タニンノカオ~人命救助法2012 公演情報 タニンノカオ~人命救助法2012」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★

    初見。
    安部公房作品で興味深い演目だったので観ました。
    説明文の通りの内容でしたが、コメディ要素のある「人命救助法」と、真逆のシリアスさを持つ「タニンノカオ」
    両作品ともそれぞれの違いが明確で面白かった。

    ネタバレBOX

    個人的には「人命救助法」のブラックユーモアな結末の方が好みかな。
    「タニンノカオ」の事故による悲劇、孤独な生き方、愛する人に去られていく男の人生が何とも物悲しい。シェイクスピア劇の十二夜みたいな鏡の使い方は眼を惹いた。
    不条理というものの、ちゃんとしたストーリー性を感じた舞台でした。
  • 満足度★★★★

    スキャンダル!
    人間の“欲望の行き着く先”を描いた二つの作品は、不条理というより
    スキャンダラスな新聞の三面記事のよう。
    コミカルとシリアス、全くテイストの違う2作品で1時間45分とコンパクトながら
    ストーリーの面白さと演出の違いがとても面白かった。

    ネタバレBOX

    「人命救助法」
    溺れた人を助ければ、表彰され名誉を得てその結果金になる・・・(マジっすか?)
    だから4人で協力して“やらせ”の人命救助をしよう!という話。
    冒頭のコーラスが楽しい。
    ♪わら、わら、わーら♪
    と藁をも掴む輩を揶揄する歌詞で結構上手に歌うもんだからますます可笑しい。
    銀行の融資やら、校長への昇進やら様々な思惑を抱いて腹黒い4人が結託する。
    ところが案の定裏切り者が出て水の中で足の引っ張り合い。
    このスローモーションの格闘がとても面白かった。
    ブラックなそれもあっけないブラックな結末で、
    掴む藁を間違えるとこういうことになるんだと実感。

    薄暗い舞台上で背中を向けて着替える役者を見せながら次の作品に入っていく・・・
    しかもとてもスマートに行われていて感心した。
    2つの作品が関連性を持っていること、
    そして同じ役者がここからスイッチを切り替えていくことが伝わって面白い。

    「タニンノカオ」
    施設の爆発事故で顔を失った男。
    欠損した人体のパーツを本物そっくりに作る医師が彼に新しい仮面を与える。
    見た目と機能を補えば、人工パーツによって元の生活を取り戻すことができるのか、
    それはパーツが「顔」でも同じなのかという
    東大医学部卒の安部公房らしいこだわりが感じられる。
    首から上をすっかり白い包帯で覆うという姿は、
    他のどの部分の怪我よりも非日常的で、もはや普通の人生とは思えない悲劇が漂う。

    周囲や妻と、それまでのような人間関係を築けなくなった男は
    全く新しい「顔」を得ることで自分の存在を取り戻そうとする。
    「他人」になりすました男は、外で出会った妻を誘惑して交際を始める。
    だがあっさり自分の誘いに乗った妻に対する不信感に悩み
    ついに自分が夫であることを告白する。
    だが実は、妻は「他人」が夫であることに気づいていた・・・。

    冒頭、包帯男の声のトーンがちょっと不自然に聞こえたのは
    包帯のせいでくぐもっていたのか、それとも
    1本目と違うキャラであることを強調しているのか理由は定かでない。
    自宅では相変わらず包帯の「夫」、外では新しい仮面で「他人」と
    2人の役者がひとりを演じる、切り替えの演出が面白い。
    自分を取り戻そうとしてやったことなのに、取り戻すどころか
    さらに失うことになった男の混乱と失望が浮き彫りになる。

    「顔」は単なる身体の一部分ではなく、
    取り替えの効かない「自己」そのものなのだと改めて感じる。
    同時に、妻ばかりか大家の知恵遅れの娘にも正体がバレていたという事実に
    「顔」が変わっても「自己」の本質は変わらないのだとも言える。
    彼は一体何のために新しい顔を手に入れようとしたのか?

    個人的には2本目の「タニンノカオ」のストーリーと演出が好み。
    人間の喪失感と変身願望が、今の時代を感じさせてとても面白かった。
    約50年も前の作品のテーマに、改めて普遍性を感じた。
  • 満足度★★★★

    安部公房原作の2作品を短編仕立てに
    独自の演出で、ストーリーはうまく伝わり、2本立てで1時間45分と、短編としての良さがあり、肩の凝らない作品だった。
    それは、いい意味でもあり、悪い意味でもあったかもしれない。

    ネタバレBOX

    『人命救助法』
    意表を突くオープニングが楽しい。マッチの歌の替え歌(?)のような楽曲を全員で歌う(サビの部分に聞き覚えがあったので)。

    カリカチュアライズされた登場人物たちが演じる、少しブラックなユーモアが効いた作品。
    舞台を縦横左右前後とうまく使い、独特な演出が面白い。

    オープニングの曲(リズム)のイメージを中盤でも使ったりするのだが(親子の家のシーンで)、それだったら全編このリズムに乗せて、テンポ良くポンポンと進ませ、一気に突っ走ったほうが、さらにユーモア感が増したのでは、と思った。

    エンディングまで含めて「つかみはOK」な1本だったと言っていい。


    『タニンノカオ』
    1作目がユーモアな作品だったが、一転して、しっとりとした雰囲気を醸し出そうとした作品。

    1作目からの切り替えを、舞台上での着替えにして行うというのは(この作品での装置となる鏡の使い方がうまい!)、イッセー尾形等を挙げるまでもなく、よく使われている手法ではあるが、ヘンな間にならず、後ろ姿できれいに配置して見せていたのは、うまいと思った。

    内容的には、『他人の顔』のあらすじを見ているようで、少し深みの足りなさが気になった。
    主人公の内面的な苦悩と、妻との関係で彼の中での気づきがポイントなのだが、もとの長編をこれぐらいの短編として上演するのであれば、ポイントの絞り方はもう少し何かあったんじゃないかと思ってしまう。
    例えば、鏡という装置があるのだから、それをうまく使うというか、なんかそんなことで。
    台詞の残し方とか、なかなかよかっただけに少し残念。

    こちらの演出も、「見せる」工夫が随所にあり、さらに中ダレしそうなところに、映画版と同じように、しかも映画と同じ歌を入れるといったあたりも、なかなかだな、と思った(歌の雰囲気もとてもよかった。役の切り替えも含めて)。
    そう言えば、映画版だとヨーヨーの娘は、確か市原悦子だったなあ、とか思い出したり。



    全体的には、原作があるのだから、ストーリー的には申し分ないし、ストーリーの伝え方もいいし、演出もなかなかだと思った。短編だからこれぐらいの軽さでも十分かもしれない。
    しかし、できれは、もっと強烈に、と言わないまでも、もうぐいぐい少し惹き付けるポイントがあってもいいのではないかと思う。これだけのことができるのだから。

    また、登場人物たちの多くが、いかにも「キャラ作りました」という感じが否めない。特に男性陣。
    もちろん、1本目に関しては、カリカチュアライズされた登場人物たちなのだから、うんと濃いキャラを作り込む分には問題ないのだが、2本目でそれを払拭するために、無理に新しいキャラを塗ってきてしまった、という印象が少し鼻についた。

    ただ、2本目で妻を演じた方(配役名がわからないので役者名は不明)は、1本目との切り替えも、また2本目での自然さも印象に残り、好演。

    全体的には、それなりに面白かったので、★は3.5ぐらいなのだが、開演前の諸注意を、15分前、5分前と2回行ったり(これはとてもいいと思う)、受付の好印象を加味して4となった。
  • 満足度★★★★

    おお~、こういうのが
    不条理劇か~と珍しく感じながら観劇しました。もっとこ難しいものかと想像していましたが、分かりやすくて、とりあえずほっとした。コミカル×シリアスの二作品の組み合わせで飽きさせない。相変わらず楽曲のセンスは抜群。よくはまっていた。鏡の使い方などもいかにも不条理劇らしくて面白かったです。
    ただ、狭い舞台のせいもあったと思うけれど、この劇団特有の、シンボリックな高い芸術性があまり感じられなかったのが残念。「タニンノカオ」など芸術的な演出にぴったりだったと思うけれど・・・・。

    ネタバレBOX

    「タニンノカオ」で役者さんの入れ替わりがはっきりとわかってしまうのはなんだかな~と思った。もちろん二人でやっているのはわかっているのだけれど、
    なんとなく残念感が。こんな些細なことでも舞台だと緊張感が失せる。短い劇なので、観客はついつい完璧を予想してしまいます。
  • 満足度★★★★★

    不条理劇
    どっちも面白かったが、原作ともに好みはタニンノカオ。演出も絶妙でかつ役者の演技力にも大絶賛でした。

  • 満足度★★★★

    良かった。
    2つの作品が全く異なる演出で面白かった。
    役者さんもまるで全員入れ替わったと思うくらい別人で、レベルの高さを感じた。
    原作未読だが十分に楽しめた。

  • 満足度★★★★

    二作品上演
     今回は、安部公房のタイプの異なる2作の上演である。「タニンノカオ」は原作での表記は「他人の顔」であるが、メジャーな作品なので誰でも読んでいよう。然し、「人命救助法」は比較的初期の作品でもあり、公房ファンででもなければ知らない方も多いのではあるまいか。1本目が、後者であった。あらすじは、ネタバレで。

    ネタバレBOX

     名誉欲に駆られた教頭が生徒の父親と水難救助を計画するが、これは、やらせである。而も、生徒の父は、自らの利害を大きくする為に、この計画を取引先や発注元にも持ってゆく。名誉と富に踊らされた人間達を巡るコメディーだが、やらせそのものは、日本国中で今も散々行われているのを見る時、この国の好い加減が見えてくる。

     「他人の顔」を”タニンノカオ”と表記することには、無論、構成・演出を担当した久次米 健太郎の狙いが込められていよう。自分の印象では、原作よりも更に距離感を取らざるを得なくなった現代の我々の視点を組み込んでいるように思われる。そのことで、よりシャープに、現在我々が置かれているナーバスな状態を反映させたのであろう。更に、白痴の少女ばかりではなく、妻にも偽装の正体を見抜かれていた男は、その事実に気付くことすらなかった。妻に去ってゆかれる主人公の哀しさは、痛切な痛みすら曖昧な孤独を映して惨めそのものだ。

     両作品を通して、現代日本を2つの角度から照らし出した、この劇団の意気と、その批評性を評価する。
     

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