実演鑑賞
満足度★★★★
良い舞台でした。随分経ってしまいましたが。
出来れば作家の苦悩などの要素を書き足したもう少し長尺のヴァージョンが観たい、と思った。
ヨネと薫子の会話、薫子と作家の会話の無い時間、などなど。
横室さんの薫子からアオになる瞬間の鮮やかさ、そして作家を諭すように語り始めるまでの変化、良かった。
寺園さんの所作も和装姿、美しい。作家と内縁の妻の日常風景をもう少し見たかった。
実演鑑賞
満足度★★★
〔第一の塔〕『あるいは現代のフランケンシュタイン』
大槻ケンヂの詩の世界に登場するのはアンテナ売りのセールスマン。特殊なアンテナを全国津々浦々に立てそこからキチガイ電波を流し込み、国中の人々を発狂させようと企む。この世の全ての人間の気が違ったら、生まれつき狂っている優しいあの娘のことをもう誰も虐めたりはしないだろう。きっと彼女にも安らかな微笑みが戻る筈。
そんな世界観が漂う田瓶(たがめ)市の物語。謎のアンテナ塔に冒険に行った少年はそこで出逢ったお姉さんに恋をする。彼女の夢はアイドル。大人になり博士と呼ばれるようになった主人公(依乃〈よりの〉王里氏)はアンテナ塔で自ら発明した“機械”の製作に没頭する。傍らに居るのは家政婦(嶋谷佳恵さん)のみ。そこを訪れる電気屋の店長(吉成豊氏)、バイト(志賀耕太郎氏)、その友人(小島望さん)。若い二人はバーチャルアイドル・セロリモネに夢中だった。
志賀耕太郎氏は劇団ひとり似。
吉成豊氏は身体のパーツ一つ一つがごつく、拳には拳ダコ。チョコプラの長田庄平をスキンにしたような兇悪な面構え。本職のボディーガードによくいる顔。今の時期、職質攻めに遭いそう。
実演鑑賞
満足度★★★
〔第二の塔〕『象牙の塔(がんばったがダメ)』
筋肉少女帯の『猿の左手 象牙の塔』と大槻ケンヂのソロ・プロジェクト、UNDERGROUND SEARCHLIEの『がんばったがダメ』を想起させるタイトル。
舞台は劇団の作った架空都市、田瓶(たがめ)市。群馬県と山梨県の県境にあるという。その地を代表する文士、清田洞爺(とうや)の昭和22年、35歳の日々を描く。無論架空の人物である不遇の作家の物語。妄想の町で妄想の人物達が悩み苦しみ足掻き、声を上げて泣く。何をしても駄目で、何もしなくても駄目。鋭角に削り通した鉛筆を握っては何かを書き続けねばならない。文学なんて大それたものでは決してない。未来の会う事もない誰かに送る妄想の手紙。
BUCK-TICK「六月の沖縄」
手紙を君に送るよ それは届く事はないけど
もしいいなら僕に返事を それは多分読めないけど おお
両切り煙草に燐寸。狭い借家。作家を演ずるは水口昂之氏。そこに訪ねて来る旧友の出版部の男に藤本悠希氏。突然押し掛ける来訪者に杉田のぞみさん、背が高い(182cm!)。内縁の妻に寺園七海さん。飼い犬のアヲに横室彩紀(あき)さん。この女優が実に良かった。
味わい深い不遇の文士もの。ラストが好き。
是非観に行って頂きたい。