しだれ桜 公演情報 しだれ桜」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    矜恃と時流
     パッチワークのような構成で、龍馬暗殺の辺り(1867年頃)から第二次大戦後(1945~47年頃)までの約80年間を、京都の山奥にある饂飩屋一家の消長とその庭に立つ枝垂れ桜を梃子にして描いた作品。

    ネタバレBOX

     龍馬暗殺の下手人は、壬生組の女剣士という設定になっているが、無論、歴史とは関わりが無い。龍馬暗殺に関しては、自分の調べた範囲では定説と言えるものは未だ無い。また、清水一家の大政が、饂飩屋の主になっていたりと歴史とは関わりなく自由に創作している反面、不平士族の反乱で担がれた西郷隆盛の話が出ると、勝海舟の名をちらりと出して、静岡の茶摘みのシーンを入れたりしているので、作家は、日本史にはかなり通暁しているかも知れぬ。勝もまた、不平士族を路頭に迷わせず、彼らの反乱を抑える為に、最も、忠義心に厚い士族に江戸から離れた清水の地で暫く茶を作らせることで、彼らに生活の手段を与え同時に反乱の気を収めることを考えたからである。無論、劇中では、この史実は表立った形では出て来ない。パロディーとして、また、西郷的生き方へのアンチテーゼとして提起されているばかりだ。
     まあ、日本史に詳しく無くとも、落とし所は結構作ってあるし、泣けるシーンもかなり用意されている。人として持ち続けなければならぬ矜恃と時流とのヤジロべエを支える支点として機能しているのが、枝垂れ桜ということで良いのではないだろうか。

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