満足度★★★★
フランツ・カフカの短編をコラージュした小話
2011年秋に上演され秀逸だった「あなたに会ったことがある」を、同じコンセプトの元、カフカの別の短編を用いて上演。
今回は「断食芸人」「ポセイドン」「ジャッカルとアラビア人」「ある学会報告」「雑種」「橋」「十一人の息子」「判決」「父への手紙」などを取り上げ、コラージュを施して5つの小話にまとめ上げたとのこと。
印象に残ったのは、「ある学会報告」を基にした話です。アフリカで捕獲された一匹のサルが自由の身を得るため、人間の言葉や身振りを覚えてサーカス一団の売れっ子になり、さらにヨーロッパ人の教養を身に付けようと努力を重ねて認められていきます。石井ひとみ演じるサルが、最初のリアリティを感じさせるサルそのものの演技から、段階を踏まえて徐々に人間の特性を「獲得」していく様子がくっきり描かれます。その過程そのものが、人間存在をカフカの視点から鋭く捉えていて面白かったです。