遠巻きに見てる 公演情報 遠巻きに見てる」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-10件 / 10件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    日常から望外の展開を生み出す発想とその描写力、それを実現する演出と俳優(と秘密装置)の技術たるや!遠巻きで見るには勿体ないので最前の食い気味で観ました。別日に娘も観劇。我が家の遠巻きに観た率75%、エンゲルに迫るエンゲキ係数!困った顔で困り続け、最後に観客を最も困惑させる西出結さんが素晴らしかったです!

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    前から気になってたけど、なんとなく避けてしまっていたのを後悔した。奇妙なパンチラインを丁寧に「台詞」として重ねていく。これをシュールとは表したくない。
    そこばかり注目されるが、一番大事なドラマ性も良い。マラソンという日常的なものが巨大な集じん機と化す。その彼岸に彼女は何を見たのだろう。
    舞台美術は傾斜舞台。最近流行りで無意味に採用するところもあるが、今作では絶妙な遠近感を演出し、遠い向こうに続く消失点が小さくて大きい「謎」になった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    前作が非常に印象的で強烈だった分、
    今回はやや静かな余韻を感じる作品だったように思います。

    良い意味で落ち着いたトーンとも言えますが、
    個人的にはもう一波乱ある展開も見てみたかった、という欲が出てしまいました。
    とはいえ、過去作とはまた違ったアプローチで魅せてくれるのは、
    作り手の挑戦や幅の広さを感じさせます。

    そう思うと、物足りなさというよりも、
    期待値の高さゆえの感想だったのかもしれません。
    次回作ではまた新たな驚きを見せてくれると今から楽しみにしています。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「いくつもの不条理に翻弄される人々」

     登場人物が何気ない会話を重ねるなかで日常に潜む不条理をあぶり出す秀作である。

    ネタバレBOX

     踏切下の急な坂道の麓でバイト終わりのユウコ(西出結)と小林(永井若葉)が談笑していると、坂の向こうからランニング終わりの手嶋(奥田洋平)が突進してきて口論となる。声を荒らげ責め立てる手嶋に気圧された彼女たちは、最近市民ランナーが公道を我が物顔で走っていることを非難する。しかし次第にユウコといい仲の溝部(重岡漠)や、はては小林までもが手嶋やランニング仲間の高田(岩本えり)と一緒に走るようになってしまう。予想もしなかった変化にユウコはただたじろぐばかりだ。

     数日後、いつものように手嶋がランニング中に踏切の向こう側に立つと、そこから急に並行世界へと消えてゆきかけてしまう事件が起こる。そしてユウコが友人のアケミ(安藤奎)とともに踏切の向こう側を調査していると、アケミが並行世界へ消えてしまうのだった。アケミを助け出せなかった後悔からユウコまでランニングをはじめるのだが、そこで彼女は小林が走り出した恐ろしい真意を知ることになる。

     本作は何気ない会話を重ねることで手嶋に象徴されるランナーの身勝手な論理や、横暴な人物に仲間をとられていく様、果ては平行世界に飲み込まれていく人間たちなどさまざまな不条理を重層的に、おかしみを交えて描いていく。小林が手嶋を殺そうとして市民ランナーしか使わない自動販売機の水に毒を仕込むものの、誤ってその水を飲んでしまった渡部が死んでしまうといった展開も周到に計算されている。この人間模様の示唆するところは観客によってさまざまであろう。数日間の話とはいえ暗転が多いのにはやや辟易したし、もう少し長い尺で観たいとは思ったものの、味読がいのある小品を愉しんだ。
  • 実演鑑賞

    岸田戯曲賞の受賞も良い追い風となり、満員の客席で観る劇団アンパサンドの新作公演。会場の熱気もあり、良い環境で上演され、良い環境で観劇できたと思います。ややシュール系とも受け取れる笑いを含んだ作風なので、客席の反応は何よりの支援になるでしょう。

    ネタバレBOX

    上演時間は約70分ほど。舞台セットの中央に坂道があり、ランニング愛好者たちを中心とした物語。出演俳優たちは皆さん良い存在感を放っていました。中盤から「並行世界」という概念が登場し、現在地と平行世界の境目・繋がりがターニングポイントになります。

    安藤さんの作風は割と一貫していて、そこに創作者の強いこだわり、あるいは直感の鋭さを感じます。ある意味で「ここではないどこか」への羨望や、現実への虚無があるのかも(あくまで僕の推測ですが)。かなり昔に聞いた話ですが、シュールコント系を手掛ける作家が「劇の終わり方が最も悩む」と語っていたことを思い出しました。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/04/23 (水) 14:00

    西出 結さんの演技/表情が、えも言われなかった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    三鷹市芸文星のホールと言うと今は名物「城山羊の会」の小屋のイメージが強くあり、リアルな飾り込み美術と奥行き、これを可能にする空間(上も高くて広いので声が吸われる面はあるが)として上質の劇場ではないかと近頃思い始めている。
    その城山羊と見紛う美術が、出現していた。屋外。低く落ちた水路の上を渡した短い橋と、ガードレール、電柱を支えるワイヤーの黄色いカバー、車の進入を阻むポール、自販機。橋の向こうは森があり谷底へ下る道が続いている風である。リアルなセットの中でナンセンス、過剰、意識の落差、発想の突飛さ、人間の寄る辺無さ、無法な空気の中に芽生える道義心といった諸々が生起する。アンパサンド最大の特徴である「阿鼻叫喚」へ誘う予期しない設定は、今回もあるが、現象と「絶叫」のリフレイン的なホラーな展開は退潮して、不条理系の会話劇の面が広がっている。城山羊の会を思い出したのはそのために違いないが、城山羊の意地悪な笑いにまでは至らず、絶叫は抑えられており、微妙な高さをふらふらと飛行し、軟着陸した印象。
    安藤奎のホラーな世界観が健在であったので、次に何を仕込んで来るのか楽しみにまた観に出かけてしまうんだろうな、と思う。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    (笑えた度)3(今感)3(完成度)5

    劇団初見。
    気負ったところが全然ない。自然体の不条理劇。
    笑おうと身構えている人たちから見たら退屈そのものであるかもしれない。
    しかしどうだろう、細部は圧倒的に豊かだ。しかも、狙いは別にある(たぶん)。
    スノッブに寄らず、普通世界の日常をベースに構築。レトロな舞台美術が最高。
    ミニマムで、箱庭の庭園のような世界。

    色々、力が入りすぎていた部分を削ぎおとしたのだろう。
    ガツンと美味い関東風醤油味は食べ飽きたので、今回は繊細な出汁で楽しむ京料理。
    ドラマとははっきり決別した上でのこの路線、作り方を間違うと下手したら何も残らなくなる。
    そんなエッジを攻めた佳作。エッジの向こう側に落ちずに、しっかりと出汁の味が効いている。

    ネタバレBOX

    異世界の扉がロールスクリーンで、その上昇、下降のスピードが
    絶妙にゆるく、小気味よい。最初に下降した瞬間がプチ劇的で、多分これだけ
    を狙っていたとすれば、相当の手練れ。効いている。
    劇的をミニマムにして、それを演劇のように見える一連のものの中に隠蔽しておく。
    テクストで賞を獲った人が考えたアンチテクスト。
    不条理そのもので「劇」ですらないところを目指している。コンテンポラリーアート。
    うーん。やられた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    劇団アンパサンド『遠巻きに見てる』を観劇。

    一昨年、三鷹市主催の期待の若手劇団シリーズに登場したと思ったら、あっという間に岸田戯曲賞を取ってしまい、今やチケットが取りづらい劇団になってしまったようだ。
    因みに私の一昨年のベストワン劇団だったのは言うまでもない。

    あらすじ:
    小林さんとユウコは仕事帰りの道すがら、マラソンランナーに道を邪魔したといちゃもんをつけられる。歩行者優先なのだが、マラソンランナーが勝手に私用道路にしてしまっているのだ。
    あまりの理不尽に頭にきた小林さんとユウコだが、その道を逆に走ると異次元の世界に行けることを発見する。
    そこでユウコは彼らをその世界に追いやってしまおうと考え、小林さんはトリカブトでマラソンランナーの水に毒を盛るという作戦に出るのだが、果たしてどうなるのだろうか…?

    感想:
    前々作もそうだったか、身近な出来事が一瞬にして変わってしまう展開はシュールとも取れなくないが、ドリフターズ的なドタバタ調と生の舞台だからこそ出来る手法をフル活用し、虜にさせてくれる。勿論、演出と俳優陣の芝居があってこそ成立するのが最大の特徴だ。
    あらすじだけを読んでも明らかに観たくなるが、どうやら期待の新作は不出来だった。
    劇作家が岸田戯曲賞を取る前後作は、他者を寄せ付けないほどの傑作を作るのに、今作の消化不良は一体何なのだろう? 前々作の期待値が高かったからか?
    導入部から期待を裏切らない展開と見事なキャスティング(永井若葉、西出結、奥田洋平、岩本えり、重岡漠)には笑わされ、これからどうなっていくのだ?という期待が高まった瞬間に幕が閉じてしまうのだ。何とも言い難い虚しさを感じるオチは満足だが、この終わり方をするなら、もうひと山欲しかったなぁ〜と思った観客は沢山いただろう。いやそれとも気分が高揚した時に閉じてしまうのは劇作家の意図なのだろうか?そのお陰で観劇後は未だに引きずっているのは間違いない。観客を遠巻きに見て、微笑んでいるのは劇作家なのだろうか?
    全ては謎だが…、次回作も必ず観ようと思う劇団なのである。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白くて驚いた。松本人志とかのセンス系の笑い。昔、中崎タツヤの短編でサラリーマンのおっさんが帰宅途中、UFOの墜落に遭遇してしまうネタがあった。脱出してきた宇宙人が必死に助けを求める。おっさんは「いや、自分そういうんじゃないんで。」と手で制して去っていく。こういう笑いが大好きで発想の切り口に感心する。今作も着眼点と向かう場所が秀逸。これは売れる。

    舞台は急な坂の降り口、自販機が置いてある。話しながら歩いている会社帰りのOL二人。永遠の主人公、西出結さんと、誰にも内面は掴ませない永井若葉さん。そこにダッシュで降りて来たランナー、奥田洋平氏が邪魔だとばかりぶつかって来て逆ギレ。気の違ったような猛烈なキレ方。この冒頭部分だけでメチャクチャ面白い空気が充満。奥田洋平氏はリアル、町中に普通にいる男だ。キレ方や言葉の語尾が最高。

    重岡漠(ひろし)氏は生真面目にズレている男を。
    岩本えりさんは大久保佳代子系の無駄なエロティシズムを漂わせる。
    作・演出の安藤奎さんも重要な役で出演。

    ランニングに嵌った連中にとってこの坂は魅力的。だが通行人からすれば迷惑。
    段々皆何を考えているのか判らなくなる。もしかしたら自分の方がおかしいのか?

    超満員の客席だが客層に広がりがある。シュールなコントを求める若い連中だけでなく、いろんな視点から支持されている。西出結さんのキャラが中心に在る限り安泰。彼女の立つ視点は時代を越えたもの。数千年前も数千年後も揺るがない。
    是非観に行って頂きたい。

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