森ノ宮ニーナのおかなしみ旅行記 公演情報 森ノ宮ニーナのおかなしみ旅行記」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    その都度全く異なる風景を見せる岡崎藝術座(変わらぬのは発語の大部分がモノローグの脚本)、今作は森下スタジオ。会場「ありき」と思わせるのも神里氏の製作の手法に関係していそうだ。今作は集客によってはもっとうんと椅子を並べられるスペースなので、土曜午前の部でも控え目な数では勿体ないが、観る側は(岡崎藝術座なので)特段淋しい感じはしない。内容は(毎度ながら)「それなりに面白い」パフォーマンス。のっけに登場して語り始める矢野昌幸氏は、初見(10年程経つか)からその「普通」な風貌にしては頼りになる役者と思わせたものだが、実力なりの活躍をされているよう。この舞台でもブレないキャラで賑やかしく立ち回る。他の二人の女優は出自を知らず奇妙な取り合わせだが役に合っている。「旅」に絡めて「オーバーツーリズム」~排外主義へと無理矢理な話題の展開も「これが神里氏の言語」と思えてしまうのは、観た回数(慣れ)だろうか。
    海外と日本の狭間の目線で作品を打ち出して来た神里氏が昨今の「排外主義」(と呼んで全く差支えないと思う)をやり過ごす事は考えられず、何らかの昇華を試みた作品であるのには違いないが、これを「本題」と仮に考えると、迂回ぶりは激しく、文脈の繋がりと飛躍の独特さを作りこそ神里流なのだろう。これがスルメの味に感じられもする。

    ネタバレBOX

    バラバラに散らばってる記憶から観劇歴をまとめきれないので調べてみると・・まず思い出すのが震災後に見つけたFTフェスティバルトーキョーのサイトを覗き、何やら面白気な題名(「球体」が何とか言うやつ)に惹かれ(題名以外に何の手掛かりもない)、観劇を試みたが予約完遂せず断念したのが最初だった。
    で、その後「ジミー」が何とか言う作品を赤レンガ倉庫で観て初観劇、(昨今の神里戯曲のような言語過剰とは真逆で)台詞も少なく舞台上にオブジェを配してお茶を濁してる感あり、落胆(今度○○に出る話あるけどどうする?まァ売れてる山縣氏を出して、目を引く丸っこいのを吊るして・・てな作り方を想像してしまった)。
    その後若葉町ウォーフでリベンジ観劇し、過剰言語の岡崎藝術座と遭遇。STスポットで「イスラ!・・」を観て「言葉ばっかの時間」にやや落胆(二作上演の一方「サンボルハ」を観たかったが別のを已む無く観た記憶)。
    そこから「バルパライソ」再演のドイツ文化会館、戯曲賞を獲った作品は、外国人による上演で客席エリアも色んな「腰かけ」が設えられた雑多な不思議な空間だったが、ステージ上の興味深い様相は、会場ありき、かつ俳優ありき。
    狭小のSTスポット「ミオノウミにて」は広い台上を箱庭風に物語の舞台となる土地に見立て、この周りを囲む狭い客席に客がひしめき、これも場所ありきな演劇だがその「効果」にハマり、興味深く観た。
    コロナ期に入り、沖縄、池袋と巡演の中、上演注視の日に当たり急きょ沖縄での上演映像を観ることに。不全感を残して去ったが今回はそれ以来久々のお目見えになった。
    利賀演劇祭に出品したりと演出志向の人だったようで?初期(2000年代)は既存戯曲を上演し、今SPAC劇団員の春日井一平氏、リクウズ主宰の佐々木透氏、武谷武雄氏や内田慈氏、西尾友樹氏の名前もあって小劇場演劇の正統派な場所にいたのかな?と想像を膨らませる。確かに言語過多という特徴に独特な演出が加わる事で独自の世界が醸されている感がある。面白い事を考えて我々を挑発する作品を今後も打ち出して欲しい。

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