『オフィーリアの部屋』『苦悶・煩悶・クローディアス』 公演情報 『オフィーリアの部屋』『苦悶・煩悶・クローディアス』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     明治大学で2004年から始まった明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)は、毎年秋に公演を開催してきたが、今回はその20回目。今回、20回メイン公演として上演されたのは「ハムレット」であったが節目の20回を記念した「明治大学シェイクスピアプロジェクト 20年の軌跡」展が同大博物館で開催されてもいる。その関連イベントという形で20回本公演の「ハムレット」に登場する人物たちにスポットを当て初のミュージカル作品として上演されるのがオフィ-リアに焦点を当てた『オフィーリアの部屋』及び志賀直哉の「クローディアスの日記」に基づき自由翻案で創られた『苦悶・煩悶・クローディアス』の2本である。

    ネタバレBOX


     急遽、会場が変わったこともあり大道具が調達できなかった経緯もあって出捌けの動作が一部観客に観えてしまうケースもあるが、歌唱の上手さといい、ダンスの動きや振り付けも良さといい流石MSP公演である。2作品ともミュージカルで作曲はOBが担当しているが、エリザベス朝演劇の代表であるシェイクスピアの数ある作品の中でも代表的な作品の一つ「ハムレット」を今回の2作品以外にも太宰治が翻案執筆した「新ハムレット」を矢張り関連作品として上演済みである。以下今回上演された2作品を作品毎に論じてみよう。因みに舞台美術は2作品共用である。板上、ホリゾントと手前の中ほどに衝立を設けて袖とし、実際の出捌けは上手、下手の側壁袖から。他はフラットだ。尺はトータルで1時間程。
    『オフィーリアの部屋』
     脚本はシェイクスピアの「ハムレット」を実に上手く翻案しオフィーリアのハムレットに対する乙女心を、乙女心を理解せず結婚を諦めさせる父、ボローニアスへの嫌悪を示しつつも従わざるを得ないアンヴィヴァレンツからくる苦悩や苛立ち侍従長の娘としてのプライド等々を時に現代風の台詞廻しで示しつつ狂った体をも装って表現するがオフィーリア役の女優さん声の質が極めて良く音感も良いので歌唱力が高い。良いキャスティングである。また、ハムレットが吐く「尼寺へ行け」の台詞を何度もオフィーリアが反復するシーンでは、ハムレットの絶望と恋に去られるオフィーリアの底の無い苦悩が表されていると思われ、哀れである。ボローニアスは身分違いの婚姻を否定するも一方で宮廷に於ける様々な利害をも考慮する。息子の将来についても考えねばならぬし、娘の意気阻喪も気には懸かる。あれやこれやでハムレットとその母、ガートルードの話を立ち聞きをしていた所を刺されて死んでしまった。刺したのはハムレットであった。後はどう描かれるか? 12月9日にもう1度上演される。観てのお楽しみだ。
    『苦悶・煩悶・クローディアス』
     クローディアスは承知の通り先王の実弟、ハムレットの叔父に当たるが先王逝去後、妃であったガートルードと大した服喪期間を置かず結婚してしまった。シェイクスピアの「ハムレット」では、作品はハムレットの側からの視座で描かれており、クローディアスは可成り悪党ということになっているが、今作は寧ろクローディアスの視座から描かれる一種のエクスキューズ作品と言えよう。クローディアスもずっとガートルードに恋していたことが語られ、一方では甥から「息子」となった王子、ハムレットの扱いや彼の自身に向ける猜疑の目に対する処置に頭を悩ませたりもする。現実に世界をみれば他国との関係や政治、権力争い等々大人の事情もあろう。そういった諸々にオフィーリアの件が絡みこの2作品で一双を為す。
     衣装も主要キャラクターは豪華な衣装を纏うが衣装部が演者の身体に合わせて仕立て直したりしつつ用いているものもある。歴史を重ねてきたMSPの財産を上手に無駄なく用いている点も良い。受付などスタッフの対応もグー。

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