公演情報
「Flowering Cherry」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2026/04/18 (土) 14:00
座席1階
悲しい物語ではあるが、劇場を出て風が心なしか清涼さを感じるという気持ちになった。この座組の力ゆえだろう。
多くの翻訳劇を扱うカトケン事務所だが、今回は1950年代のイギリス演劇。パンフレットで翻訳の小田島恒志が書いているように、現実から目を背けるジレンマが描かれているのがポイント。誰にも、どの家族にもあるこのような胸の内を、家族の群像劇として浮き彫りにしている。客席は自分を照らして心あたりを見つけ、舞台にのめり込んでいく。
もちろん、主役の加藤健一の演技が力強いエンジンとなって舞台を引っ張っているのだが、今作は脇役たちがとてもいい味を出している。Pカンパニーの林次樹、文学座の山本郁子、劇団チョコレートケーキの浅井伸治など、役柄をきっちり果たすだけでなく、場面の空気を担う絶妙な仕事をしている。この座組を構成したのは加藤健一なのだろうが、カトケン事務所らしい作品を仕上げるために選ばれた配役だと思う。
本当の気持ちを言葉に出して言わなければ、本当のことは伝わらない。70年も前の戯曲は人生のヒントを今に伝えている。若い世代の観客がいつもより多かったのは、とてもよかったと感じた。
実演鑑賞
満足度★★★★
金を払うに値する高レヴェルの芝居空間。古典的名作とされるだけの強さがある。台詞の遣り取りで語られる一つ一つのエピソードが目に浮かぶ。
『アラビアのロレンス』、『ドクトル・ジバゴ』、『ミッション』等の映画で世界的な名声を得た脚本家ロバート・ボルト。彼の出世作となった舞台『花咲くチェリー』は1957年11月20日初演。日本では1965年、文学座で初演。北村和夫が400回主演してライフワークとさえ呼ばれた。(最後となった2004年の地人会公演では主演北村和夫、奥さんベル役に八千草薫さん!)
1957年の初春、ロンドン郊外に住む一家の物語。旅行保険のセールスマンから管理職に出世したジム・チェリー(加藤健一氏)にはずっと夢があった。いつか故郷のサマセット(イギリス南西部地方)に戻り、リンゴ園を経営すること。生家がそれを生業にし、満ち足りていた黄金時代の記憶。
妻のイゾベル=ベル(山本郁子さん)、20歳で結婚して25年夫に尽くしてきた。
徴兵の近いT・S・エリオットを愛読する生意気な19歳の息子、トム=トーマス(澁谷凜音〈りん〉氏)。
デザインのセンスで特待生候補の女子高生、ジュディ(小田あかりさん)。
ジュディの憧れで、卒業したら一緒に部屋を借りて住む約束をしている学校のスター、キャロル(菊地歩さん)。
ジムの同僚で気の優しい友人、ギルバート・グラース(林次樹氏)。
突然の来訪者、デイヴィッド・ボウマン(浅井伸治氏)。
浅井伸治氏は内田健介氏を思わせるノリで笑いをかっさらう。
澁谷凜音氏はメンタリストのDaiGoっぽい。
山本郁子さんは森光子の面影を。
加藤健一氏は舘ひろしと三船敏郎を足したような苦み走った魅力。
シードル(リンゴ酒)と言うよりもスクランピーの入ったミニ樽が家に鎮座している。(スクランピーとはイギリス南西部地方で飲まれるリンゴ酢に似た味の強烈なシードル)。これをガブガブ飲む姿が実にいい。
黒澤映画を観ているような面白さ。
是非観に行って頂きたい。