そして美人と勘違い。守ってくれる人を求める。
    何者(八木光太郎)…突然生まれた人。奇子を守ると約束するもハサミにビビッて逃げ出す。結局、奇子に捨てられてしまう。
    春江(村井まどか)…増美の同級で大家。増美の自殺のことを引きずり、増美が気になってしょうがない。田中を負って生きることがイヤになる。
    田中(折原アキラ)…春江の夫。足(と精神?)の病気(障害?)で入院してた。自分の境遇を不公平と嘆く。
    村田(兵藤公美)…増美の同級。親しくもない増美に無心し、52,000円を掠め取る。

    健児と増美の「家」に色んな人が出入りして織り成す会話劇。展開展開で関係性も変わっていく舞台がやはり面白い。

    傷を負った人間が、それを刃に替えて他者に向けることで熱が生まれるといった作品。キチガイ扱いされた健児、ファザコンな奇子、弱者コンプレックスな春江、障害者の田中とか、外(客席)から眺めてるとその傷がはっきりと見えるのが舞台的だなと思う。現実で相対したらそんな傷なんて見えっこないんだけど、もし傷が見えたら、この作品の人物らのように(ちょっとだけ)かわいく見えるようになるかなと。

    終盤、増美が「自分たちだけのルールで生きる」というような発言があったが、ちょっと気持ちわからんでもない。そうはしないようにするけど。110分。
  • 満足度★★★★★

    理不尽な社会
    最後頼れるのは家族だけです。

    ネタバレBOX

    身勝手な人たちが、それぞれ自分勝手に生きている社会。理不尽な要求をされることもあります。最後、守ってくれるのは家族だけという話。

    キチガイと呼ばれていた男が、ま、生活力はあまり無いかもしれませんが、家族を守ろうとする一番まっとうな人間に見えてきたところが面白く、笑っちゃいました。

    ただし、家族の定義が重要で、家族から外れると守ってもらえません。シビア。

    混んできて、通路に補助席を作るのかと思っていましたが、一番上段に一つ作っただけでした。全ては納得。

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