さらば黄昏 公演情報 さらば黄昏」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    Aチーム観劇。
    過疎村という、小さく狭いコミュニティ。守る駐在さん。
    過去に大騒動を起こした反社なものたちが刑期を終えて帰ってくる。
    プレトークによると、幼少に親しんだ西部劇がベースってこと。
    血のりは結構使われますが、派手な銃撃アクションとかは無いです。
    会話劇がメイン。
    フォーマット的には西部劇をベースに置きながら、現代的、普遍的なテーマを描いている感じは、
    イーストウッドの映画『許されざる者』を思い出したり。
    笑えるシーンも適度にはさみながらも、問われて考える部分ありました。

    ネタバレBOX

    出来の良い2時間サスペンス的な描き方なんだけど、一つだけ外してきてる部分があって。
    主人公が真相に気付いてから、いきなりエピローグになって解決編が無いのです。
    見せない部分を想像するのも演劇だと思うから、僕はアリだと思いましたけど、モヤモヤする人もいるかも。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    〈Ver.B〉

    人口500人程の小さな町、踊田(おどりだ)。駐在所に暮らす定年間近の警察官、中村まこと氏。新たに赴任して来た若手、大久保祥太郎氏。町役場の長塚圭史氏。

    背景は水墨画のような山の稜線が壁やブラインドに跨って描かれているもの。

    MVPは志甫(しほ)まゆ子さん。オープニングから強烈。どんどん話に熱がこもり、いつしか「楽園」の観客にまで話し掛け同意を求める。圧倒的話術で観客は虜に。
    そして中村まこと氏と村岡希美さんのワードがなかなか出て来ない掛け合いトーク。アドリヴのように見えるがきっちり脚本なのだろう。もう芸だな。

    観客の想像力を刺激する構成。阪本順治の『トカレフ』みたい。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    昔観たヴィゴ・モーテンセン主演の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の感じで観ていた。クライマックス、西部劇調の曲が掛かると「やっぱり」と思った。

    ※前半はやたらスローペースで進むので眠気と戦う観客もいた。大物ロックバンドがライブハウス・ツアーをやる感じ?こんな狭い所で俺達が味わえるなんて感謝しろよ、的な?なんて斜に構えていたが駐在所のシーンで作家の本気に気付く。これは狙ってやってるな。(それまでは何かのギャグだと思ってた)。印象的なのが大久保祥太郎氏の連発する「これ映画じゃないですか?今、映画の中にいます?」と辺りをキョロキョロする行動。虚構の中で役割を求められている登場人物の感覚。一体、俺は何の役だ?

    25年前、放火殺人事件を起こし刑務所に入っていた男、犬塚が仮出所したらしい。ヤクザなのか半グレなのか町を牛耳っていた悪党。当時通報した中山祐一朗氏、父母を殺され全身火傷で生き延びた李千鶴さん、情婦でお腹に子供を宿していた村岡希美さん、30手前の巡査だった中村まこと氏は鉈で暴れる犬塚を拳銃で撃った。それが問題になり辞職。暫くした後、踊田を自ら希望して再採用、7年間勤めた。住民の中には陰口を叩く奴もいた。

    中山祐一朗氏の職場に別の町で飲み屋をやっている犬塚の甥が現れる。この町に犬塚と弟とその息子である自分が戻って来ることを匂わせる。その夜、娘(板崎泰帆さん)が自転車で帰宅途中田んぼ道で背後からの車に撥ねられかかる。これは偶然なのか脅しなのか。現場を見に行った巡査の大久保祥太郎氏は暗闇で石をぶつけられて7針縫う。退職して事実婚の李千鶴さんと苫小牧に移住するつもりだった中村まこと氏は一転、町に残ることを決める。誰かがこの町を守らねば。更にまた中山祐一朗氏の娘(板崎泰帆さん)が連絡付かず行方不明。謎の男すやまあきら氏に酒を飲まされ泥酔させられていた。すやまあきら氏は駐在所で大久保氏を挑発。キレた大久保氏は暴力を振るってしまう。それがSNSで拡散され問題になり帰郷して謹慎。大久保氏と婚約中の内藤ゆきさんは犬塚と村岡希美さんの子供であった。大久保氏の実家にその事実を伝える匿名の手紙が。破談になるかもしれない。どんよりした疑心暗鬼と不安に包まれる町。不信感が町を煙らせる。中村まこと氏は住民を集めて町民による防犯パトロール隊の設立を訴える。自分達の町は自分達で守るべきだと。「トイレに行く」と言ってその場を退席する中山祐一朗氏。そのままいなくなる。

    時間がすっ飛び、駐在所。中山祐一朗氏は防犯パトロールをして来た帰り。喪服姿の李千鶴さんは知人の葬儀の為に久方振りに踊田に戻って来たそうだ。苫小牧にて用務員と農作業をする中村まこと氏の近況。駐在所に暮らす大久保祥太郎氏は内藤ゆきさんと結婚して娘が産まれていた。

    全て中山祐一朗氏の狂言じゃないのか?と思って観ていた。犬塚絡みの話は全て中山祐一朗氏発信。内藤ゆきさんに会った時の狼狽ぶりもおかしい。だがずっと怯えてきた男が覚悟を決めて犬塚に会いに行き、直接話を付けたということなのだろう。「この町は俺達が守る、あんた(中村まこと氏)は行ってくれ。」
    李千鶴さんの喪服姿からエピローグが始まるので観客に不安を抱かせるミスリードは流石。

    「言葉の西部劇」として正義を語るまでには至っていない。重要な足りないパーツがある。中村まこと氏の心の闇か?誰にも言えない罪の意識か?人に理解して貰えない孤独感か?それでもやらざるを得ない過去の償いか?西部劇を観客に味わわせる為に必要なパーツ。何の価値もなかった正義が一瞬にして巨大な価値へと燃え上がること。登場人物の心のテーマ曲が観客にまで確かに聴こえること。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    阿佐ヶ谷スパイダース『さらば黄昏』を観劇。

    あらすじ:
    過疎化が進む町では、過去の忌々しい事件を忘れつつ平和に日々を過ごしている。そこに犯罪を犯した男が刑期を終えて戻ってくると噂が流れる。巡査を中心に対策を練ろうとするのだが…。

    感想:
    追い詰められた人たちが無謀な行動に出る展開は、過去作『はたらくおとこ』を思い出さずにはいられないが、それに近い感じかと思えども違う。
    刑期を終えた男が戻ってくるという噂にあたふたする町民たち。
    男は現れず『ゴドーを待ちながら』的な展開だと思わせるが、そうにはならない。追い詰められ、怯える町民たちの未知への恐怖に、小さな町での出来事ながら、今の世界情勢が見えてくる。
    下北沢『楽園』という狭い劇場をあえて選んで、群像劇にしているからか、観客も町民に巻き込まれ、謎の男に不安すら感じてしまい、「この問題の解決法は?」と一緒に考えてしまうほどだ。
    町民と観客の不安はどこへ向かっていくのだろうか?と終わりの見えない流れに、長塚圭史は驚くような手法を提示してくるのだ。
    観客の想像力を徹底的に試す『阿佐ヶ谷スパイダース』
    これだから観るのを止められない。
    傑作である。

このページのQRコードです。

拡大