ゲゲゲのげ ~逢魔が時に揺れるブランコ~ 公演情報 ゲゲゲのげ ~逢魔が時に揺れるブランコ~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★★

    渡辺世界と鬼太郎エピソードが見事に融合。可笑しく楽しく哀しい世界。
    植物状態の女性(馬渕)が夢見る、
    小学校時代のいじめの記憶と悔恨の念。
    それは妖怪の仕業か。
    そして鬼太郎達はそれを退治できたのか?

    渡辺えりさんの作によるストーリー構成が非常にうまい。
    単なる夢、幻想の世界ではなく、
    幾人もの登場人物たちが鬼太郎の世界とクロスオーバー
    しながら展開し、世界が膨らんでいく。
    可笑しくも、物悲しい、せつない世界。

    独特な世界でありながら、きちんと鬼太郎の
    妖怪物語の1エピソードとしても成立しているのに驚いた。
    と同時に面白かった!

    中川晃教のセリフ回しと歌によって作られる鬼太郎が
    当然オリジナルのキャラクターがありながらも
    中川色が力強くしっかり出ている。
    しかも目玉のおやじ付き。

    ヒロインは、私の大好きな馬渕英俚可さんです。
    ランドセル姿での強烈ないじめっ子も潔く、
    二役では真反対でワイシャツ1枚だけをまとった
    夕方の妖怪を妖しく演じる。

    広岡由里さんは、
    砂かけ婆と、なんと子泣き爺まで演じてます。

    さて渡辺えりさんは妖怪を演じて、歌も披露。
    さすが、パワフルです。

    渡辺世界と鬼太郎エピソードが見事に融合。
    可笑しく楽しく哀しい世界。
    独自の物語世界の面白さを堪能しました。

  • 満足度★★★★★

    演劇へのあふれ出る愛
    演劇の楽しさってこういうワクワク感なんだよなぁということを思い知らされた作品。

    「すごーい、すごい!」と心の中で叫びました。

    渡辺さんが20代でこれを考えて書いたのもすごいけど、演出してこういう形にするっていうのがやはり天才だなぁと。
    (私は渡辺さんと同年配で、ほぼ同時期に同じくらい年の離れた相手と初婚で結婚したという共通点があり、勝手な親近感がある)。

    女優としての渡辺さんのファンだが、女優としても才能あるのに、作・演出家としてもこんなに才能があるというのに敬服する。

    そしてこの作品を観て思ったのは、渡辺さんは本当に演劇を愛して、まっすぐに純真無垢な気持ちで真摯に誠実に取り組んでいる人なんだなぁということ。

    それが強く感じられた。

    「人間性なんて劇作には関係ないよ」と昔、私に言った学生劇団の関係者がいるが「関係あるよ!」と言いたい(笑)。

    第一次小劇場ブームのころ、渡辺さんからの電話を職場で一番多く受けたのは私だった。

    劇団主宰にはいろんな人がいて、制作任せの人や、すっぽかしが平気な人もいたが、渡辺さんだけはどんなに忙しくても、寝てなくても、ご自身で連絡してこられ、「ゲネプロの時間伝わってますか?」とか「来週が初日だって私言いましたっけ?」とか「いま、写真探してるのでよろしくお願いします」とか細かい確認をおろそかにしない真面目な方でした。

    稽古中、過労で声が出ないこともあり、「ごめんなさい。こんなガーガー声で失礼します」と電話の向こうで謝っておられた。

    その誠実な人間性が今回も作品を通してひしひしと伝わってきました。

    あの人だからこの作品ができたのだという・・・。

    最近の女性作家のブログなどを読むとお洒落な生活感が伝わるが、それとは少し違う。

    貧しい都会生活の中で血肉をふりしぼるように書いたという渡辺さんの青春が息づいている。

    渡辺さんが尊敬し憧れ、「夢のような芝居」を目指してきたという唐十郎氏の作劇術の影響が強く感じられ、それを確認できたことも嬉しかった。

    そういう意味では、唐十郎信奉者の若き作・演出家にこそ、ぜひこの作品を観てほしいと思いました。

    ネタバレBOX

    若月(松村武)が登場してしゃべり始めたとき、その抑揚まで唐十郎の芝居に出てくる人物のようで「あ」と思った。

    「記憶の糸」に操られて登場する男といえば、唐作品の定番だ。

    そこにサンシャイン・シティの建設により失われていく東京池袋という町と時代への渡辺さんの想いも重ねあわされていて、感慨深かった。

    小学生がワーッと出てくる場面、俳優たちの動きやかしましさが本物の小学生に見えて感心した。

    この小学生、ビワの実の精みたいで、河童に変身するのがまたビックリだが、その河童がなんだか腐ったビワの実のようでもあり、不気味さがたまらない。


    若月の戦時疎開中のいじめ体験と、マキオ(吉田裕貴)のいじめ体験を重ねる構成も秀逸。

    マキオのいじめを扇動する教師(土屋良太)の描き方も、実際小学生の時にこのような体験をした私にはリアルに感じられた。

    鬼太郎(中川晃教)の登場シーンが大型ミュージカルのようで驚いたし、妖怪・茶飲め小僧(加藤亜依)との対決場面などはとても舞台とは思えぬスピード感があり、アニメや実写版映画に抵抗がある私でも、こちらのほうがむしろ楽しんで観られた。

    一反木綿が舞う場面や杉の木に封じ込まれ同化した子供、びわの実が成った舞台美術など視覚効果も素晴らしい。

    鬼太郎であると同時にマキオの親友を演じる中川の声の悲しさが印象に残った。

    横長で見づらい座・高円寺の舞台を中央四角に作りこむなど、舞台面も見やすく工夫されていた。

    入れ子のようになった複雑な構成で、正確に理解できた自信はないけれど、幸福感で満たされた。

    中川の女性ファンの姿も多く見受けられ、彼が登場してひとことせりふを言うたびに隣の中年女性が「ふわぁ」と奇声を発して跳ねるものだから座席が揺れ、いささか興をそがれた。この奇声、ほかからも一斉に聞こえてきた。

    ほかの席でも「座席が揺れて落ち着かなかった」と終演後、不満を漏らす声がきかれた。
    彼のコンサートではないので、抑えてほしいところだ。

  • 満足度★★★★★

    若手の役者の方が凄い
    とても良かった。
    特に、300の若手役者が苦しんで、苦しんで、この公演を迎えられたことがひしひしと伝わり、2時間40分、ただ圧倒された。

    この戯曲は、難解です。
    私も、NHKBSで放送されたのを見て、戯曲も何回も読みましたが、分からないままです。
    でも、伝わりました。
    十分伝わりました。

    このコメントをお読みの方で、渡辺えりさんのお知り合いの方がおりましたら、DVD化を希望しますとお伝え下さい。

  • 満足度★★★★★

    なんだか気になって。。。
    混沌とした夢物語のような舞台。
    中川さんが出て来た途端、展開が面白くスピーディに。。。
    その歌声はもう毒牙にかかって動けないくらい素晴らしかった!
    解釈で消化不良なところがあって、なんだか気になって仕方ない。
    もう一度観ようかな。
    えりさん、広岡由里子さんもお茶目で笑わせてもらった。

  • 満足度★★★★

    改めて、えりさんの凄さを思う
    レストランで、たまたま、この舞台の構想を熱く語るえりさんの想いを座り聞きして以来、観劇の日を心待ちしていました。

    えりさんは、確か私と同い年。この作品は、27歳の時に書かれたそうで…。

    いやあ、御見逸れしました。

    私は、22歳で、放送作家新人賞の佳作を頂きましたが、その後、ラジオの仕事をし、27歳の頃には、普通の主婦で、子育て真っ最中でしたので、当時、同い年のこんな才気ある劇作家が世に出ていたことを知らずにいました。
    もし、その時、書き続けていても、こんな凄い作品を物すことはできませんでした。

    30年近い時を経ても、全く古さを感じない素晴らしいクオリティある作品でした。

    松村武さん、以前からいい役者さんだと感じていましたが、今回益々好きな役者さんになりました。

    茶飲め小僧役の女優さん、素晴らしい!と感じ、後で、お名前を確認してビックリ!家族とご縁が深い女優さんでした。加藤亜依さん、凄い存在感でした。
    そうそう、加藤さんは、学生時代に、えりさんの目に留ったのだそうで…。

    こういう、珠玉をみつける目も、えりさんは凄い才能があるのだと痛感しました。

    中川君の歌唱は、やはりいつ聞いても魔法ですね。

    ネタバレBOX

    昔、流行った感じの手法の芝居でした。

    でも、全く古さは感じません。昨日、50代のえりさんが書いたと聞いても、納得してしまいそう。そういう、確かなクオリティのある作品でした。

    ただ、残念なのは、小学生達が集団で、ワイワイ騒ぐと、台詞も歌詞もはっきりと聞き取れなくなる点。1年もワークショップを繰り返したそうなので、もう少し、この部分を鮮明に観客に届ける工夫をして頂きたく感じました。

    広岡さんが、八面六臂の大活躍で、大変そうでしたが、役を替わる所が、手際がよくないような演出をあえてしていて、そこが、ご愛嬌でした。愉快で、楽しかった!特に、えりさんと母が二人になっての顛末が刺激的!

    鬼太郎の中川さんは、下駄での殺陣や、タップ、目玉親爺との腹話術的な声の変化等、歌はもちろん、全てにおいて、見せる芝居が卓越していました。
    初演では、この役、誰がされたんでしょう?
    今、観ると、中川君以外考えられないはまり様でした。

    他には、若松さん、吉田さん、奥山さんの若手3人と、安定の村松さん、馬渕さんに目を引かれましたが、とにかく、茶飲め小僧の加藤さんは、才能満載の張り切り振りが、こちらまでエキサイトする高揚感を与えて下さって、今後のご活躍が益々楽しみになりました。

    ストーリー自体の繋がりは今ひとつハッキリとはしないものの、誰かを失う喪失感は、痛いほど、胸に響く素敵な舞台でした。

    いつもは好きになれない劇場ですが、舞台の設置が、客席を、いつになく、観やすくしていて、ありがたく感じました。
  • 満足度★★★★★

    傑作戯曲で「今」の観客を魅了する
    上演時間2時間40分休憩なし、と聞いて思わず「ゲゲゲのげ」となったが、終わってしまえばあっという間。
    とにかく物語が面白い。傑作戯曲!
    台詞が楽しい。味わいも深い。
    歌がいい。音楽は生演奏だ。

    ネタバレBOX

    老婆が病院のベッドに横たわる。それを囲む家族らしい女性たち。会話が変な方向へずれ始める。

    小学校の教室。
    同級生だけでなく担任からも疎まれ、イジメられているマキオという男子がいる。
    今日も給食係で失敗をして、廊下に出され、食べ終わるまでそこにいろ、と先生に言われて、廊下で1人給食を食べる。
    翌朝、マキオが教室にいない。まだ廊下で給食を食べていることに気づき、またイジメられる。
    その時、チャンチャンコを着た、鬼太郎が歌いながら現れ、マキオをいじめている同級生たちを蹴散らす。鬼太郎はマキオに呼ばれて助けにきたのだ。
    そしてマキオをいじめていた同級生たちは、ついに本性を現すのだった。

    こんなストーリーが展開されていく。

    物語の展開には目を離せない。一体どうなるのか、と思いつつ、舞台に釘付け。
    休憩なしの2時間40分なのに長さを感じないのだ(ストーリーを知っていても)。
    それは、「どう見せるか」がきちんと計算され、演出しているからであり、観客としてその術中にぴたっとはまっているからだ。
    人と人のつながり、関係が進行とともに徐々に見えてくるうまさがある。
    それを見せる「台詞」がいい。濃厚であり、饒舌であり、芳醇なのだ。その台詞や演技には「行間」がある。むしろ饒舌にしているのは「行間」を作るためと言ってもいいかもしれない。行間があるから物語が観客の中で膨らむのだ。そして、どこか猥雑さもきちんと残してある。この塩梅が巧み。

    小学校の教室が舞台に「わっ」と現れる。ビワの実を想起するようなオレンジ色の衣装を纏った小学生たちで溢れる。このけたたましさがたまらない。
    ただ勝手に動いているのではなく、きちんとコントロールされているから、雑然とはしないところがうまい。

    そして、鬼太郎の登場!
    鬼太郎に扮した中川晃教さんの登場には、会場から思わず拍手が出るほどカッコいいのだ(もちろん拍手の主は熱烈的ファンだろうが)。以前観たときもこの登場シーンには心が躍った。
    『ロッキーホラーショー』のフランクフルター登場シーンをどこか彷彿とさせる(笑)。
    そして、中川さん、さすがに歌がうまい。さらに、舞台上で映えるというか、オーラがあるというか、とにかくいいのだ。

    鬼太郎と小学生の大立ち回りが楽しい。
    また、木などとして登場する役者たちのフォーメーションがとても気持ちいい。びしっときまっているからだ。

    かつて観て、いまだにサビを覚えている劇中歌が聞けて感激した。
    確かに、歌は増えたが、「音楽劇」というほどではなかったが。
    一部台詞を変えたところがあったようだが、どうやら大きくストーリーは変えてないようだ。
    面白いモノは、そう簡単に古びてこないものだ。
    あるいは「今」に蘇らせた手腕のなせる技なのか。

    舞台も客席もすべてを見事に使い切り、会場が熱気にずっと包まれているような一体感まであった。

    役者は、メインの中川さん、広岡由里子さん、馬渕英俚可さんが印象に残る大熱演だった。そのほかの若手の役者さんたちも、全身で演技をしていて好感度は高い。村松武さんもうまいなぁと改めて思うし、渡辺えりさんもさすがに面白い。

    見終わった直後に「もう1回、いや2回、3回観たい!」と心から思った。「行間」があるので、観た回数だけ楽しめると思うのだ。
    合う日程がないのが残念すぎる。

    帰宅してから、大昔に買っていた戯曲を引っ張り出して読んだりした。

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