実演鑑賞
上演会場は王子にある「北とぴあ カナリアホール」。ここは天井のシャンデリアが特徴的なんだよなぁ…と考えつつエレベーターで14階へ上がる。受付には喪服のスタッフさん、会場内も喪服のスタッフさんが。なんと客席も黒い服装が多め。客入れの音楽が静かに流れるなか、席に座り天井のシャンデリアを見上げ、このセレモニー感に「なるほど」と思う。タイトル通り、TeXi'sによる「擬似的葬儀」をモチーフにした一作。(上演が始まると、ステレオタイプな葬儀風景をあまり連想させないため、そのギャップも印象的でした)。
実演鑑賞
初日観劇。 劇場に入るやいなやびっくり。そして、公演名を読み返して「そうきたか!」と膝を打った。
小学生の頃、初めて光る靴を手に入れた時のえもいわれぬ無敵感。あれは、なんというか闊歩の装備だったんだな。おっしゃ行くぞ、生きてやるんだぞ、というサバイブのための装備だったのだなと。観劇しながらそんなことを思っていた。それはゲームのアイテムみたいなものでもあって。きのこよりお花や羽根の方が安心とか、相棒がいたらもっと心強いなとか。スターの時の無敵モード、全ての敵を片っ端から薙ぎ倒していくあれがリアルでも起こせたなら、
もっと泣かなくて済むのかな、とか。薄いカーテンみたいなシームレスさでバーチャルとリアルが繋がれたあの空間には生があり、それは死があるということでもあり、幾度となくリフレインされる言葉は敵への呪文であり、自分へのお守りであり、世界への祈りでもあったかもしれない。
「生きる」という行為そのものが無化ないしは形骸化していくリアルに穴をあけて、wifiという光の中でギリギリ繋がる人たち。錯綜する情報の中にも、駅前の雑踏の中にも、誰かといるのに孤独な部屋の中にも、"わたし"はいるし、"あなた"もいる。
だからこれはきっと、わたしやあなたを枠にはめたり、 ひとつにまとめようとする物や者との決別の為の葬列で、
もう一度生まれる為のセレモニーなのだろう。だから、色とりどり着飾って、光る靴で装備して、それからshake it=手を振り/揺さぶるのだ。呪文やお守りや祈りが身体じゅうに行き渡るまで何度も何度も。
仮装と現実の狭間で、私はそう受け取った。