公演情報
「マクベスに告げよー森の女たちの名前を」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
くるみざわしん氏が、どストレートで精神医療の闇を描いたすごい舞台。
尋常でない迫力、緊迫感の一方、面白い。とても面白かったです。
マクベスの一部を借りた構成、桟敷童子・大手忍さんの患者ぶり…。演劇的だなあ、とつくづく感心しました。ほかの役者さんからも目を離せませんでした。もう1回観たいと思いましたが完売。
くるみざわ氏の作品はいつもすごいけど、かねて素晴らしい劇団・演出家だと思っていた桟敷童子・東憲司さんはやはりすごい。
それぞれの今後の活動と、またタッグを組まれることを期待しています。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/12 (日) 14:00
座席1階
現役精神科医のくるみざわしんによる渾身の一作。身体拘束、虐待、薬漬け、そして死亡退院(院内で死亡した患者のこと。退院したわけではない)。これらの現実が強烈なリアリティーをもって描かれる。もちろん、このような精神病院ばかりではないとは思う。しかし、昨今の精神病院での不祥事連発の状況を見ると、これが現実なのかと思えてくる。
冒頭に出てくるのは、死亡退院した女性患者3人。医療によって生命を絶たれた怨念が充満する。古くからこの病院を経営する「創業家」の院長は、ベッドを埋めて診療報酬を稼ごうという指示を事務長や現場に露骨に言い放つ。ベッドに縛りつけて自由を奪う「身体拘束」について、院長は「拘束しないで、患者さんが逆に自殺したとか、転倒骨折したとかの方が怖い」「治療の一環で拘束しているわけで。心が痛むなんてない」繰り返す。これらのセリフは、日本精神科病院協会の現職会長山崎学氏が新聞記者の取材に応じて答えた言葉がそのまま引用されている。客席を戦慄させる緊迫した会話劇だ。
演出は、劇団桟敷童子の東憲司。見ていて、桟敷童子の舞台かと錯覚するような音響、演出がなされている。しかも、桟敷童子のエース大手忍が、病院を変えていく患者という重要な役どころで本領を発揮している。院長役も桟敷童子で、原口健太郎。マートルアーツと桟敷童子のコラボだからこそ実現した迫真の舞台であることは間違いない。
院長の言葉で、「法律に基づいて拘束している」と何度も出てくる。精神保健福祉法のことだが、舞台後のアフタートークで、くるみざわはこの法律を廃止すべきと主張した。障害者権利条約の真逆を行くような法律で、患者の尊厳をまったく考慮せず利益追求だけで行われている精神科医療の現実を見せつけられた後では、確かにその通りかなとも思う。だが、身体拘束は精神科病院だけでなく、高齢者の医療現場でも普通に行われている。そのお題目は「患者さんの安全確保」で家族などから承諾書をとって行われている。治療のため、安全のためとはいえ、患者を人間扱いしない拘束は珍しくない。厚労省は拘束ゼロをうたっているが、現実はかけ離れている。診療報酬の問題、人手不足。理由はさまざまあるが、これを仕方がないと放置している社会でいいのかと思う。
精神科病院に勤めるくるみさわが、この日のアフタートークで興味深いことを言っていた。患者との対話が治療となる精神科医療の現場で、患者の診療時間が増えると多くの患者をこなせないから診療報酬が減って経営にダメージとなるが、「僕はそうなって病院がつぶれてもいいと思っている」。病院がつぶれたら患者さんは困るのだが、3分診療では病気を治すことはできないということだ。精神保健福祉法の在り方も含め、当事者の意見・経験をじっくり聞いて精神科医療を抜本的に変えなければ。この舞台から一般市民が学べることは多い。見るべし。
実演鑑賞
満足度★★★★
台本が良くできていて面白い。このテーマにマクベスを絡める着想がなかなかのものだが、原作者の本当の実感なのだろう。桟敷童子の2人の俳優がそれぞれ個性を活かした演技で活躍しているなと思ったら、演出が東憲司氏だったか。
実演鑑賞
満足度★★★★
五月に趣向の『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』を観劇。アフタートークのゲストがくるみざわしん氏で非常に興味深い内容。今作の予告があったので絶対観ようと決めた。その時の直感は間違っていない。凄まじい作品。観逃したら後悔じゃ済まない。大手忍さんが凄すぎて途中からもう怖くなった。人は余りに怖ろしいものを目撃すると興奮が頂点を突き抜けて無感覚になり背中の方から冷えてくる。想像力の範疇を超えてきた演技。自分のキャパシティではとても受け止め切れない。昨年末の桟敷童子、『荒野に咲け』と地続きのキャラ。『荒野に咲け』に戦慄を受けた人は必見。
百年続く由緒ある精神病院、神滝病院。七年前、とある事件で病院を辞めた看護師(岩戸秀年氏)、復職する前夜、夢の中で探し物をしている。三枚の扉の向こう側から格子窓越しにそれを見ている三人の魔女(小林美江さん、三浦伸子〈しんこ〉さん、滝沢花野さん)。岩戸秀年氏が探していたのは学生時代に心に刻まれた一冊の本、「患者を尊敬しなさい。」と書かれている。次に迷い込んで来たのは院長(原口健太郎氏)。子供の頃に遊んでくれた三人の「分裂のお姉さん」を探している。拍子木がカンと音を立て緊迫感を煽る。「きれいはきたない、きたないはきれい。」
神滝病院六号病棟は他の病院が収容に困る患者を引き受ける社会の暗部。「死亡退院」として死なないと外には出られない。精神病院での患者虐待は知的障害者施設での虐待と同一で患者を人間とみなしていないことが根本にある。
そこに十代から百以上の精神病院を転々として来た三十代の患者、坂上(大手忍さん)が現れる。
『マクベス』の三人の魔女の台詞を上手く使って、この世の地獄を邁進する現代のマクベスを描写する。登場人物の誰のどの立場も人として充分理解出来る。いつだって現実と理想は相容れないものだろう。「逆さま逆さま」。
これ、映画化した方がいい。
必見。(全日程、前売りで完売だそうだ)。