公演情報
「蛍の光、窓のイージス」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/23 (木) 14:00
価格4,500円
10月23日〈木〉14時鑑賞。
卒業式での生徒の答辞。
その中に、政府に対して批判的な内容が…。
修正を迫る教員とそれを拒む生徒。
劇を観るまでは、生徒の側を応援する気持ちでいっぱいでした。
でも最後は穏便な形で解決してよかったです。
学校の職員室が舞台です。
舞台装置がリアルで立派でした。
おおまかな話の流れは以上のような形ですが、それ以外にも、
学校特有のさまざまな物語(テーマ)がちりばめられていました。
管理職と一般教員という、教員内部の確執。
理事に媚びる教員と、そうでない教員。
部活動での教員の役割。
ブラックな教員の労働環境。
脚本もしっかりしていて、飽きさせない内容。
役者さんもお上手で、文句なしの120分でした。
すばらしかったです。
実演鑑賞
満足度★★★★
流石の畑澤聖悟氏、高校教師だっただけに職員室モノは圧倒的リアリティー。(定年になったと聞いたが今も?)。
2019年3月1日、秋田県の私立高校卒業式の朝。卒業生代表の答辞を読む季山采加(あやか)さんの原稿が問題になっている。担任の髙橋美沙さん、学年主任の津田二朗氏の困惑。6年後に高校から300mの距離に位置する陸上自衛隊新屋演習場にイージス・アショアの配備が決定。これはレーダーによる探知で弾道ミサイルを迎撃する防衛システム。北朝鮮からの弾道ミサイル発射が大いなる懸念となっており、政府はアメリカからの購入を決めた。季山采加さんの答辞はそれに不安を抱く内容。髙橋美沙さんはこういう発言が左翼系メディアの格好の餌となり、無用なトラブルに巻き込まれることを危惧。無駄に大人の政治的対立に巻き込まれても碌な事はない。何とか書き直させて無難な内容で終わらせたい。学校の経営を握る理事長がタカ派の与党政権の支持陣営であることも。
秋田の英雄、栗田定之丞(くりださだのじょう)の存在が作品の背景を支える。古来より飛砂(ひさ)害に苦しんできた海沿いの住民。栗田定之丞は独自の植林法・塞向法(さいこうほう)を考案し全長120kmに及ぶ黒松の海岸砂防林を築き上げた。
髙橋美沙さんは東ちづるの宝塚風で華がある。
田中義剛風秋田弁丸出しの教師、白幡大介氏がムードメーカー。峰竜太っぽくもある。
軍事オタクの演劇部顧問、桑原泰氏。
隠れてデモ活動を個人で行なっている早苗翔太郎氏。
長年の勤務で教師の中にも教え子が沢山いる教頭の米山実氏がキーマンに。
政治と教育と国家の進む道、いろんなテーマを巧く組み込んだ脚本。答辞の内容一つで大騒ぎする大人達を戯画化する視点。感心した。後期岡本喜八っぽくもある。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/19 (日) 14:00
座席1階
さすがに現役高校教師の劇作家畑澤聖悟の台本。リアリティーは抜群で、しかも出身地秋田県が物語の舞台。北朝鮮のミサイルを打ち落とすためだとして2017年、政府が秋田と山口に陸上発射の迎撃ミサイルイージス・アショアの配備を発表した。「学びやから見える美しい海岸線の景観や思い出を台無しにしないで」と女子高生が盛り込んだ卒業式の答辞をめぐる物語。生徒と教師による、職員室を舞台にした群像劇だ。
きっかけは、文化座創設者の佐佐木隆の娘、佐々木愛が差し出した一冊の本だったという。秋田の地元紙・秋田魁新報が菊池寛賞を取るほどの渾身の取材記録で、文化座が畑澤に書下ろしを依頼していた時に提案した。「国防のために政府が決めたこと」という意見も含め、地元の人たちがどんな思いでイージス計画を見つめていたか、卒業式当日午前の動きに凝縮している。
文化座は畑澤の「親の顔を見たい」も上演していて、畑澤への期待度は大きい。文化座ファンも含めた期待に、畑澤は多くの社会的課題を盛り込んで説得力のある戯曲に仕上げた。さまざまな理屈付けによる大人の論理で生徒に迫る場面や、教師が自分の意見を述べてその論理から生徒を守ろうとする場面など、教育現場が抱える問題や現状もストレートに伝わってくる。
そもそも迎撃ミサイルなど百発百中ではない。打ち漏らしもあるから、迎撃のための基地が標的になって破壊される危険性も大きい。また、北朝鮮が太平洋を越えてアメリカを狙ったとして、そのミサイルを打ち落とした日本は当然、戦争に加担したとして報復の対象になるだろう。基地は市街地にある。攻撃されれば多くの人が死ぬ可能性があり、こんな計画を打ち出したということは、国は有事に国民を守らないという証明である。そんな大惨事につながる可能性のある武器に何千億とつぎ込み、アメリカの言い値で購入した政府への皮肉もしっかり盛り込まれていた。
そうした「モノ言う演劇」でありながら、教師と生徒による青春ものとしても楽しめる。多くの生徒が高校卒業後に故郷を離れてしまう中で、地元の大人たちはどう生きていくべきなのかも問いかけている。
ちょい役ではあるものの重要な役柄で、今回も高齢の佐々木愛が舞台に上がっている。「ゴッドマザー」と呼ばれる役だが、現実も文化座のゴッドマザーであるようだ。終演後のアフタートークで、演出の西川信廣が舞台裏を明かしていた。彼も言うように、文化座らしい芝居をどう若い役者たちに受け継いでいくか。この作品を各地の学校で公演してほしい。文句なしでお勧めの舞台だ。