ケエツブロウよ-伊藤野枝ただいま帰省中 公演情報 ケエツブロウよ-伊藤野枝ただいま帰省中」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/05/24 (金)

    伊藤野枝の心の強さが舞台を明るくしていた。すごいなぁ。実家での出来事だけでこうして伊藤野枝が出来上がったんだな。とも感じた。
    おばあちゃんが良かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    那須凛は、家と恋の間で苦しんだり、ダメ男辻潤から心は離れているのに、外見はそれを否定する前半がよかった。後半、大杉と一緒になると一直線すぎて迷いがなくなってしまう。
    伯父役の横堀悦男が存在感があった。アジア主義者の頭山満と親交があって、その話もよく出てくる。幼い野枝を預かって育てたそうで、あの伯父があってこその伊藤野江だったという気がしてくる。

    それにしても伊藤野江の芝居は、この7年で5本目。永井愛、宮本研ほかいろんな作家がそれぞれの野枝を書く。小説、映画も。村山由佳「風よあらしよ」はNHKでドラマになった。すごい人気である。華もあり嵐もあり棘もある。史上傑出したマドンナであり、スターだ。

    ネタバレBOX

    大杉は八幡製鉄の労働者にストをたきつけるが、大杉の死後数年後に、実際にストが起き、煙突の煙が止まったそうだ。そういうことを知ると、また感慨が深くなる。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/05/30 (木) 14:00

    座席1階

    大杉栄とともに憲兵に殺害された伊藤野枝を描いた舞台や映画は多数ある。だが、故郷の福岡県の海辺にあった実家を舞台にした演劇はあまりないだろう。マキノノゾミの脚本は、全編実家を舞台にして野枝の人生を描いている。

    地元の資産家に授業料を出してもらって東京の女学校を卒業したが、決まっていた地元男性との結婚が嫌で実家を飛び出し、身を寄せた女学校の恩師と結婚してしまう。2人の子どもに恵まれるもこの恩師を捨てて、大杉と一緒に暮らし始める。大杉との間には5人の子どもがいる。男の浮気は甲斐性なのに、女は姦通罪で処罰という理不尽さに全力でぶつかっていく野枝。女性は貞淑な妻として男性の陰で尽くしなさいという家制度に立ち向かい、自由な恋愛で人生を生き抜いていく。実家が舞台であるので東京の青鞜社とか無政府主義とかいうところに強くスポットが当たらない分、野枝の女性としての人生がクローズアップされている。

    パンフレットの見開き写真には、丘の上のような山中に巨大な石が横たわっている。写真説明には「故郷を見下ろす山に置かれた伊藤野枝の墓石」とある。木の墓標が嫌がらせで倒されたり引き抜かれたりしたので、義理のおじさんが「これでも倒せるならやってみろ」と言わんばかりの巨石を墓標にしたとのこと。こんなエピソードがあるとは知らなかった。舞台でもこの巨石が登場する。極めて印象深いシーンだ。

    伊藤野枝という人は当時の常識に真っ向から歯向かったのであるが、エキセントリックな物の言い方をする人だったのだろうか。舞台を見ていて一番気になったのはこの点だ。怒鳴る、叫ぶ、大声でののしる。そういう人ならいいのだが、伊藤野枝の印象操作になっていないか、疑問に思わないでもない。

    ネタバレBOX

    巨石はラストに登場するのだが、そのバックミュージックはレッドツェッペリンの「天国への階段」だ。とてもいい選曲だ。野枝の人生を締めくくる葬送の曲をじっくりと聴いた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    青年団だと思っていたら、青年座だった。(那須凜さんが青年団だと勘違い)。
    カイツブリ(=小型の水鳥)のことを、博多の今宿辺りの訛りではケエツブロウと呼んだ。

    主演の伊藤野枝役、那須凜さんがノリノリ。第一幕はいつもの顔芸デフォルメ連発で沸かせる。鬘が右にズレているように見えたが、それがデフォらしい。第二幕だとガラッと変わって美人女優の趣き。きっちり演じ分けて見せた。
    大杉栄役は松川真也氏。EXILEのMATSUとか石原夜叉坊系の色気のあるワイルド、女にもてないと大杉栄じゃない。
    MVPは作品の軸的に主人公である叔父役の横堀悦夫氏。佐藤慶っぽい魅力たっぷり、この人の視座こそが作品を貫かないと物語にならない。
    祖母役の土屋美穂子さんも素晴らしい。役者陣は文句なしの力量。遊び人の父役の綱島郷太郎氏は本田博太郎系で和んだ場を作る。

    甘粕事件で28歳で惨殺された伊藤野枝、郷里の博多に帰省する12年間をスケッチ。

    劇中、娘の魔子がやたら美しいと称賛されるので調べたら、確かに橋本環奈っぽい美人だった。

    最前列に全盲の方が座られてバリアフリー日本語音声ガイドを聴きながら鑑賞。どんなふうに感じれるものなのか?

    ネタバレBOX

    何故かラストは『天国への階段』。

    第一幕ではホンは悪くないのだが、演出のテンポが悪くカッタルイ印象。この手の場縛りで数々の傑作をモノにした井上ひさしの才能がよく分かる。キャラの関係性の練り込みが足りない。いろんな小ネタを仕込むべき。(後になって仕掛けに気付くような)。
    第二幕でいよいよ待ちに待った大杉栄の登場、これが幼稚なアジテーターでガックリ。(実際の大杉栄も初期衝動の全肯定、自由であることへの偏執的な追求、自分の中のes〈無意識の衝動〉への絶対的忠誠に固執している印象)。皆で踊り出すギャグも空振り。(実はここが今作一番の心臓部だった)。脚本がどうにも転がらない。やたら「後先考えない一瞬の煌めき」を訴える割に、キャラクターからそれを一切感じない。まず観てるこっちを今興奮させてくれ。大杉栄と伊藤野枝に会ってみたかったな、ぐらい思わせてくれ。言ってる内容が空虚で全く乗れない。今の価値観(フェミニズムなど)で彼等を再評価しようとするから文脈がおかしくなる。どうしようもないイカれた情念だけで鮮烈な生涯を叩き付けたシド・アンド・ナンシーで良かった。その烈しさに人は憧れる、みたいな。伊藤野枝ってもっと動物的だったんだと思う。動物であろうとした。全く理解不能な獣の行動の観察日誌じゃないと。古き因習に縛られた田舎の閉鎖的空間から突然変異の異分子が誕生、思想的テロリズムでそれらを全て打破しようとする痛快さ。本来はきっとそんな物語を期待させる。

    特にラスト辺りが好きじゃない。主要キャラが皆死んでしまっているので脇キャラの取って付けたような感慨。これじゃ第一幕が生きない。ナレーションの入れ方にも不満。

    架空のキャラを創作して実家に置く手もあったと思う。メチャクチャ伊藤野枝的な生き方を軽蔑する家父長制の権化のような女。その女が彼女の惨殺に泣き崩れるラスト。

    ※大杉栄のアナーキズムとは、政治的思想ではなく自分が希求する生き方のことなのだろう。自身の自由を束縛するものへの抵抗。国家、法律、モラル、ルール、共同体、伝統、義務···。社会主義や共産主義、反体制運動にも同様に組織の束縛が付き物な為、否定。“自由”とは無意識の欲望、衝動であると。芸術家に近い思想。社会運動家として括られた為に虐殺されたが、全く違う文脈の人だと思う。

    ※大杉栄と伊藤野枝の熱気に当てられて家中の者が釣られて踊り出す。怒り心頭の横堀悦夫氏までが気が付くと踊っている自分に気付いて照れ笑い。ここを巧みに構築できたなら。(二人が亡くなった後に残ったメンバーで踊る場面が必要か?)

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