コウセイネン 公演情報 コウセイネン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/11/15 (金) 14:00

    座席1階

    小松台東の松本哲也は、「デンギョー」など心に刺さる会話劇で客席のハートをつかむ劇作家という印象だ。今回は演劇集団円とのコラボということでどのような作品となるのか。期待をして劇場に向かった。

    主人公は、刑事事件を起こして仮釈放で出てきた男性。一見、事件とはほど遠いおとなしいそうな印象なのだが、酒を飲んだ上での出来事だったらしい。保護司に頼まれ、この男性を雇った電気工事会社の社長も最初はおっかなびっくりという感じもあったが、男性は真面目に働き、会社の仲間に溶け込もうとする。
    だが、仮釈放という身の上に、周囲はどう接してよいのか悩む。職場の仲間で飲みに行ったスナックで、男性は酒に口を付けようとしない。ちょっとやんちゃふうの兄ちゃんはおもしろくないようで、ズケズケと男性の起こした事件の中身などに突っ込んでくる。顔見知りばかりの小さな町、という設定であることもあって、あまり触れられたくないことに突っ込まれる無遠慮さとか、反対に腫れ物に触るような周囲の接し方とか、男性には居心地がよくなさそうだ。

    犯罪を起こした人に対して持つ怖いという感情とか、「ろくな奴じゃない」という決めつけとか。こうした空気がいわゆる更生の障害になっているのが日本社会だ。出所して社会に溶け込めず、孤立し、再び犯罪に手を染めてしまう人は少なくない。明らかに障害は社会の側にあると言える。
    一方、この戯曲では、男性の起こした事件とは関係ないが、別の事件の被害者を登場させている。社会が「更生への障害」をまとっている半面で、事件の被害者も同じ社会の構成員として生きている。社会の側に問題があるという視点で見ていると、被害者がこの男性にぶつける言葉や感情をどう受け止めていいのか、戸惑ってしまう。こうした点をしっかり押さえてあるのはさすがだと思った。

    会話劇としては「デンギョー」の方が切れ味があってよかった。先日、殺害されるという事件が起きて注目された、保護司の苦悩がもう少し語られてもよかったと思う。しかも舞台に登場する保護司は若い女性というレアな設定だ。そこまで求めるのは手を広げすぎだろうか。
    でも、仮釈放や保護司という通常、演劇ではあまり取り上げられないテーマに真正面から取り組んだ意欲作であることには違いない。

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