砂漠の密室 公演情報 砂漠の密室」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 満足度★★★

    宗教色の強い結末が意外
    宗教版「イヌの仇討ち」からの「教祖誕生」あるいは「母性最強説」…と思いきや、宗教色の強いオチは意外。
    が、考えてみると「奇蹟」で締めるよりテはないような気がして、これはこれでアリ、な感じか?

  • 満足度★★★★

    人間の
    負の側面、そのパワー、弱さ、醜さ、また、カルト?の内部、詭弁の力、組織と人間社会の怖さ、みたいなものが激しく描かれていました。。 役者の方々の演技には隙がなく圧倒されました。 若干ステレオタイプ的な滑稽にも見えるところもあるようにも思いましたが、現実の世界でもそういったことが普通にまかり通っていたりすることも考えるとそれも含めてリアリティを追求しているとも言えるかもしれません。 SF?的な側面や客観的な視点があることがある意味救い?にもなっている訳ですが、それによって演劇というエンターテイメントの形になっているのかな、と。 あとは、細かいことですが、始めの方に、もうちょっと教祖が教祖たる由縁というか立派な?きれいごと?みたいなものが描かれているともっと説得力があったかなぁとも思いました。 演劇としてのレベルはすごく高いと思いました。


  • 満足度★★★★

    演技力
     人間が考え出した思考の中で最も不合理で間尺に合わないものは? と問えば、正解は、無論、宗教である。従って、理性的に思考することが出来ると自負する人間にとって、宗教とは、赤子の頃から刷り込まれたのでない限り、滑稽でしか無い。但し、世界は不条理に満ち、その不条理を負わされ呻吟する多くの人々が、それに頼らざるを得ない現実というものがあるのも事実なのである。この辺りの事情を演技力とシナリオの良さ、本質を衝いた演出で見せる。(追記 5.18)

    ネタバレBOX

     理知と弱さ、この双方を理解し、悪知恵に長け、而も複合的意識を常に脳中に活性化し得る人格が、他者を己の欲得の道具として物象化することは容易い。無論、縁なき衆生を救うため、実際、命賭けで倫理を守り、人々の命を守ろうとする聖者を自分は否定しない。実際、自分の尊敬する宗教者の中に、このような聖者は何人もいる。現代の名僧知識である。だが、彼らは一様に、教理にドグマティックに拘るような愚か者ではない。在るがままを真っ直ぐに見つめ、命の論理に最も大きな価値を見出す知恵者である。
     然し乍ら、今回、今作で描かれた「宗教者」、神楽坂 向陽は松本 智津夫などをモデルに作り上げられたキャラクターであり、偽物。もっと端的に言えば、単なる詐欺師である。周りに居た信者達はどうかと言われれば、ストックホルム症候群の患者達と考えれば筋が通ろう。そうでない者は、松本と同類で、更に悪賢い詐欺師乃至は洗脳された者である。何れにせよ、自らの劣等感を生みだす原因となったもの、或いは知の導くままに真相を追い、明らかになった事実の前に、自らの力で立つことができなくなったり、自らの力で克服できずに居る人々である。
     他方、詐欺師が詐欺師として成功する条件は、基本的には頭の良さである。ここに登場する神楽坂 向陽もそのネーミングからしてこの「宗教」の崇拝の対象、天照 大神を己の名に取り込むテクニックを見せ、更に、科白にあるように、宗教がその信者に信じさせる信仰の本質を言い当てている。即ち、「宗教は謎を中心にし、一方で真理を探究する」謎を解明する為には真理の探究が必要不可欠であるから、謎めけば謎めくほど宗教は、威光を増し、有り難がられるのである。この真理探究と謎の無限のループこそ、信者をして宗教の虜にする本質であることは、多少自らの頭脳で考える習慣を持つ者であれば、誰しも到達するレベルの思考だろう。そして、この程度のことが、宗教と名指される総ての思考に共通するコンセプトである。
     教理問答はこの程度にしておこう。ここは、観劇に関するコーナーであるから。本作が、芝居として面白いのは、密室に閉じ込められた5人の心理状態や人格崩壊の緊迫感を、身体感覚に落とし込んで描いている点にある。詳細は、無論、公演を観て感じて欲しいが、主役の神楽坂 向陽を演じている佐藤 秀樹の演技が殊に迫真に迫り、自分は好きである。無論、他の役者陣も、良い演技をしている。何と言っても、自分のように理屈っぽい無神論者が、新興宗教を扱った作品に引き込まれたのは、役者陣が、演技でどんどん引っ張っていってくれたからであるのは、明白だから。

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