嗤う伊右衛門 2024 公演情報 嗤う伊右衛門 2024」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白かったです!
    顔の半分がただれた女のチラシと伊右衛門ときたら、やはり「四谷怪談」を思い浮かべるし、概ねそういうお話ではありましたが登場人物の設定などは違っていたかと。
    最初はなんとも胡散臭いと思って見ていたいわば脇役の登場人物が、だんだん可愛らしく?見えてくるのが自分としても不思議でしたが、演出の妙でしょうか。
    地の文そのままらしい語りとセリフで紡がれ、最小限の舞台美術と、照明、効果音で作られた世界に没入してしまいました。しかし、それにしても・・・
    (ネタバレ追記しました)

    ネタバレBOX

    伊右衛門とお岩の愛は純愛だったかもしれませんが、周りの人物たちの歪んだ愛が悲劇を生んでいるとしか思えませんでした。
    原作も読んでみようかと思いましたし、読んだらきっと脳内では今日の登場人物たちがこれでもかと活躍してくれそうですが、胸糞悪い奴らが多くて読む気が失せてしまったということは京極先生にはご内密に。

    以下追記
    お岩さんは気丈で潔くて愛情深くてかっこいいです。喜兵衛に騙されて伊右衛門のためにときっぱり身を引くところにもそれが現れていると思いますし、伊右衛門もそんなお岩に惹かれたのかもしれません。しかしお岩さん、もっと素直になろうよー。もっとちゃんと話もしようよ!日頃は顔のアザも気にしない風なのに、やはり伊右衛門を前にするとそれが引目になってのツンデレなのかと思うし、伊右衛門はそんな天邪鬼なところも可愛いと思ったのかもしれません。伊右衛門は自分の子でもない赤ん坊も慈しんで、本当に優しい人だ。そんな人が簡単に自分を裏切るとか思わないで、喜兵衛の言葉を鵜呑みにしないでちゃんと本人に確かめようよ。第一、伊右衛門に赤坂に女を囲うお金なんてあるはずないとは思わなかったのかなあ。
    それでも長屋に移り住んで、自分で稼いで暮らすお岩は色々開放された感じで楽しそうでもあったのですが、その後真実を知ることとなりあの凄まじい悲劇へと突入してしまうのでした。あの屋敷を譲られるらしい与茂七も、あんな光景を目の当たりにして困惑しただろうと思いましたが、あまりに深くて悲しい2人の純愛?の結末に打たれました。
    思い切り感情移入してしまった3時間弱。充実した時間を過ごしました。
    上演時間が長いと思っていたのでしたが、気になりませんでした。観に行って良かったです。
    伊右衛門の来し方、なんで蚊帳の中の人になってしまったのかが気になりました。本編で語られているのに私が気づけなかったのでしょうか。気になるので、原作を読んでみたいとも思ったのでしたが・・・以下略。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    絵画では注目させるべき人物像だけを鑑賞者に一点集中させるテクニック、そんなテクニックがあるという情報をたまたま仕入れたばかりでしたが・・・生きた人物・人生が鮮明に浮かび上がり、人物そのものを存分に堪能できる演劇テクニックがあるとすれば、まさに本公演がそれではなかったかと
    言うはやすく行うは難し、これほど類いまれなスキルを持った劇団さんを自分は他に知らない

    閃光、雨、蠢く人の姿・・・何故にそんな態度を・・・どうしてそんなひどい事を・・・何度鳥肌が立ったか分からない
    それは人の心に蛇を見たせいか、鬼を見たせいか、底知れぬ哀しみか、それとも悦びだったのか
    一筋縄ではいかない人の業がとにかくエグい、エグすぎる
    お岩さんの幸福観とは何だったのか、まずはお岩さんから順繰りに登場人物達の生き様に思いを巡らせていきたい
    そうでもしないと もの凄い舞台を目の当たりにしてなかなか興奮が収まりません


  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。これぞ舞台は総合芸術と思わせる秀作。
    「京極ワールドを一冊読み切った達成感」…この謳い文句に誇張はなく、十分に堪能させてもらった。
    本「嗤う伊右衛門」は再演ということだが、自分は未見。京極夏彦の小説も未読であるが、その世界観がしっかり伝わる。いや小説という自分の想像によって世界を膨らませることと違い、舞台は視覚聴覚など直接的に感じる。その意味で狭いといった印象を持っていたが、登場する人物1人ひとりを深堀し、語り部をもって物語を紡ぐ。そこには頁と頁、行間を読むといった小説の味わいとは別の面白さがあった。語り部は1人ではなく、1冊の台本を手にした者が話を前に…。このように人物と物語が併走していく感覚が好い。

    小説の登場人物は、役者の体を通して立ち上がる。勿論 役者の体現がそうさせるのだが、たぶん小説とは違って生身の人間=役者の感情が直接訴えてくる迫力に圧倒される。繊細かと思えば荒々しく大胆に、しかも所作に様式美まで感じてしまう。
    この役者陣の熱演を支えているのが、舞台技術ー照明・音響音楽であることは間違いない。単に技術的な効果だけではなく、情景や心情といった内外に秘める機微のようなものが演出される。見事の一言。
    (上演時間 前半1時間35分 後半1時間10分 途中休憩10分 計2時間55分)10.5追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、段差を設えその前に畳一畳。下手に めくり。物語の情景・状況に応じて畳の向きが横・縦・斜めに置き換わる。物語は 小説の目録通りに展開するようだ。目録は めくりに書かれ、演者が捲る。例えば「木匠の伊右衛門」「小股潜りの又市」等と書かれており、舞台では その人物を中心とした場面が描かれる。その人物の背景なり性格等が掘り下げられ、次々に登場する人物との関りが鮮明になる。

    「東海道四谷怪談」は、概ね 塩冶四谷左門の娘・お岩(おいわ)とお袖(おそで)の姉妹を巡る怪談劇で、お岩は夫・民谷伊右衛門(たみやいえもん)の極悪非道な行いによって非業な死を遂げ、幽霊となって恨みを晴らそうと。一方「嗤う伊右衛門」は、気性が男勝りで凛とした お岩を敬い愛していたと。また 伊右衛門は生真面目、律儀といった性格のようで 梗概は似ているが、まったく逆の心情が描かれている。そこに京極ワールドの純愛が切なく悲しく紡がれる。

    冒頭、伊右衛門が蚊帳の中で、その場所から外は暈けて見える。勿論 外からも内は暈けた人影しか見えないだろう、そんな旨の台詞から始まる。蚊帳を捲ると闇が入ってくる怖さ、そこに人との関わりが透けて見える。人の外見は鮮明なのに、内心は計り知れない。胸襟を開いて 懐に入れることの怖さ。物語の人々は上辺だけの言葉を信じ、騙され窮地に陥る。それでも信じ合うことの尊さ、そこに顔の美醜など関係ないと。

    舞台技術が見事。照明は全体的に昏く ピンライトで人物を浮き上がらせる。それは心情であり情況である。また青白い目つぶし閃光で雷、また葉影のような落ち着きなど多彩。音響は雷鳴やドロッとしたという 語りに合わせた効果音など、目に見えない情況が迫る。また和装が映え、その端正な立ち居振る舞いが美しい。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    すばらしかったです。まず言えることは大人の劇団による大人の舞台だなということ。全体的に落ち着いていて安心して観ていられました。俳優さんの動き1つとっても余分な動きがなく、セリフも過不足なく必要なことばのみを発されていますし。ほんと、筋肉だけでできた舞台です。最初「あれ、これってもしかして朗読劇?」と思いましたが、その後、ちょっと変わったつくりの舞台へとシフトしていき「ああ、こういった見せ方をするのね…」と感心しました。あと、ぜんぜん怖い話じゃありませんでしたね。ふつうに純愛ものでしたね。最高の時間をありがとうございました。

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