カムパネルラとジョバンニ 公演情報 カムパネルラとジョバンニ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     旗揚げ公演とは思えない完成度。

    ネタバレBOX

     おしゃれ且つ合理的な舞台美術だ。板中央左右に階段を設けた高い平台を置き、銀河鉄道の背凭れを真ん中にした座席が2つ真横から見た形で設えてある。座席奥には車両の窓。ホリゾント、両側壁、観客席に最も近い、板と客席の間に分度器を中心から間二つに割ったような小さなパネルを置き各パネルには諸星や宇宙の渦の一部分をあしらったような文様が描かれ極めて幻想的なイマージュを形作っている。出捌けは最も手前のパネルのある上手、下手の袖から各1か所。
     登場するのは、カムパネルラ、ジョバンニの2人だけである。然し原作の本質を見事に抽出しカムパネルラの与える人としての遠慮がちで思慮深い性格でありながら物事の本質を良く掴み弱者に手を差し伸べる賢者の優しさが見事に表れているのは、間の取り方の上手さをみても良く分かる。その掌(たなごころ)で傷つきつつ成長してゆくジョバンニの前進し成長してゆく様が痛々しくも哀しみを誘うが、逆境に置かれた者のこれが宿命というのが残念乍ら世の中の現実である。ジョバンニは、この宿命を背負い雄々しく逞しく生きる知恵をも得ると信じたい。
     感心したのは、原作は主人公や登場人物を子供中心に描きながら極めて哲学的な作品に仕上げているように思われ、子供向きというより寧ろ読者としては大人を対象としていると思えるほど哲学的な作品であるが、今作では子供たちがホントに面白がりそうなシーンを急勾配を銀河鉄道が下るシーンでカムパネルラもジョバンニも座席から転がり落ちそうになるほどつんのめったりするシーンを入れて真の子供らしさを作品に織り込んでいる点だ。見事である。役者2人の演技も各々の役回りを生きてグー。キャスティングも良く、先に挙げたように舞台美術もセンスの良さを感じさせるしスタッフの対応も良い。お勧めである。終演後には舞台美術の撮影もOKだ。尺は1時間弱。人間の本質が描かれた作品である。

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