満足度★★★★
楽しい舞台だった。
芝居自体はマイムで行われたが、ナレーションが日本語で入るので会場にいた子供たちにも問題はなかった。
回り舞台で、舞台を3分割しながら、その構造は基本的に3つとも同じもの。それでいて、「スガンさん」と「やぎ」の距離や心情が見えるようだった。
やぎの動きや回り舞台は特に楽しめた。
内容はとてもよかったのに、客席が寂しかったのはとても残念。
満足度★★★★★
赤頭巾ちゃん気をつけて
原作はドーデ『風車小屋便り』の一編。もちろん“童話ではない”。しかしフランスでこれが童話として絵本になっていることは事実で、「子どもには美しいものだけを見せたい」と考える親なら、この話をよく子どもに語って聞かせられるものだと、フランス人の教育意識に疑問を抱くことだろう。
しかし、大人がこの寓話から、恐怖やエロス、生と死の問題、あるいは文明批評までも感じ取るように、子どももまた、言葉には出来なくともその鋭敏な感覚で、物語の背景にある「得体の知れない何か」を直観することは可能であるはずなのだ。そしてそれが子どもの成長に欠くべからざるものであることを、フランス人は確信しているのだろう。
エレナ・ボスコは、哀れなスガンさんのやぎをマイムで演じる。子ども相手だからと言って、“わかりやすく”妥協することはしない。作り手、演じ手が、観客の想像力を信頼しているからこそ、この舞台は成立している。『スガンさんのやぎ』を観た子どもが大人になって、再びこの舞台を観る機会があったなら、当時は言葉には出来なかった心の中の「もやもや」の正体に気づき、慄然とさせられることだろう。