第32回手話狂言・初春の会 公演情報 第32回手話狂言・初春の会」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    歩き方
     先ず目を惹いたのが演者の歩き方であった。これは凄い。立ち居振る舞いの基本になっているのであろう。背筋がすっと伸び、動きがスムースで上下動が殆ど無い。裾捌きも見事である。
     聾者が演じるので手話の動きは入るのだが、同時に狂言の科白も流れてくるので健常者もリアルタイムで楽しめるのだが、数百年前に使われていた言葉が、変遷はあるものの、その場で類推でき、解説など不要であったことは、ちょっとした驚きであった。日本の古典がからっきしの自分は、分からないだろうと覚悟していたのである。但し、ここ数年の言葉の乱れは半端ではないので、今の若い人たちに、解説なしに分かるか否かについては、おぼつかないが。笑いの質が素直なので、所作を観たり、雰囲気を掴めれば、それでも楽しめよう。

  • 満足度★★★★

    古典芸能+手話言語
    狂言の基本的な動きはそのまま、演者セリフは手話で表現、その手話に声のセリフをアテレコしての演目。出演者は日本のろう劇団のパイオニア?日本ろう者劇団と三宅狂言会が混合出演。特に難しく見る事なく、笑いに徹した狂言演目。正面から見た方が手話の台詞がスムーズに見やすいが、台詞と動きがピタリと合うアテレコ込みなので話の進行を妨げるような不安はなし。
    古典芸能の喜劇作品の面白さがよくわかる三作だった。
    「髭櫓」の演目で当初は米内山氏が出演予定だったが、体調不良の為、三宅近成師に変更、手話が出来る狂言師による舞台も見応えあった。
    歌舞伎とは違う大胆な柄デザインの衣装の組み合わせも素敵だった。

    狂言は一つの演目上演が約20分前後という事、その為、手話通訳の田中清さん付きで黒柳徹子さんによる40分程の前説からスタート。そちらも流石に話術が達者。

    ネタバレBOX

    言葉使いが粗いですが、あらすじと台詞を現代語にするとこんな感じ?
    「泣尼」
    信心深い田舎者(施主=アド)が親を思いお堂建立、上京してたまたま立ち寄ったお寺の僧侶(住持=シテ)に説法を依頼する。お金に心が揺らぎ引き受けるも説法苦手だし、泣いてくれる人がいたらもっと盛り上がって良いかもー、と報酬の半分をあげる事を条件に泣き役を尼(小アド)に頼む。アドとシテが田舎に戻り、小アドも気づかれないように着いて行き、沢山の聴衆が待ち受ける中にまんまと紛れ込む。時間は進み話が佳境になったのに肝心の尼はなんと居眠りしている。居眠りしている尼さんに困惑するやら起こそうとしたり四苦八苦する僧侶。終った後で尼からお布施金を要求されるが「おめー、寝ちゃって泣いてねーじゃん!」と逃げて終。
    小アドが終始、腰を低くした態勢で動き回る姿に感心。
    「鬼瓦」
    長らく訴訟の為、都に滞在していた大名(シテ)ついに国許に帰れる事に。その御礼に太郎冠者(アド)と一緒に、日頃、信仰している因幡堂の薬師如来にお礼参りに。参拝も済み堂内見物、建造物の見事さに感嘆してたら、屋根のテッペンにある物にふと目が止まる。鬼瓦だと説明を聞き、その顔立ちについ国許の妻の顔を思い出して泣き出してしまう大名。太郎冠者からもう少ししたら会えるじゃないっすかと慰められ、気を取り直し、「泣いて損しちゃった」と、二人で大笑いして帰る事に。
    鬼瓦似の奥さんを思う大名の愛すべき性格と麗しい愛情という事?
    「髭櫓」
    宮中の大嘗会〜天皇が即位後の初めて行われる五穀豊穣の儀式祭〜に大髭でも良いよと認められ、やや有頂天気味の夫(シテ)、妻(アド)を呼んで諸々準備してと注文するが、家計だって苦しいのに何贅沢な注文してくンの!?と切れ気味になりそれがキッカケの夫婦ケンカ勃発。妻を追い出すも、その妻はご近所の奥さん連中を味方につけ、そんな髭なんか剃りなさいよ!と長刀やら槍やら熊手やら太刀やら斧やらの長道具持参で髭抜きに馳せ参じる。その妻に対抗して髭に簡単ミニチュア装備風の櫓を取り付けて臨戦態勢を整える夫。一大決戦は夫に軍配が上がるも逆襲しにくる妻達。妻の一撃で櫓は脆くも破壊、特大サイズの毛抜きで見事に髭を引き抜く事が出来ましたとさ。
    ナンセンスさ炸裂なお話。奇想天外な喜劇で面白かった。
    三宅近成師の手話も滑らかな動きだが、役者が表現する動きとは違って見え、その違いも新鮮だった。

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