満足度★★★
痛み
脚本のテーマや役者の演技がシンプルに伝わってくる舞台でした。
誰もが痛みを抱えており、私も痛みを感じずにはいられません。
皆ただ生きようとしているだけで、世の中に本当の悪人は一握り。
満足度★★★★★
黒
背景も衣装も小道具も黒一色で視覚的情報が少ないぶん、登場人物の微妙な心理状態があらわになっていたように感じました。医者と弁護士の娘が、セリフが過激で面白かった。
ライトを当てない役者に「関係性」を映す
セットやシチュエーションではなく、一対一の関係性によってのみ構成された舞台といってよい。
投資ファンドや、交通事故や、愛人といった、「重々しい」テーマ性のなか、思わぬ三角形が形作られていた。
一対一に当たるスポットライト、それは関係性を映し出す道具なのだ。
暗闇の、もう一つの関係性を待つ演者は、三角形を画として体現するのかもしれない。
全体として、極めて圧縮したストーリズだと思った。
線をなぞるように、シチュエーションを設定し、それに合わせる形で展開を築く構成もアリだったはず。坂上忍氏プロデュースの濃縮された今舞台は、“あえて”同時並行で展開を進め、一人の役者を軸とした二重シチュエーションも築き上げたのだろうか。
テーマ性としては、先に上げたとおり、投資ファンド、交通事故、愛人を包み込む「重々しい」である。
ただ、それを助長する音響や照明を使わず、ひたすら一方向へ流れる時間が そこに あった。
「演劇は観客との対話である」考えは主流だろうが、私は「鑑賞」させてくれる演劇を感じた。
無駄なパフォーマンスを減らした上で、基本は椅子に座った「重々しい」人々を、細部まで見つめてしまう。決して、表情や身体の細部だけ ではない。
ライトアップされる関係性にこそ、「鑑賞」する対象として見つめるのである。
ペロペロキャンディを舐める男児と少女に、縁側で休む千代大海の風景に接したとき抱く感情はない。2人の境遇、関係性を私たちは知り過ぎたからである。
エロチシズムさえ、パフォーマンスを排した、関係性の中でしか発揮しない。
ラストの展開は、ある意味で関係性を描いた舞台の真骨頂というべきものである。
それは、ライトアップか?
いいや、やっと現れた音響というべき怪物である。