実演鑑賞
満足度★★★★
2作続けて観ると、両作品の性質が対照的と感じられ興味深かった。『場所と思い出』は長いコントのようだが、最後のシーンだけに出てくる登場人物の、捻ったわけではないのに意味深な言葉が印象に残る。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/09 (月) 14:00
座席1階
私にとってPカンパニーの別役シリーズを見ないという選択肢はない。今日はもう一本の「にしむくさむらい」を見た。これもかなりシュールで、深刻な社会問題を皮肉たっぷりに切り取った秀作だと思う。
舞台設定はやはり、裸電球付きの電柱に木製ベンチ。入ってきたのは小型のリヤカーを引いた女性だ。電柱脇にリヤカーを止めると、中から布団などを取りだし、重そうな石のようなものを電柱をてこにした縄にくくりつけた。ホームレスがこの布団で寝たら、縄を開放して石を落下させる(そうして殺す)のだという。通りがかった男性にその作業を手伝わせる場面からスタートする。
この女性は、夫と共に家を追い出されて住むところがないらしい。ただ、通りがかったこの男性も、妻と乳飲み子がいるのに家賃滞納の問題を抱えていることが分かる。この2組の夫婦によって展開される会話が、本作の不条理劇の核心である。
本人たちも家を追い出されようとしているというのに、その夫婦がホームレスを殺す仕掛けを作っているという不条理。ホームレスは忌み嫌われるから世の中にいなくてもいいという発想であるとすれば、自分たちも抹殺されるべき存在ということになる。
現在の小劇場を席巻している比較的若手の小劇団の人たちが書く会話劇には一歩譲るとしても、会話そのもので笑わせる要素がそこかしこにある。次はどのような展開になるのか、ドキドキする。80分の上演時間は非常に濃厚だ。
ラストシーンは、この演劇を象徴するような究極的にシュールな場面。これが世の中なのだろうか。思索の糸が絡まってくると、もう別役ワールドにはまっている。これが別役作品を見ないわけにはいかない理由なのかも。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/06 (金) 15:00
座席1階
「場所と思い出」を拝見。非常に分かりやすい、しかもよく笑える不条理劇だった。これはおもしろい。
開幕前、舞台は幕が引いてあって見えない。幕が開くと古びたバス停に木のベンチ、そして裸電球付きの電柱。いかにも別役劇という感じがして、シンプルな舞台装置に気持ちが高まる(笑)
ここに、スーツ姿の男が大きな旅行かばんとコウモリ傘を手に登場する。続いて、近所の主婦という感じの女性が買い物カートを引いて登場する。「バスを待っているのですか」という普通の会話から、「ここで何をしていると聞かれたら、バスを待っていると答えるのですよ」といつもの別役劇の始まりだ。
面白くなるのは、2人目の主婦という感じの女性が登場してからだ。最初の女性の身の上話(なぜか)が、いつの間にか2人目の女性の話にすり替わってしまう。既にこのあたりから、男性は完全にペースを奪われる。さらに、2人(男女)が登場するが、男性がせっかく自分のいうことを聞いてくれるかと思ったその絶妙のタイミングで、新たな男女が突っ込みを入れて常識をかき乱していく。話はあちこちに飛ぶのだが、男性にとっていかにも情けない、どうしようもないと泣くしかないというラストシーンに向かって盛り上がっていく。
分かりやすいのは、不条理の被害者がこの正直者のセールスマン男性一人であり、残りは掻き乱し役という設定だ。ただバスに乗りたいだけなのに、男性には次々に悲劇が襲いかかる。正直者がばかを見る? 適当に相づちを打っていた報い? それにしてもいかにも不条理である。人生とはそういうものなのか。草葉の別役さんが笑っているような気がする。
Pカンパニーの別役シリーズは本当に面白い。今作は1時間半くらいのコンパクトな舞台だから、仕事の合間にちょっと見てみるという楽しみ方もできる。