おい、小島! 公演情報 おい、小島!」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    タッタタ探検組合流ミステリー
     いつも質の高い喜劇作品を演じ続けてきたタッタタ探検組合が、今回挑むのは、ミステリー。無論、いつもの笑いは健在だ。而も泣かせ所、鋭い風刺、謎解き等々盛りだくさんの内容だ。
     発端は3年前、ヤクザと黒い噂のあった町長が、鉄パイプで殴り殺された事件だった。容疑者として手配されたのは、小島という名の組員である。一度、警察は彼を追い詰めたことがあったが、すんでの所で逃げられてしまった。ところが、その小島が出頭してきた。3年間、何処に、どのように潜んでいたのか。若い署員が尋問するが、小島は、話をはぐらかして一向に答えない。退官間際の鬼刑事に尋問者が変わると、刑事の物語り意識に感応したかのように、小島は事件後の顛末について語りだす。その内容は、極めて特異なものだった。
     (追記4.23)

    ネタバレBOX

     事件後、間もなく小島は、月光荘という名の、築40年、敷金、礼金無し、家賃は半年10万円、風呂なし、角部屋、陽当たり良しで、不動産屋も通さない安アパートを100万前払いして、借りたのである。今では、他の部屋の住人もおらず、大家の話では、幽霊が出る、と噂の立っているこのアパートは、追われている彼にとって都合が良かった。
     ところが、住み始めると直ぐ、夜中に飲めや歌えの大騒ぎが聞こえる。寝惚け眼をこすって電気をつけると誰の姿も無い。そんな事を数回繰り返すが、矢張り、騒々しさは消えない。そうこうしているうちに電気をつけても彼らは消えなくなった。当然、互いに誰なのか、人定質問を始める。分かったことは、彼ら8人が、このアパートの先住者だったこと。約3年前、小島が越してくるちょっと前に、一酸化炭素中毒で全員が亡くなっていたことだった。だが、何故、彼らは成仏できずにいたのか。その理由は、もう一人の正体不明者によって、明かされる。幽霊たちから見てさえ異界の者である、この存在は、悪魔とも死神とも解すことはできる。然し、解は最後まで謎である。衣装は白、但し、矢印形の尻尾が生えている。人の言葉を話すが、話し方は異様である。だが、謎の存在は、失踪した小島が、元属していた組織、竜泉会の若頭と幹部に住処を突き止められ、窮地に陥った時に、小島を8人の幽霊と共に救う大活躍を見せる。さて、この時、小島事件の詳細も、何故、彼が竜泉会から狙われるのかも明らかになる。小島は、町長殺しの真犯人ではなかった。殺ったのは、若頭である。小島は、薬中だったが、組長に拾われてヤクザになっていた。その小島には、聾唖者の娘が一人いた。小島は、大層娘を可愛がり、自分でも手話を覚えて話していたが、何かと言えば、タイガーマスクが出てくるので、娘が父の言う前に、手話でタイガーマスクを表現する有り様であった。そんな娘思いの小島は、木偶の坊で粗暴な若頭の身代わりに服役することを潔しとせず、組の金4000万を奪って逃げたのである。だが、組も黙ってはいなかった。交通事故に見せかけて娘を轢き殺したのである。犯人は幹部、藤堂である。小島は復讐を誓って潜伏していたというわけだ。幽霊達の助けを借りて、銃を小島が手にした時、娘がそれを望んでいるか、と助けてくれた者から言われた小島は、手を下さずにいたが、仲間割れの同志撃ちでやくざ二人はこと切れる。
     と、不思議な存在は、幽霊達に束縛から逃れる術を示唆し、呪縛から救って次のステップ、未知なる世界へ旅立つ手助けをするのであった。一人、また一人と幽霊達は、部屋の結界を破って新しい世界へ出てゆく。こんな経過を辿って小島は出頭してきたのであった。
     鬼刑事の尋問終了時、取材の入っているこの事件で、「記者達の所へ小島を連れて来るように」との課長からの電話に答えた若い刑事が、「想定外の云々」という科白を吐くが、無論、3.11.3.12以降、原発推進派、及び地震・津波に関して非常識な論戦を張っていた御用学者達、官僚、議員、裁判官ら、人災について罪を負うべき連中が口を揃えて言っていた“想定外”への痛烈なアイロニーであることは言うをまたない。
     ところで、大家が、小島の越してきた時にも、鬼刑事が大家を訪ねるシーンでも、約半年後に月光荘は取り壊しになる、と話していることも、単純に考えると矛盾と捉えそうだが、事件の3年後に自首して来た小島が、話し終わると忽然と消え、而も、近隣の山中で白骨化した、死後2年以上とみられる死体から見付かった免許証が小島の物であったことを梃子に考え、更に小島が現れた頃、施設に3900万円入りのバックが置かれており、プレゼンターの名がタイガーマスクとなっていたことも考えるならば、大家の話の時間的齟齬も別の様相を見せるのである。この謎を含めてのミステリーではないだろうか?
     

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