笑う警官 公演情報 笑う警官」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★★

    TVよりも豊かな表現方法で人気刑事ドラマの二時間スペシャル版を観劇したような感激が
    パンフを軽く読んだ上での観劇だったので、「警察官」のあり方/考え方、
    などについて突っ込んでいく作品なのだろう、ぐらいには思っていましたが
    道警(北海道警)で発生した殺人事件に対して捜査を外されてしまった
    刑事達の独自捜査と警察の暗部に関わる大きな事件とのつながり、
    主人公刑事「佐伯」の過去の経歴から発症したPTSD/ナルコレプシー(眠り病)、そして妄想、
    それと対比するかのように悪役部長刑事「石岡」の警察組織での中間管理職としての”悪行”、
    被害者女性への依存、しかし最後の最後で悪に徹し切れない自分
    (警察官としてのあり方にさいなまれる)、
    などいろいろな設定/伏線がそれぞれバラバラにどんどん投入されてくるのですが、
    それがいつの間にかつながっていき、そして物語自体が色々な方向から
    最終的な結末へ向かうという、場面はずっと「バーの中」なのに
    刑事達の捜査活動や思考/検討、葛藤そして反目、
    そういった人間ドラマが目の前で所狭しと繰り広げられていて、
    かなり夢中にさせられてしまいました。
    終わった時には「まさかここまでいいもの観せてもらえるとは」と
    胸の中が一杯になってしまいました。

    「次は1年後を予定しています」との事でしたが、必ず観に行きたいですし、
    待ちきれない気持ちもかなりあります。

    ネタバレBOX

    この舞台を観て、「すごい!物語が心に入り込んできたし、感動した!」と
    感激しているのですが、その中で出てきた全部の設定や伏線その他については
    記憶しきれなかったり、理解したつもりの内容自体が実は間違っていたり
    (作者の意図と違ったり)、という部分が多々あるかと思います。

    以前、すごく凝った脚本を書く別の劇団の舞台でも全設定/伏線とその回収/演出の理由などを
    全て把握しきれなかったのにショックを覚えたのですが、ある人に
    「物語について全部を全部正しく理解するという事よりも、まずこの舞台を観て自分がどう思ったか、
    感動出来たかどうかが重要では?」という言葉が胸に響いたので、
    自分がこの舞台を観て考えた/感じた内容をまず列記します。

    ※ 一言で感想を言えず(言いたい所、感情の動いた所が多すぎて)、
      ひさびさ長文を書いてしまいました。


    ・ 笹塚ファクトリーというとセットにあまり凝れない
      小箱のイメージがあったが見事に隠れ家的地下バーを再現していました。

      (まだ観てないので内容は知らないのですが)
      ドラマ「探偵はバーにいる」のように
      本捜査を外された連中がバーに集まり
      「隠れ家バー裏捜査本部」とでも言うような
      状況を作って独自捜査を行なっている感じがよかったです。
      (雰囲気が良かったです。)


    ・ 開始直後、バーで居眠りする男「佐伯」(?あるいはママでしたっけ?)と
      謎の踊り子達、亀のジョージ(ロンサムジョージという奴でしたっけ?)
      の話が出たと思ったら、いきなりヤクザも出てきてSMチックに展開したり、
      それを「佐伯」が射殺してしまうという場面になって、
      「心に闇を持つ刑事の妄想劇」か何かなのだろうか?と
      初っ端からミスリードされそうになりました。

      結局は、刑事「佐伯」が数多く手がけたおとり捜査の中での不幸な経験から
      PTSD/ナルコレプシーを発症し、女房との中もおかしくなってしまったという体験が、
      ナルコレプシーで眠ってしまう度に妄想として
      更にハードになった形で妄想劇として登場してしまう、という事のようでした。

    ・ 道警の婦人警官が絞殺(?)され、恋愛関係にあったとされる同僚刑事が
      指名手配された上でいきなり捜査権を上に持っていかれた上に
      SATが要請され、射殺命令まで降りている、というかなり強引な展開。

      「これはあまりに異例すぎる、絶対何かが裏にある」と推理する刑事達。

    ・ そして、実は道警で裏金作成の仕組みが出来上がっており、それについての
      証人喚問に同僚刑事が出る事になっていた。
      これについて「歌う」(でしたっけ?警察内部の身内が仲間の情報をばらす)
      行為を行う事について、反感を持った別の刑事は、
      「この捜査からおれは降りる」と宣言して外れてしまいます。

    ・ その後の推理、捜査から
      ・ 同僚刑事と婦人警官は既に別れていた
      ・ 婦人警官は二股をかけていた
        ※ 実際は更に風俗で働くなど、かなり荒れた生活を送っていたようですが・・・
      ・ 婦人警官の持っていたTVや貴金属が質屋に売られており、
        それを売った空き巣(真犯人か?)が特定される
      などから、一度は仲たがいした刑事たちに再び連帯感が生まれ協力しあいます。

    ・ しかし、空き巣はあくまでも殴っただけ、殺人はおかしていない、
      元から婦人警官(風俗嬢と思っていた)は別の誰かと会う予定だった、
      その相手を自分は見ている(高級そうなスーツを着た男だった)、
      という事で更に捜査は振り出しに戻ります。

    ・ (タイミングが前後してしまってるかも知れませんが)
      道警上層部の裏金作成の仕組みについて、このネタをバラされるのを止める為、
      「どこかの権力者が裏から手を回し同僚刑事の犯行に見せかけた上で射殺命令を出した」
      という推理が行われています。

    ・ そして、今までの流れから考えて悪役部長刑事「石岡」こそが、
      婦人警官の恋人であり、殺人者であり、今まさに同僚刑事を射殺しようとしているのでは、
      という推理の元、刑事「佐伯」が「石岡」にその内容をぶつけますが・・・

    ・ 「佐伯」と悪役部長刑事「石岡」の2人きりの対峙、
      「自分も悪の親玉ではなく、更に上がいる、自分を捕まえたとしても状況は何も変わらない」
      という警察組織で実際にありそうな現状を語ったり、
      独白を続ける中で「佐伯」がナルコレプシーで眠ってしまった時に
      「こいつを殺してしまえば・・・」と行為に及ぼうとするも

      BGM「警察学校入校時の宣誓書」

      が流れ
      (パンフに記載があった時から気になってはいたのですが、このタイミングで
      出るのが本当に憎い演出だなな、と)
      警察官とは「この善意に基づくルールによって存在しなければならない」
      という事に思い至って葛藤して犯行を取りやめ、

      更には「佐伯」のみならず、「石岡」も悪に手を染める原因となった
      婦人警官(朝美でしたっけ?)への依存の情景の妄想演出が入ったりと、
      この場面は結構主役の「佐伯」を悪役部長刑事「石岡」が食ってしまったのではないかな、
      (それはそれで舞台として美味しい展開ですが)と思いました。
      特に「だったら舐めなさい!」とヒール/足を舐めさせられる場面など
      婦人警官と悪役部長刑事の実際の上下関係が露骨に見えていたと思います。


    ・ 物語の裏にある主題として(勝手な想像ですが)
      国家より警察権力という力を与えられ、正義という公務を成す警察官は
      「自分を正しく律する、高いモラルを持っていなければならない」
      という事が「警察学校入校時の宣誓書」にて語られていますが、
      今の時代
      ・ 医者だって命を救うという崇高な使命の前に
        お金も欲しい、趣味を持ったり楽しく生きたい、人間的な生活/労働環境だって欲しい、
      ・ 警察官や弁護士、司法関係の人間だってみんな同じ気持ち
      というように、「正義」が仕事だから心も「正義のみ」で構成されていなければならない、
      ではなく、普通に大人として社会で働く人として、
      もう少し「人間的に扱ってほしい、扱われるべきである」
      という(この物語でいえば)「警察官」とはどうあるべき、ではなく
      どうすれば良かったんだろう?
      ・ 「佐伯」の心と家庭は壊れなかったのか
      ・ 「石岡」は悪に手を染める事はなかったのか
      という点が、この2人を対比しつつ、観劇者側に対してもつきつけられているのではないか?
      と思いました。

    ・ そして、亀のジョージは「100年間何を考えていたのだろう?」と精霊?風の女子が言っていたり
      「佐伯」が「友達になれたかな?」という語ったりしている部分は、
      昔ながらに「愚直なまでに生きてきた亀のジョージ」と
      同じく「愚直に刑事を行なってきた」自分とは
      似ている存在(その為に亀のジョージが物語に出てきていた?)
      という風に感じました。

    ・ 「石岡」に1日くれ、と言われ、バーで「佐伯」と同僚婦警が泊まる場面で
      暗転した際に、ここで物語も終わるのかな?
      と思ったら、翌日の場面につながり
      ・ 「石岡」は自殺
      ・ 警察、機動隊はバーの周りを包囲している
      そしてバーに突入、同僚刑事を射殺、という
      「まさかこんな悪い方向にオチるのか!」と思わせた所で
      実は同僚刑事は別のルートで既に証人喚問に到着していた、
      撃たれたのは(可哀想ですが)オカマの人(防弾チョッキ着用)、
      だった、という快活なオチ。

      ここで「佐伯」は笑います。

    ・ そう、ずっと気になっていたのですが、何故、この物語は
      「笑う警官」だったんだろう?
      
      色々な場面でそれぞれの警官は「怒ります」「葛藤します」「悪に誘惑もされます」
      「悲しみます」「苦しみます」「叫び出します」、
      しかし、どこがこのタイトルの”笑う”なのかが、
      自分には最後まで特定できませんでした。

      多分、上記オチの場面での「笑い」ではないのではないか、という気がしています。

      それこそ、物語を観ていた観客側が「笑えたかどうか」そういった意味なのかも、と・・・

    ・ 最後、チーママが「結婚します」宣言した後で、
      「佐伯」がママのお誕生日を御祝いしますが、
      そこで「結婚しよう」と言わないのが、ここまで物語を
      進行してきた、「佐伯」という人物なんだなあ、と妙に納得です。

      ママにプレゼントした「色紙?」には一体何が書いてあったんでしょう?
      かなり気になります、まさか「警察学校入校時の宣誓書」内容じゃあないだろうし

    ・ 1点だけ分からなかったのは、同僚刑事が身を隠した事その他について、
      度々情報を漏らしていたのは誰だったのでしょうか?
      仲たがいした刑事だったのか(それらしき事を確かに言っていた)、
      あるいはママの店で働くチーママ「マリ」かと疑いましたが、
      結局「結婚します」という報告があったのみでその方向にはなりませんでした。

    と、物語を思い出しつつ(前後関係や認識は間違ってしまってるかも知れませんが)
    これだけ色々な事を考えたり、感情移入したり出来たという意味で、
    今年観た舞台の中では(多分)一番おもしろかったと思います。
    (舞台はその脚本世界の大きさよりも、緻密な設定やドラマ、
    とにかく感情を動かす要素こそ重要なのだなあ、と思いました。
    特にドラマについては、「佐伯」だけでなく「石岡」、その他面々や更には
    魔性の女のはずの婦人警官についてもドラマがあり、感情移入できる部分が存在しました。)




    【気になった点】
    ・ 舞台演劇にしては台詞の口調があまり声を張らない感じだったので、
      一部聴き逃しがありました。席の位置のせいもあるのかも知れませんが。

      しかし、演技の前後関係で「こういう事を言ったのだろうな」と
      すぐ理解出来たので特に問題とは思いませんでした。

    ・ 笹塚ファクトリーの椅子がかなり劣化していました。
      真ん中が凹みまくっていたりとすわり心地が悪く、
      演劇中申し訳ないとは思いつつ、度々お尻のポジションを
      直すハメになりました。
      (中盤以降集中してくるとそれもなくなりましたが。)

    ・ これだけの物語、設定、登場人物が出る話だからこそ、
      アフターパンフレット的な全体像の分かるパンフが欲しかったです。
      誰がどういう人だったか、どういう理由で物語が動いたのか、
      という部分を、全部が全部「脚本家の想いを見せて!」
      とは言いませんが、色々思い出して楽しみたいです。




    【お詫びというか】
    ・ TVの刑事ドラマの二時間スペシャルを観ているかのように、
      心を持ってかれてあまりに気持ちよく終われてしまったので、
      「この御礼はしないと」と笹塚駅で、
      しかも今回が最終公演という事で暑い日なのですぐにも
      冷えたものが食えたほうがいいだろう、と
      銀座コージーコーナーで(一応包装されてない食べ物は色々問題あると思ったので)
      袋入りのシュークリームその他買い込んで(かなり並んでたので時間かかったが)
      すぐ舞台に取って返して
      「舞台終了後で申し訳ないんですが、(・・・間・・・)
      あまりにおもしろい舞台だったので(しどろもどろ)
      ぜひお礼をしないとと思いまして(しどろもどろ)
      あの保冷剤入ってるんですが、1時間ぐらいしか持たないと言われてますので・・・(意味不明)」とお菓子をつきだして帰ってきてしまった。
      挙動って難しいね。営業経験あれば良かったな( ´ー`)
  • 満足度★★

    うーん
    ストーリーも演出も役者の演技も終始ちぐはぐな印象。ただ水村朝美だけは素晴らしかった!

  • 満足度★★

    感情移入しづらい
    出演者の平均年齢は高め。客層も高め。
    全体から感じる演技の雰囲気はベテランらしく心地よい安定感がある。

    逆にストーリーは単調で読みやすく、笑いを狙ったシーンもあるが、数は少なくネタも大人しめ。
    また、作者の都合により現実離れした出来事がいくつか起こる。
    こういう毛色の作品では、リアリティが有るか否かは作品に感情移入できるかどうかを左右する重要な要素だと思うのだが、それに欠けていた気はする。

    ネタバレBOX

    舞台は北海道のとあるクラブ。そこで婦警殺しの容疑をかけられた警官の無実を証明するべく、同僚たちが奔走する、という内容がメイン。

    ところが、この北海道警をも敵に回そうという捜査本部のセキュリティが異常に甘い。
    一般人のオカマや酔っ払いは何度も乗り込んでくるわ。
    一番警戒するべき道警の人間にもあっさり乗り込まれるわ。
    重要な証人である空き巣には簡単に逃げられるわ。
    こんな調子で真犯人を捕まえる事はまず不可能と思ってしまうのだが、そうでもない所には脚本家のご都合主義を感じてしまう。

    また、クライマックスの守ろうとした容疑者が撃たれてしまうシーンも、替え玉で防弾チョッキを着ていたとはいえ、一般人に撃たれる役を押し付ける警官にはリアリティは無い。ちなみに撃つ方も警察で、顔も確認しないでいきなり撃つ。

    あと、殺された婦警がミス道警、可愛いって得、良い女だった、と散々ハードルを上げられた後に登場し、全然可愛くなくてかなりガッカリした。

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