実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団銅鑼はいくつも見ているが、まずはずれがない。とくに誠実でひたむきに生きるドラマが得意だ。小さいながら良質な劇団である。今回も夢を追うことの素晴らしさが、登場人物たちを通して素直に伝わってきた。
実在のコメットハンター・本田実(池上礼朗)が物語の中心。その生涯を、夢を失いかけた現代の若者(山形敏之)に、ミノル君の親友を名乗る老人(舘野元彦)が語って聞かせる。語りたい老人に、青年が渋々付き合わされるうちに、先を聞きたくなっていく。この仕掛けがうまくいった。舘野の老け役が見事で、一瞬、本当に80すぎの老人に見えた。セリフ回しとともに、歩く時の体の揺らし方にかぎがありそうだ。
実演鑑賞
満足度★★★★
体調により若干寝落ちの時間があった(毎度これを言ってるが..)が、分かりやすい物語(設定も進行も登場人物も)を緩やかに味わった。老人施設の若手の男性職員3人と施設長、ベテラン女性看護師、入所者の西島さん、そして主人公の若槻(新人職員)の妻、認知症が進行しつつある西島さんが口にする親友・本田実。
天体望遠鏡で星を見るのが好きだった主人公は、西島さんの語る「12の彗星と11の小惑星を発見したすごい男」本田実の話を折ある度に聞き、話し相手となる。西島さんは毎夜姿を消す恐れがあり、聞けば「親友の葬式に行かねば」と言う。だが話し相手が出来たためか次第に落ち着いた状態となる。二人の関係が、本田実という人物はとうの昔に死んでいる事、について話の流れの中で若槻がつい言ってしまい、その後のタイミングで再び西島さんが失踪する、というのが終盤に訪れる展開。
そのラインが軸だが、もう一つ若槻は東京から故郷に戻り、転職を果たした組で、実は妻は東京に残っている。何かの事情でそうなったようなのだが、すれ違いの中で半ば諦めの境地にある二人が、若槻がこの場所で生き甲斐をもって働き、再び天文学への興味に向かっている事が、結果的に二人の関係に変化をもたらす、その筋がある。そして本田実という人物が西島さんの想念を飛び出て語る星や宇宙への思い。これがある種の媒介として位置づけられているのだが、事実として判明したのが本田実と昵懇だったのは西島さんの父で、父が受け取っていた手紙を西島さんは常に持ち歩いていた、恐らく幼い頃父を通して彼の中に本田実という存在が住み着いたのだろう、という仮説が最後に謎解き的に出される。この西島さんの存在が、他者すなわち施設の人たち、とりわけ主人公夫婦の歩みに与える推進力になるためのもう一つが欲しかった感想だ。それが何かはうまく言えないが。
ただ、台詞にはならない、西島さんの現在地(変化)や、若槻夫婦の中に流れ始めたもの、施設職員らの間に灯った火のようなものを、観客として想像し、勝手にこみ上げている自分がいた。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/08/29 (木) 14:00
座席1階A列15番
価格5,000円
「親友っていいね!」「繋がりの大切さ」もらいました‼️
1959年生まれの私はアメリカNASAの月計画アポロ計画にも影響され、当時今では考えられない位の宇宙ブームの中で育ちました。小学校の頃から天文少年だった私は、図書館や書店で立ち読みしていくにつれ、素晴らしい貢献をされたアマチュア天文家の方々が少なからず日本にいることを知り、感激感動しました。
本田実さんは、まさにその先駆けとして、日本のアマチュア天文学をリードしてきたお一人です。幼い頃をむさぼり読んだ天文の雑誌などから、本田実さんのエピソードは頭の中に入っていました。それが21世紀の令和6年の夏に多くの方々に知っていただけた有り難さと喜びでいっぱいです。私の幼い頃の天文少年の思い出にも重なりました。
偶然、ある演劇を観に行って、この舞台知るご縁をいただきました。素敵な青春を私たちは生きてきたんだなと言うことを改めて実感する舞台でした。劇団関係者に本当に感謝にたえません。
もう一つ大きな視点は、舞台が施設だったことです。
私の両親は他界していますが、老健施設で多くの方にお世話になりました。今度は自分の番です。
私なりにこれから先残りの人生をどう歩んでいこうかと言う思いの中で、感動を勇気を与えてもらい重ねて感謝したい気持ちです。
劇団のさらなるご発展をお祈り申し上げます。知り合いの天文学者から、「この劇団は、小学校などて子供たちに数多くの作品を見せていますよ」と伺いました。
どうか、多くの子供たちに、ステキな未来があることを伝えてください。ありがとうございました。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/08/29 (木) 14:00
座席1階
彗星や新星を数多く見つけたアマチュア観測家・本田実の物語。大正生まれで戦争に行った経験があり、1990年に77歳で亡くなった人物を現世代の人たちとリンクさせるため、高齢者施設に入居している認知症の男性が「自分の幼なじみだ」として語らせる台本はとても興味深い。
認知症介護という視点でも、きちんと取材して書かれている。認知症の人が語る物語を否定せずじっくり聞いて対話をしていくという主人公の介護職の仕事ぶりが、この物語をつむいでいくのだが、認知症の人を受け止めてケアしていくという施設の在り方はとてもいい。いつも人に優しい舞台をつくる銅鑼らしい展開だった。
主人公の男性は妻と別居しているという設定で、舞台が進むにつれて二人の抱えている問題が明らかになってくる。ただ、自分にはこの設定や妻の存在が物語のメーンストーリーであるコメットハンターとは直接関係ないのが気になった。「自分の幼なじみ」と本田氏のことを語る男性の物語がもっとあるとよかったような気がする。