春狂言2012 公演情報 春狂言2012」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    春狂言らしく
    国立能楽堂の茂山関係の狂言会で、こんなに客席が空いていたのは初めての経験で驚きました。

    それだけ、伝統芸能の環境も厳しくなってきたということでしょうか。

    演目が始まるまでの前説に、茂山元彦さんが登場。

    彼はNHK朝ドラの「ちりとてちん」で落語家の役をやったが、上手すぎてNGが出たというほどで、

    本職顔負けの話術。落語の枕を聴いているようだった。

    一門の狂言師の近況を笑い話に仕立てて話は確かに面白いが、「演目はパンフレットを読めばおわかりかと」とだけ。

    これが山本家だと、東次郎さんが演目について、いろいろ興味深い解説をしてくださる。

    初めて狂言会に来る人も皆無ではない。

    狂言師の名前をまったく知らない人に、家族のおちゃらけ話をされてもチンプンカンプンだろう。

    せめて、おちゃらけは3分の1にとどめ、演目についてきちんとした話をすべきだと私は思う、

    茂山家の公演数の多さはダントツで、稽古時間の不足や将来の若手の芸を心配する声もある。

    いつか、いまのやりかたに限界が来るのではと、私も心配している。

    演目の構成は春らしくほのぼのした味わいの狂言が並んだ。

    ネタバレBOX

    「鶏聟」

    聟狂言である。婿が舅の家に婿入りの挨拶に来るまで初対面という、室町時代特有の風習が題材。

    友人に嘘の作法を教えられ、闘鶏の物真似をする婿に、婿がかつがれたと知りつつも恥をかかせまいと合わせる舅。

    千五郎、茂親子のおおどかな芸が心地よい。

    日本人の本来持つ相手への思いやりが出た狂言で、山本東次郎さんは、狂言の魅力はそこにあるといつも話されている。


    「地蔵舞」

    高札のお触れが出て旅人に宿を貸さない男に、傘を預けてとんちをきかせ、打ち解ける旅の僧。

    「地蔵舞」の僧の役の山本東次郎さんは絶品と言われている。

    宿主は茂山あきらさんが務め、あきらさんは東次郎さんの親友だった故・千之丞さんの子息。

    同じ大蔵流でも、茂山家と山本家は芸風の違いから共演が難しく、同じ舞台に立つことは稀有だ。

    千之丞さんの供養だと思って客演しているのだと思う。

    声を高く張り明るい芸風のあきらさんと、神妙にきっちり演じる東次郎さんの演技は対照的で、演じ手は呼吸を合わせるのが難しいかもしれない。

    両家の芸風の違いを知る好機会でもある。


    「首引」


    鬼のお姫様の喰い初めに引き出された鎮西所縁の若い美男と鬼たちの力比べ。

    姫鬼(丸石やすし)の愛らしさや、アクロバティックな親鬼(千三郎)の跳躍が目を引く。

    鬼の眷属が、ショッカーのように「ヒョイ、ヒョイ」と声をあげ跳躍しながら一列に出てくるなど楽しい演目だ。

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