火山島 公演情報 火山島」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    相変わらずの演技力に圧巻です。殆ど小道具やセットがないのに魅了される舞台でした。戦争ものでしたが、残された人達の事が描かれていたのもあり、ふと、子ども達にも観て欲しいと感じました。教科書より良い勉強になるのでは。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。2017年にも観劇しているが、その時とは違った観方になった。
    根底に横たわるテーマは揺るがないが、物語の捉え方というか観点の違い、その意味で 改めて描かれている内容の幅広さや奥深さを感じさせる秀作。

    なお、自分の思いから ラストはちょっと…。
    (上演時間1時間30分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に大きさの違う三段の平台、周りは布切れだけ。アトリエ公演と違って生演奏はなし? それでも 音響・音楽や照明の印象付けは見事。

    物語は、駐留施設の誘致予定の火山島に住む三組の家族を通して、戦中戦後の様相を描く。第一話、風車守は 妻との暮らしを懐かしみ、誘致場の妨げになるという理由で 発電用風車が取り壊されることを嘆く。第二話、料理屋の主人は 役人や工事関係者などが来島して儲かることを喜んでいる。その妻は 戦時中に生き延びるため、仲間を守るために、泣き止まない赤ん坊を沼に沈めたことを思い出しては悔やむ。第三に、祖母と少女は 台風の影響で漁船が沈没したニュースを聴き、小船で遠洋に出掛けた、出掛けざるを得ない少女の父の無事を願う。この三話を交錯するように描き、それぞれの悲喜交々を淡々と語る。

    2017年に観た時は、三話の時代や設定の共通点が分からなかった。三話は時間軸が違い、家族系譜のような物語と思っていた。それは時代・世相や環境が変わろうとも、普遍的な問題を提示していると。その結末は、それぞれの主張が同じ方向に向いていくと。

    今作では、或る一夜の物語であることが解る。新たに 風車守の妻がコレラで亡くなった件は、コロナ感染の関係で近親者さえ近づけず火葬されたことを連想する。男は3人の息子を育て上げたが戦争で…。
    次に、敵の攻撃中に赤ん坊が泣き出し といったことは、ガマ(沖縄の自然洞窟)の中でも同じようなことがあり、至る所で悲惨な出来事が繰り返された。
    最後の老女の憂いは環境問題等もあり漁村の生活は厳しい。”砂山が動く(崩壊)”という言葉には、戦争で英霊になった人々の墓が埋没していく危機感の表れ。孫娘は村の活性化のため誘致を言い出す。まさしく軍需活況であり、意識の違いである。

    前回同様、これらの話によって理不尽な社会状況が重層的に浮かび上がり、何時マグマが爆発し人々を暗澹たる気持にさせるか、そんな予兆を思わせる不気味な状況を描く。そこに現代日本の姿が垣間見えてくる。ラスト、孫娘が「今度の戦争はいつ起きるの?」には戦慄する。

    三話から、反戦や環境等への問題提起が浮かび上がるのは容易に解る。相互に緊密さは感じられないが、それぞれ単独話(2人会話劇)としても十分説得力のある内容だ。敢えて関連付けをせず、時間も場所も関係なく問題の広がりと深さを描いているようにも思えた。だからこそ時代を超えた普遍的で、色褪せない物語になっているだと。演技は、抑制された素晴らしいものであるが、キャストによって力量の差が観えたのが惜しい。

    今作のエンディングテーマ「祈り」を合唱するが、それによって劇中の出来事が昇華というか浄化されるような気になる(前向きで 舞台の印象付けとしては効果的だが)。戦後80年、しかし世界を見渡せば、紛争・戦争はなくなっていない。それを忘れないためには、美しいハーモニーはどうなのだろうか?と思ってしまう。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    最後の祈りという歌が良かったです

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     淡々と紡がれる今作のテーマは深い。改めてゆっくり、世の中のこと。自分のことを振り返ってみたい。(追記予定)

    ネタバレBOX

     十日に一度、欠航でなければ内地からの船が港に入る人口千人程の小島には四十年来稼働し電気を起してきた風車が在る。物語は島の崖に立つこの風車が強い風に立ち向かい人々に恩恵を施してきた音、目には見えないほどゆっくり、而も着実に移動し島の若者たちが何度も戦争に獲られ亡くなってきた墓を耳にできる音もなく、心の琴線を響かせて埋め尽くして行く“音”、そして周囲を囲むさざ波の聲が続いてきた。然し心臓音のように当たり前の風車の音は搔き消されることになる。この風車を四十年間護り続けてきた老人が語る島の歴史が今作で描かれる三つの音の内実と共に展開する。
     冒頭に挙げた入港の日の賑わいを想像して欲しい。人々は欠航でなかったことにホッとし、待ち侘びた新鮮な食料や便り、注文していた物が漸く無事に手に入る喜びや幸運に胸をなでおろしひと時の安らぎを覚える。だが、何度となく起こっては村の若者を徴兵し死や身体の欠損を強制する戦争に抗する手立ては無念にも見付からない。今迄の戦争で敗戦の憂き目もみて来た。その時に受けた魂の傷は時の経過も癒すことが出来ない重い軛である。母が愛する嬰児が泣く声を防空壕の皆から咎められ止む無く殺した、その痛みは! 嬰児を水に沈めた時、水中から上がって来た小さなあぶくの数々が、一つ一つ彼女の魂を抉るのである。今も、明日も、永久とは言わぬまでも少なくとも死ぬまでは。付き添う夫もどうしてやることもできない。愛する妻を庇ってやれない苦悩は筆舌に尽くし難い。戦争は若者達にも大きな重い圧を加え、未来は鈍色である。徴兵される男子ばかりではなく、恋こそ命の乙女も無論、この宿命からは逃れられぬ。砂丘は古い兵士の墓から順に覆い尽くしてゆく。だが今後も墓が消えることは無さそうである。それは、この国の為政者が民の命を何とも思っていないからである。

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