公演情報
「穿つ泡(うがつあわ)」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/10 (日) 17:00
昭和初期 子供向け漫画で人気を博した漫画家 田河水泡の物語。
戯曲の力と圧倒的テンポでの演出に幕開きから引き込まれた。素晴らしかった。
義兄が小林秀雄だったと今更知った。
NHKの朝ドラ「あんぱん」をご覧になっている方には特にお勧めだ。
NHKの朝ドラ、いつも見ている訳ではないけど、今回の「あんぱん」は欠かさず見ている。時代も重なっており、やなせたかしは「のらくろ」の愛読者だったそうだ。
「あんぱん」では嵩ではなく、のぶが愛国の鑑として第二次世界大戦へ雪崩れ込む戦時に巻き込まれていったのだけど、「のらくろ」を描いた田河水泡も時代に翻弄された一人と言えるだろう。劇中、小林秀雄と戦争を描くシーンがあったが、流石小林秀雄だ、と言えるのかどうかは知らないのだけど。
そう言った意味で、今、田河水泡を上演する意義は大きい。
田河水泡を演じられた内田健介さんを筆頭に 9人の演者もハイピッチの展開を見事に描き上げていた。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/10 (日) 13:00
座席1階
人気漫画「のらくろ」の作者、田河水泡の一代記。手塚治虫ややなせたかし、長谷川町子など戦後の人気漫画家が作品に夢中になったというエピソードを皮切りに舞台が展開する。
出生直後に母親が死亡し、父親が再婚して叔父夫婦に育てられ赤貧の子ども時代を送ったこと、近所に住んでいた評論家小林秀雄の妹を見初めて結婚した時のエピソードなどが時代を追って丁寧に描かれる。「私はお酒飲みは嫌い」と妻から禁酒を結婚の条件とされたのに、義兄となる小林秀雄と意気投合して痛飲した話など、舞台を見なければ知らないことばかり。とても興味不快。
今のNHK朝ドラはアンパンマンのやなせたかし夫婦の物語だが、戦争が嫌いで軍隊には行きたくなかったという本音は田河水泡も共通する。だが、アンパンマンが自らの頬を食べさせて弱きものの味方をするというヒーローを描いたのに対し、軍隊の中で自由奔放に生きながらも軍隊で出世していくのらくろはまた、趣が違う。戦意高揚に使われたという指摘もある。それぞれの原作者の人生や生き方を対比して考えることができ、今この舞台を見られたことは意義深いと思う。
水泡の妻を演じた紅一点の出演者、中村真知子がよかった。小劇場楽園というひときわ狭い空間を縦横無尽に動き、舞台を引っ張った。ガンガン冷房が効いていた空間で汗だくだったから、その熱量はすごいと思う。
のらくろが描かれた小道具、のれんなど舞台美術はシンプルだがよく練られている。のらくろはキャラクターグッズの元祖とも言われているが、これも小道具の一つになっていた。
小劇場楽園は入ってすぐのところに大きな柱があり、各劇団の演出家たちはこの柱をどう生かすかに頭を悩ませる。今作はこの柱を利用するという発想はなかったようで、左右の客席で演者の様子が見えない「見切れ」がしばし発生していた。ここが惜しい。