BOX IN THE WORLD 公演情報 BOX IN THE WORLD」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     本日はsideAを拝見。面白い。ベシミル! (追記7.8 9時44分)

    ネタバレBOX

     さて、今作のテーマはidentityである。ではアイデンティティーとは何か? 即答できる人はそう多くあるまいから、一応自分が考えるその定義らしきものを記しておく。アイデンティティーとは即ち、或る個人が己の内的世界に於ける存在の意義を自己矛盾無く措定し得る状態である。と同時にニンゲンという存在は漢字で書くと人 間。これはヒトという生き物が他者との関り無しに生きて行けない生き物であり、生きてこれなかった生き物であるという人間個々の他者との関係を必須とした存在形態を現していると解釈することが出来る。換言すれば、先に述べた通り己自身の内部での矛盾無き統一が、その個人と関係する社会と矢張り矛盾なく統合され遅滞矛盾なく機能し合うことである。これが為される状態がアイデンティファイされた状態だと考える。従ってアイデンティティーという言葉が日本で用いられる場合、人間存在に不可分の社会的関係を含む二層構造の矛盾無き統合を含む概念と捉えるということだ。
     板上レイアウトはsideBとほぼ同様、無論話の内容は異なる。時期設定は近未来。社会はエリート層と下層民社会に完全に分断され下層民は差別され権利もへったくれも無い有様。大学を出ていようが様々な資格試験に通っていようがそれが既に時代遅れの技術であれば雇用サイドから顧慮されることは一切ない。当然仕事にも就けない。正社員になれる訳もなく派遣等でも職にありつけば良い方である。そんな時代、大学を出て正社員として就職、懸命に働いたものの首を切られたまゆみが、この得体の知れないエリアに吸い寄せられるようにやって来た。電話機の取り外された電話ボックスから何者かが話し掛けてくる。それは彼女の痛い処を突く言葉の群れであった。それは彼女の仕事に対する上司即ち社会の評価であった訳だ。当然、彼女は面白くない。オープニングで凡そこれだけの情報が与えられる。そして次々に他の人々が寄ってくる。その各々がこの場所に吸い寄せられたかのようにも、惑星直列が在る確率で必ず起こるように何か或いは誰かに吸い寄せられるかのようでもある。集まった者達は三種類の存在だ。一つ目はエリート層、二つ目は下層民、そして三つ目はバグともいえるゾミア的存在。
     因みに此処に関わる登場者はエリートとしてのAI(はぐれ者を含む)、普通の人間、そしてデータの無いコンピュータ上ではバグとして認知されるであろう、非存在的存在。これら三つの要素が矛盾なく同時に同空間に存在する必然性を探り回答を得ることが今作で為されていることである。既に惑星直列の件である確率でそれが必然であることは説いた。その謎が明かされてゆくのである。近未来、人間の開発したAIが人間の能力を凌駕しヒトをその支配下に置くという懸念はITを用いていることが当たり前となった昨今誰もが抱えている漠然たる不安である。今作で登場するAIたちもヒトとそっくりの姿形はしているが情報に基づいて作成されたイマージュに過ぎない。(そのイマージュを演劇だから本物の人間が演じているだけである)その実際にはイマージュに過ぎないが世界を統御するエリートとして機能している「存在」と実際の人間即ち下層民、そして不確定要素を表すゾミア的人間(データ無し)が一堂に会する必然性とそのことをエリート層が気にかけて介在してくる理由とは何か? が今作の面白さである。答えは分岐点だ。その分岐点で最上の登場者の誰かが最上機種AIであることが判明するが、全能のそのAIがニンゲンに対しどのように振舞うか? がこの全能の絶対者の判断に委ねられる。してその判断の結果は? 愚かな欲望の為に愚行を繰り返してき、人類などと呼称するには大きな矛盾を感じざるを得ない人類にどのように振舞うのか? 滅亡? 或いは? その結論を出すに至った全能の存在の内実は? 今作では敢えてその解答を表現していないが、観た者には明白であるように思われた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    sideB-existence-を拝見。T1projectらしい心に響く作品。ネタバレは全開にはしていない。観劇の興が醒めかねないからである。終演後に追記する。

    ネタバレBOX

     板中央よりやや下手に電話ボックスらしき物があるが、電話機は見えない。このオブジェ奥に大きな衝立。衝立の端迄が袖となり、出捌けはこの1か所衝立の手前にはビールラックのような物が3個(うち2個は重ねてあり、その横にもう1個が置かれている)、下手側壁奥にはエアコンの室外機の機能部分を取り外した物が2段重ねにしたビールラックを挟むように置かれている。上手ホリゾントの手前にも矢張り下手の物と同様にエアコン室外機の樹脂製枠が置かれ地面に接する辺りには申し訳程度の緑が見える。上手側壁近くには四角いオブジェからにゅっと棒が斜めに突き出したような物がある。また上手客席の縁には土嚢のような物が置かれている。
     開演前には、都会の喧騒音が流れている。オープニングと同時に電車の通過音、続いて激しい衝撃音が木霊する。
     と男が独り現れ、意味不明な独り言を呟きだす。何故か混乱し、苛立っている模様。男には何かが聞こえているらしいが、幻聴であるのかも知れない。かなり長い独り言の内容からは、男が婚約者に訳も説明されぬまま絶縁を迫られたらしいことが分かる、男には婚約者が総てであった。そこへ別の男が現れる。新たに現れた男は、極めて理屈っぽく独り言を呟いていた男が幻聴を聴き、妄想に混乱しているのではないか? との疑義を提示した為追っ払われてしまった。その後、この場所には次々に様々な人物が流れ込んでくる。奇妙なことに後で流れ込んで来た人物たちからは、同じ地下鉄に乗っていた人だという既視感が告げられる。何故、人々は此処へ来たのか? ここは何処でどんな場所なのか? 等は当初一切分からない。そのうち最初の男が聴いていたのは明らかに幻聴ではなく、電話機の取り外された電話ボックスから着信音が聴こえ、実際に対話者が居るらしいことが、徐々に分かってくる。何となれば後でやって来た人々、一人、一人に対しても電話が掛かってきたからである。個々の発信者は各々の最も大切な人であった。

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